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更新:2008年6月27日 12:13デジタル家電&エンタメ:連載・コラム

新清士のゲームスクランブル

17歳のゲーム開発入門ツール「RPGツクール」の功績と今後

 「RPGツクール」に代表されるツクールシリーズ(エンターブレイン)はユーザーが手軽に触ることができるゲーム開発ツールだ。1992年に発売されたこのシリーズはバージョンアップを重ね、累計で百数十万本以上の販売実績がある。ゲームを作ってみたいと憧れる人がまず使ってみる開発環境だ。

■「RPGツクール」が影響を与えた人たち

 「RPGツクール万歳!」。シンガーソングライターのより子さんが5月20日に書いたブログのタイトルだ。より子さんは00年に16歳でデビュー。ゲーム好きであり、ゲームから強く影響を受けていると公言していることで知られている。幼年期に小児ガンで闘病生活を送り、退院後の療養期間中に「ゲームと運命の出会い」をして「『RPGツクール』に没頭し、ゲームシーンにあわせたインストミュージック作成を始めたことをきっかけに楽曲作りを始める」とプロフィルには書かれている。

より子さんのブログの画面

 昨年12月に発売された最新の「RPGツクールVX」については、「ヤる人がヤったらとんでもねぇハイクオリティなRPGが作れる」とべた褒め。公式ページにもRPGツクールで作ったとおぼしき自分のアバターが登場する。

 今、プロとしてゲーム開発に携わる若手の開発者にも、ツクールで開発した経験を持つ人が少なくない。ゲーム会社への就職活動の際に、ツクールで作成した作品を自分のプロフィルとして提出する人もいる。

 実は、海外でも人気を集めている。ツクールのプロデューサーである杉内賢次氏によると、ツクールは3次元画像への対応が遅れ2次元画像がベースなためにニーズがないと判断され、長く海外での取り扱い業者が決まらなかった。結局、 05年にシェアウェア販売サイトを通じてネットでのダウンロード販売を始めたのだが、課金前に試せるトライアルバージョンのダウンロード数は100万件を超え、「RPG Maker」として世界中で親しまれるようになった。

■米国では社会論争の発端に

 05年に公開され米国で騒動を巻き起こした「Super Columbine Massacre RPG!(スーパーコロンバイン虐殺RPG)」というゲームがある。1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件をテーマにしたRPGで、米ワシントンの大学に在籍するダニエル・レドン氏が開発し、自身のウェブで公開したものだ。

 ちょうど、アメリカではゲーム内の暴力表現が議論になっていた時期であり、このゲームは社会的な反発とバッシングを引き起こした。独立系のゲームコンテストへの参加を拒否されたりしたことで、表現の自由を巡る議論にまで発展した。実はこのゲームもRPGツクールを使って開発されている。

 ドキュメンタリー映画の作家でもあるレドン氏は昨年、自分のゲームが引き起こした事件を客観的に見つめるドキュメンタリー映画「Playing Columbine: a true story of video game controversy(プレイング・コロンバイン:ビデオゲーム論争の真実)」を発表した。レドン氏は、ドキュメンタリーの表現手法としてゲームを選び、犯人の内面世界を考えるためにこのゲームを開発したと述べている。

 この映画には、グレッグ・コスティキャンなど多数の名だたるゲームデザイナーらがインタビューの形で出演し、ゲームの表現の自由を侵害する検閲に反対する論陣を張っている。映画では残酷に人が殺されるシーンが多いのに、2次元画像を使ったそれほど表現力もないゲームがそんなに悪影響を生むのか、とも問いかけている。日本の関係者の知らないところで、日本製ツールで作られたゲームがこんな論争まで巻き起こしていたのだ。

■ツクールが弱い客観評価の仕組み

 こうした実績があるにもかかわらず、ツクールシリーズは日本のゲーム産業のなかで今ひとつ存在感が薄い。その理由は、開発されたゲームを第三者が評価する仕組みが現在に至るまで弱いためだ。これでは優れたタイトルが登場しにくい。実際、ツクールでユーザーが開発したゲームが商品化に至ったのは1タイトルにとどまっている。入り口は入りやすいが、たどり着ける出口がプロレベルには遠いと思われている。

 ユーザーコミュニティーが大きく成長したり、次々に新しいコンテンツが登場したりするには、エコ(循環)システムが形成されなければならない。ユーザーが開発できる環境となる「ツール」と、作成したコンテンツが容易に他の人に伝わる「流通」、そして遊んだ人の感想が作成者に戻る「評価」から構成される仕組みだ。

 多くのコンテンツ制作者は楽しみとして開発を行う。そのモチベーションは、自分の作ったコンテンツを他のユーザーに遊んでもらい、フィードバックを得ることへの期待によって支えられている。そのフィードバックにより制作者は腕を上げていく。

 このエコシステムを構築して成功したのが、「ニコニコ動画」に代表される動画サイトだ。投稿した動画の再生回数、コメント数、お気に入り(マイリスト)への登録数は、その動画を作成した人へのフィードバックの基本的な情報となる。もちろん、投稿されるコメントの内容はより直接的なフィードバックだ。動画の制作者に質を向上させるよう促す仕組みが含まれている。

 ゲームも同じ仕組みでエコシステムを形成できることはすでに北米で実証されているが、日本にはニコニコ動画と同じような仕組みを持ち、利便性が高く成功したゲームポータルはまだ登場していない。

 誤解されないように言っておくが、エンターブレインでは「RPGツクール」シリーズで開発されたゲームに短いレビューを付けて、無料でダウンロードできるようにした「ファミ通.com無料ゲーム」をちゃんと用意している。品質を保証した流通の仕組みである。しかし現状では、個々のゲームがどれぐらいの人気を集めているのかを把握することは難しい。

 ツクールのユーザーの多くは、ソフトウエア総合ダウンロードサイトである「ベクター」を通じて、ダウンロード提供したり評価やコメントを受けたりすることが多いようだ。しかし、RPG分野だけでも1782本の登録があり(6月27日現在)、その中から自分が遊んでみたいタイトルを探すのは、かなり骨の折れる作業だ。やはり優れた作品を評価によって選び出せるようにする仕組みは必須といえる。

>>新バージョンは「Xbox360」に対応

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