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【俺の電子遊戯】第2回 ゲーセン虎の穴と『エグゼドエグゼス』

ファミコンが我が家に導入されたのがお正月ということで、その冬休みはまさにファミコン漬けだった。本体が兄の所有物となっていたお陰で、プレイの優先順位は兄が1番となるのだが……。

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俺の電子遊戯 第2回

    73年生まれ。インベーダーが日本中を侵略した頃、小学生だった筆者の目に映ったビデオゲームは間違いなく「未来へのパスポート」だった。その魅力に取り憑かれ、気づけば不惑の40代となったオッサンが、ビデオゲームと共に過ごした30年を語る連載。第1回目の記事はこちら

ファミコン禁止令

ファミコンが我が家に導入されたのがお正月ということで、その冬休みはまさにファミコン漬けだった。本体が兄の所有物となっていたお陰で、プレイの優先順位は兄が1番となるのだが、何かと優等生だった兄は、部活に勉強にとどっぷりゲームにハマるわけではなかった。私は時間さえあれば『ドンキーコング』と『ドンキーコングJR.』をプレイした。しかしそうなると黙っていないのが親である。冬休みが終わる頃には、ゲームは土日の14時から18時までとプレイする時間を制限するハウスルールが制定されてしまった。

ゲームプレイができる時間が制限されたおかげで、平日は『ドンキーコング』のカセットを片手にファミコンを持つ友人、知人の家をジプシーのように渡り歩きファミコンをプレイした。家でも親の目を盗み、指定の時間外にプレイをするのだが、その悪行に親も気付く。ある日、親が外出するのを見届けたあと、プレイするたびに収納していたファミコンの箱をタンスの上から取り出し、箱を開けるとACアダプタがないのである! 「なぜアダプタがない!?」一瞬狼狽するも、その意味をすぐ理解する「親が隠したか…」こうなるとイタチごっこのはじまりである。先手親、アダプタを隠す。後手私、家探しをしてアダプタを発見する。と何度か繰り返されたACアダプタ争奪戦だったが、結局指定時間外にゲームをプレイする現場を親に押さえられ、現行犯逮捕となり、私は自宅でのファミコンプレイ禁止という刑を課せられるのであった。

自宅でプレイできなければ外でプレイすればいいじゃない

自宅でのファミコンプレイの場を失い、ファミコンジプシー化が一層進んだ私だったが、ゲームへの情熱は薄れるどころか増して行く一方だった。1985年中学生となった私は、行動範囲が地元校区だけでなく市内まで広がる。ゲーム仲間のヒラタ君と、ファミコンの試遊台を設置している市内のおもちゃ屋やデパートのおもちゃ売り場などをくまなくチェックし、日曜日はファミコン遠征に行くか、あるいは、ナムコ発行の小冊子「NG」が両替機の側に置かれていてテーブル筐体が20台ほど設置されているデパートのゲームコーナーに通うのが定番となっていた。

ゲームセンターとの出会い

ある日の放課後、ヒラタ君が「市内のデパート以外にもゲームセンターを見つけたので今から行こう」と誘ってきた。自宅からいつも通う市内のデパートまでは片道、自転車で30分ぐらいの道のりだが、そのゲームセンターは校区外だが10分程度の距離にあるという。ヒラタ君に案内された場所は、通りからはただの雑居ビルにしか見えないが、ビルの敷地に入ると、通路と自転車置き場があり、看板も何もない引き戸の扉がある殺風景な部屋があった。となりは作業場なのか、むき出しになったブラウン管や、整備中のテーブル筐体がチラリと見える。ヒラタ君に即され、自転車を停め、ステンレス製の引き戸をガラガラと開くと、そこにはところ狭しとテーブル筐体が設置されていた。いつも行くデパートのゲームコーナーよりは台数は少ないものの、カプコンの『1942』任天堂の『パンチアウト』タイトーの『ウィズ』日本物産の『マグマックス』など15台ほど設置されていた。

特に嬉しかったのはアイレムの『ジッピーレース』などちょっと古いゲームが30円でプレイできたことだ。当時私の住んでいた地域は、新作でもワンゲーム50円と財布にやさしい設定だったのだが、月のお小遣いが中学生になり、1,000円とアップしたものの少しでも安くプレイできる環境はありがたかった。しかしその値段設定には、すべてハードモード設定という裏があり、たまに旅先のゲームコーナーで100円を投じてプレイする同じゲームが異様に簡単に思え、いつもより長時間プレイできたり、ナチュラルにゲームの腕を鍛えられていた事を知るのはのちの話である。

'85年のクリスマス

俺の電子遊戯 第2回 エグゼドエグゼス

「エ・グ・ゼ・ド・エ・グ・ゼ・ス」黒電話の受話器にひと文字区切りで受話器の向こうに居る母に伝える。学年で3コ下と5コ下の弟向けのクリスマスプレゼントとしてファミコンカセットを買うため、母はクリスマス商戦でにぎわうデパートの公衆電話から、サンタクロースをまだ信じられる年頃の弟たちにバレないように、私を指名して確認の電話をかけてきたのであった。昨年のクリスマス、同様に弟たちへクリスマスプレゼントとして、ファミコンカセットの『ゼビウス』を私がチョイスし、サンタクロースは『ゼビウス』届けてくれた。弟たちは大喜びで『ゼビウス』をプレイし、その面白さは親にも伝わり「あれはいいプレゼントだったね」と私が褒められるほどだった。

昨年の実績を引っさげ、今年も弟たちのクリスマスプレゼントとなるソフトをチョイスすることになった私が目をつけたのはカプコンの『エグゼドエグゼス』。ゲームセンターでプレイしその面白さにハマっていた私は、ファミコンに移植が決定したのを知ったときに「コレしかない!」と9月に発売されファミコンブームを爆発させた『スーパーマリオブラザーズ』には目もくれず、発売元が何故かカプコンではなく、徳間書店になっているのが多少気になりつつも、シブめの移植作をプッシュしたのだった。

そして12月25日の朝、枕元に置かれていた包みからファミコン版『エグゼドエグゼス』のパッケージが現れる。黄色で子供向けにアレンジされたイラストが描かれている。ハードなSF、未来戦争風なメカメカしさがよかったのに…と私は思いつつも、弟たちは目を輝かしながらファミコンが出来る午後まで、説明書を眺めたり期待をふくらませていた。午後、ファミコンができる時間帯になり、『エグゼドエグゼス』のプレイを開始する。チープなグラフィックはファミコンだから仕方ない…と思いつつも、アーケード版にあった緊張感は全くなく、単調なステージが続く。「ラウンド16まで行けば、最終ボスのEXED EXESが登場するはず!」といちるの望みに賭けるものの、その望みは絶たれ、あの大型要塞は現れず、単調な世界が繰り返されるだけであった。

そんなファミコン版『エグゼドエグゼス』のおかげで、家庭内ゲームマエストロとしての地位が低下した私をよそに、プレイを無邪気に楽しむ弟たち。家にひとつしかないテレビを独占してプレイするファミコンは、ゲームの画面を兄弟、時には家族全員で囲み、その体験を共有する正に“ファミリー”コンピューターだった。

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》
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