エムツーの堀井直樹氏と長野敦也氏に聞く

 職人的なこだわりで、バーチャルコンソールや“セガ3D復刻プロジェクト”などで多数のゲーム移植を手掛け、うるさ型のゲームマニアからの支持も厚いエムツー。これまではゲーム開発を軸としてきた同社だが、新規プロジェクトとして“エムツー ショット トリガーズ”を始動させ、この冬ついに家庭用ゲームにパブリッシャーとしてのスタートを切る。すでに第1弾タイトルとして発表となった往年の名作シューティング『バトルガレッガ Rev.2016』、『弾銃フィーバロン』が、シューティングゲームファンを中心に大きな話題を呼んでいるが、いったいいかなる決意でパブリッシャー参入に挑むのだろうか。プロジェクトの理念や展望を、キーパーソンであるプロデューサーの堀井直樹氏とシリーズディレクターの長野敦也氏に、じっくりと訊いた。

気鋭の開発スタジオが満を持してパブリッシャー参入! エムツーが仕掛ける“エムツー ショット トリガーズ”という新たな挑戦【インタビュー】_05

※この記事は週刊ファミ通9月22日号に掲載されたものの完全版です。

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エムツー 代表取締役
堀井直樹氏
(文中は堀井)

1970年千葉県生まれ。エムツー代表取締役。同人ソフトなどの制作からゲーム制作の世界へ。1991年に同社を設立し、メガドライブ版『ガントレット』を制作。以後も“おもしろさ至上主義”をモットーに、移植作やオリジナルタイトルなどを多数開発。エムツーショット トリガーズではプロデューサーを務める。

気鋭の開発スタジオが満を持してパブリッシャー参入! エムツーが仕掛ける“エムツー ショット トリガーズ”という新たな挑戦【インタビュー】_10

エムツー ディレクター
長野敦也
(文中は長野)

1969年東京都生まれ。エムツー所属のディレクター。エムツーショット トリガーズではシリーズ全般のディレクションを担当する。PC-8801シリーズ用の伝説的同人シューティング『REVOLTER』のゲームデザイナーにして、作曲家の崎元仁氏をゲーム業界に導いたレジェンダリーな人物。


エムツーとは?

 1991年8月に、ゲーセン仲間が寄り集まって活動を開始。アーケードゲーム『ガントレット』を勝手にPC(X68000)に移植し、それがメガドライブ版としてリリースされたのがデビュー作となる。2000年代に入ってからは、『SEGA AGES 2500』シリーズや、バーチャルコンソール、NeoGeoStationなどでレトロゲームの移植を多数担当。近年では、移植だけに留まらず立体視による新たな価値観を引き出した“セガ3D復刻プロジェクト”を担当するなど、マニアが泣いて喜ぶこだわりの仕事ぶりで高い評価を集める。これまでにスマートフォンやアーケードタイトルのパブリッシングを行ってきたが、家庭用タイトルのリリースは今回が初めてとなる。内藤時浩氏(代表作『ハイドライド』シリーズなど)や井内ひろし氏(代表作『ガンスターヒーローズ』、『レイディアントシルバーガン』、『斑鳩』など)といったレジェンド・ゲーム開発者も在籍し、“ゲーム業界の梁山泊”と称されることもあるとか!?


後世に残したい名作をビジネスになる形で残す決意

――まずは、エムツーがパブリッシャー参入を決めたきっかけから教えてください。

堀井 約10年前から参入の気持ちはずっとあって、いろいろな権利元さんに「このタイトルを移植させてくれませんか?」という働きかけをしていました。ですが、作っただけでは売り物にはなりません。我々にはそれを商品としてリリースするためのノウハウが足りなかったんです。

――ゲームを完成させるのと、商品として世に送り出すのとは、また違った手間がかかりますからね。

堀井 おっしゃるとおりです。翻って、今年は弊社設立25周年ということもあって、パブリッシャーとして体制を整えようといろいろと準備を整えてきまして、ついに足並みが揃ったので満を持して発表させていただきました。

――10年来の野望が実現するわけですね。ところで、ショット トリガーズというプロジェクトネームの由来は?

堀井 英語の“ショットボタン”からきています。ブランドに注目してくれたユーザーさんたちが、「つぎにあのタイトルが来ないかな?」と、広く想像してもらえるようなシンボルとして、この名前にしました。

長野 シューティングでもジャンプアクションでもショットボタンがあって弾が出れば、それはショット トリガーズの範疇ですね(笑)。

堀井 シリーズ開始から当面はシューティングゲームが多いと思いますが、その後について、あえて幅を狭くすることはしていません。

――第一弾として発表した『バトルガレッガ Rev.2016』や『弾銃フィーバロン』のような、アーケードゲームの移植だけではないということですか。

堀井 そういうことです。家庭用ゲーム機向けもちろんのこと、同人やインディーズも含みます。

数々のサポート機能でゲームをクリアーまで導く

――シリーズとしての特徴は?

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堀井 第一にあるのが、“あのときクリアーできなかったゲームを、ノーコン(ティニュー)クリアーまで導く”ということです。難易度を下げるといった以外にも、プレイヤーにうまくなってもらうためのサポート機能を搭載します。歳を重ねたゲームファンが、眠る前に1プレイして、「ああ、楽しかった!」と言ってもらえるのが理想ですね。

長野 さらには、いわゆる“ガチ攻略”をする方々にも楽しんでもらえるようにしたいと思っています。途中セーブ機能を用意しているので、好きなシーンでセーブしておけば、どこからでも遊べます。たとえばラスボス戦だけをくり返し練習をすることもできるわけです。ちなみに、セーブスロットは複数用意します。

――サポート機能は、具体的にどういったものになるのでしょうか。

長野 画面の左右にランク(ゲーム内難易度)やボーナスアイテムの出現順といったゲームの内部情報を表示する“ガジェット”を用意します。プレイしているときに見るのは難しいかもしれませんが、うまい人のリプレイと組み合わせてくることで、「なぜその操作をしたのか」というのを視覚化できます。

堀井 『バトルガレッガ』は上昇するランクをわざとミスして下げることが攻略法のうちのひとつなのですが、うまい人のプレイでは「なぜここで死んだか」がわかる。本来ならば、プレイヤーが見られない情報を全バラシするということですね。作った人からすると「何てことをしやがるんだ!」かもしれませんが(笑)。

長野 ガジェットは今後のアップデートで種類を追加して、さらに配置をカスタマイズできるようにする予定でいます。そのほかにも、敵弾の色を変えたり、縦画面表示にも対応する予定でいますよ。

堀井 もうひとつはインターネットランキングです。スコアーと同時にリプレイデータもアップロードされて、誰でも閲覧できるので、凄腕スコアラーたちの超絶プレイがいつでも見られるようになります。ゲーセンでうまい人のプレイは、後ろでずっと見ていられるじゃないですか。ショット トリガーズでは、それを手軽にやれるようにします。

――当時を知る、熱いゲームファンに向けてのブランドという位置づけでしょうか?

堀井 基本はそうです。が、若い人にもこうしたゲームの魅力を知ってもらう仕掛けは用意していきます。たとえばシューティングって、本気で遊ぶと「ここをクリアーしたらハイスコア更新だ!」みたいなときに、脳汁がドバドバ出るくらいの興奮が味わえるんです。そうした感覚を知らないユーザーにも興味を持ってもらい、ゆくゆくはゲームそのものの魅力を味わってもらうような遊びを絶賛仕込み中です。具体的なお話は、もう少しお待ち下さい。

――現状だと、価格は未定となっていますが、どのくらいの価格帯を考えていますか?

堀井 既存のレトロゲームタイトルは数100円の価格帯が多いのですが、ショット トリガーズに関しては数1000円程度を予定しています。権利元さんに“ちゃんと儲けてもらおう”というのがその理由です。今回発表した2タイトルの開発元であるエイティングさんやケイブさんのように、僕らがふだんからお付き合いのあるメーカーさんは気楽に相談に乗ってくれますけど、これが初対面のメーカーさんだと「どれくらい儲かるの?」となります。権利元さんには売れた本数に応じたロイヤリティーをお支払いするのですが、それが諸経費を下回るようなら、当然そんなビジネスはしてくれませんよね。そうはならないような実績をちゃんと作ったうえで、話を持って行きたいんです。

※インタビュー後にダウンロード版 3700円[税抜]、Premium Edition 8800円[税抜]に決定

――それは、レトロゲームにちゃんと商売としての需要があることを証明したいという……?

堀井 そうです。僕がユーザーの立場なら、“欲しさ>金額”だと思うんです。それを証明したうえで、出したいゲームが山盛りあるんです。

両タイトルを第1弾に選んだ理由とは?

――発表された2タイトルはどの程度まで完成しているのですか?

堀井 すでに両タイトルともにゲーム本体の移植は完了していて、細部の微調整やガジェットの詰めを行っている段階です。

――シリーズ第1弾タイトルとして、『バトルガレッガ』と『弾銃フィーバロン』を選んだ理由は?

堀井 先ほどお話したように、以前から権利元さんへの働きかけはしていて、ケイブさんとは『弾銃フィーバロン』の話を進めていたのですが、そこに登場するのが『武者アレスタ』や『蒼穹紅蓮隊』などを手掛け、僕らのレトロゲーム仲間でもある外山雄一さん(エイティング)です。外山さんから、「『バトルガレッガ』が20周年なので、出しませんか?」という話をいただいたんですね。それが2016年の春先の話で、本来ならば明らかに準備期間が足りない(笑)。ですが、『バトルガレッガ』は、数年前から「いつかは出したい」ということで、僕たちのほうで“勝手移植”を進めていたんですね。それが功を奏して、2タイトルを同時に開発することとしました。

――エムツーお得意の、「じつは作っていました!」ですね(笑)。つぎに、それぞれのタイトルについてお聞きしていきますが、『バトルガレッガ Rev.2016』とサブタイトルがついていますが、その理由は?

堀井 完全移植は当然として、新たに新音源バージョンを用意したことによる改題です。当時の基板に搭載されていたPCM(いわゆるサンプリング音源)はあまりいい品質ではなかったので、それとは別に新しく仮想のPCM音源チップを追加したうえで曲を作り直しています。作曲者である弊社・並木学がみずからチップの設計から音ネタの再収録までを担当しているので、とてもクリアーな音質になっています。

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長野 プログラム上で動作する仮想チップではあるのですが、実際に生産できる設計になっています。

堀井 とにかく僕が欲しいので、新しくカスタム基板を作るかもしれないですね(笑)。

――『弾銃フィーバロン』についてはいかがでしょうか?

堀井 家庭用移植版がこれまでにリリースされておらず、僕が遊んでみたかったから、というのが最大の理由です。濃いファンの方ならご存じでしょうが、ケイブさんは『究極タイガー』や『達人王』などを手掛けた東亜プランの流れを汲んでいるメーカーです。とくに設立初期に作られた『弾銃フィーバロン』などは、東亜プランの香りが強く残っていて、メカがかっこよかったり、センスが少し変わっていたりします。そういう歴史的なタイトルを後世に残していく必要があると、僕らでは判断したんです。

――現状でのプラットフォームはプレイステーション4ですが、他機種での展開の予定はありますか?

堀井 すべての現行機種で展開できればいいのですが、残念ながら僕と会社の体力がそこまで持たないので、そこはつぎの課題となります。まずはプレイステーション4からですが、ニンテンドー3DSでやりたいものもありますし、さらに言えば、PCも視野にあります。

『弾銃フィーバロン』 

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▲『弾銃フィーバロン』。オリジナルはケイブより1998年登場。敵を倒して出現するサイボーグ兵士を助けて稼ぐ特徴的なスコアシステムと、ディスコ調の演出が特徴の縦スクロールシューティング。

『バトルガレッガ Rev.2016』

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▲『バトルガレッガ Rev.2016』。オリジナルはエイティングより1996年登場。緻密なドット絵と過激に上昇する難易度が話題を呼んだ縦スクロールシューティング。
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▲サントラCDやブックレットといった資料的価値の高い特典が付属する『バトルガレッガ Rev.2016 Premium Edition』。ブックレットにはエイティング社内で発掘された当時の設定資料やステージの絵コンテ、アーティストとの対談といったかなりマニアックな内容となるとのこと。

ラインアップは幅広く最終目的は新作のリリース

――ちょっと気の早い話ですが、今後のラインアップ展開はどのような予定でいるのですか?

堀井 すでにつぎの開発は進めています。お話を持ちかけている数社さんはけっこう前のめりで、当時の資料探しなどにも協力してくださっています。具体的なタイトルについてはまだ言えませんが、このプロジェクトに興味を持ってくださるみなさんなら予想がつくタイトルです。

長野 自分たちが遊びたいし、お客さんも待っているだろうというタイトルですね。

堀井 ケイブさん、エイティングさんのタイトルは今後も継続して手掛けていきたいですし、僕自身の好みで言えばPC-88版『シルフィード』(発売元:ゲームアーツ)を出したいですね。あと、同人だと『超連射68K』(開発者:ファミベのよっしん)にも注目しています。そして、エムツーショット トリガーズの最終目標は、オリジナルの新作をリリースすることです。

――オリジナルの新作!

堀井 そうです。具体的にはトレジャーで『レイディアントシルバーガン』や『斑鳩』を手掛け、現弊社所属の井内ひろしが制作している『ウブスナ UBUSUNA』がそれです。

長野 じつは、井内は過去にショット トリガーズと同様の企画を立案していたんです。僕たちがこのプロジェクトをシリーズとしてしっかりと確立して、新作までのいい流れを作っていきたいです。

堀井 くり返しになりますが、ショット トリガーズの意義は、しっかりとお客さんを付けて、利益を出すことです。それがあれば、ゲームの権利を持っていて、すでにゲーム事業から撤退した会社に「復刻はどうですか」、さらに言えば「シリーズの新作を作らせてもらえませんか」と言えるようになるんです。

――ちゃんと権利元から許諾を得た、シリーズ最新タイトルにつなげるということですね?

堀井 はい。弊社では過去に『グラディウス リバース』や『魂斗羅 リバース』をKONAMIさんと手掛けさせていただきましたが、あれがいちばん近いイメージかもしれません。実るかどうかはわかりませんが、すでに一部のメーカーさんとはその交渉も進めています。

――ショット トリガーズは、ユーザーからのリクエストなどにも応えていく感じになるのでしょうか?

堀井 そうですね。我々もアーケードや家庭用ゲーム機向けはもちろんのこと、PCやインディーゲームのタイトルに関してもリサーチしているところなので、先々のタイトルとして登場する可能性もあります。逆に言えば、それくらい間口を広げているので、「これをぜひ移植して!」、「このタイトル忘れてない?」、「こんな新作が遊びたい!」といった声は、SNSなどを通じてどんどんお寄せください。

――最後に、ショット トリガーズへの意気込みをお聞かせください。

堀井 このショット トリガーズは、今年の8月8日で設立25周年を迎えた弊社の記念プロジェクトとして、社運をかけるくらいの意気込みでがんばっていきます。弊社のモットーである“おもしろさ至上主義”のとおり、ビデオゲームというものの魅力やおもしろさを追求していていきますのでご期待ください!

長野 自分たちが遊んで楽しかったものを後世に残していきたいし、名作はいま遊んでもおもしろいということを伝えていきたいです。今後の展開にご期待ください。

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▲エムツー ショット トリガーズの開発を担当しているエムツースタッフの皆さん。インタビュー後に開発室を見学させてもらったが、ゲーム好きな人たちが(昼夜を気にせず)集う、古きよき “ソフトハウス”の雰囲気を感じた。

並木学氏のコメントが到着!

 アーケード版『バトルガレッガ』サウンドを担当し、今回また新たに『バトルガレッガRev.2016』のサウンドを担当するエムツーの並木学氏からコメントをいただいたので、以下に掲載する

・アーケード版を開発していた当時の記憶

 アーケード版およびセガサターン版『バトルガレッガ』に続き、今回エムツー ショット トリガーズ『バトルガレッガ Rev.2016』でサウンドを担当しております、並木学です。
 おかげさまで“『バトルガレッガ』20周年”を迎えましたので、開発当時の記憶というと21年前までさかのぼりますが…あのころは、ひと言でいって“やんちゃ”でしたね(笑)。
 スタッフは血気盛んな20代。しかもその若さでいて、すでにそれぞれが他社でシューティングやアクションの名作を手掛けてきた猛者たち。言うなれば精鋭の外人部隊でした。それだけにひとりひとりの個性はとても尖っていて、皆それを武器に日々互いにぶつかり合いながら『バトルガレッガ』を開発しました。いや、ぶつかり合うものの、仲はとてもよくて、夜になるとほぼ毎日いっしょに呑み歩いて、給料のほとんどを呑んじゃうような感じで(笑)。ほかにも格ゲーで対戦したり、ラジコンを走らせたり、パンクバンドのライブへ出かけてモッシュしたり、 当時流行したテクノにハマってクラブ通いに明け暮れたり……そんなやんちゃな日々の中、『バトルガレッガ』のサウンドは誕生したのでした。

・新音源を作ろうと思った経緯

 アーケード版『バトルガレッガ』のハードウェアは当時としてもやや時代遅れのスペックで、サウンドもモノラルという、いまからすればかなり貧弱な性能でした。それでも上記で触れた通り、スタッフ陣はその制約を物ともせずに力や知恵をあわせ、ハードウェアをねじ伏せつつ開発しました。自分も当時の精一杯をぶつけてサウンド制作をしましたが、さすがに20年後となったいまとなっては……うーん?

 そこで今回『バトルガレッガ Rev.2016』という形でPS4へ移植するにあたり、弊社の堀井を中心にスタッフから「アーケード版のサウンドをステレオ化してほしい」という要望を強く受けました。
 はい、やれ4Kだサラウンドだといった時代ですから、サウンドもモノラルのままというのは確かに「ナイよね」ってなっちゃいますよね。いや、いまどきステレオ?とお思いになるかもですが……。
 じつはこれ、簡単にできるものでもないのです。言い換えれば「アーケード版のハードウェア性能のまま、サウンドをステレオ化してほしい」ということですから、さすがにそれは無茶だろうというお話で。
 そのためしばらくは頭を悩ませていたのですが……ある日、スタッフとのコミュニケーションにおいてふとした勘違いのハプニングがありまして。それをキッカケに「いっそ、ハードウェア的にステレオ新PCM音源を追加してはどうだろう?」というアイディアが生まれ、あわてて10分ほどで提案書をしたためプレゼンし、そこからあれよあれよという間にスタッフを巻き込みつつ新音源の搭載が実現しました。この辺はまさに「エムツーならでは」といった超展開で。詳しい経緯についてはとてもここでは書ききれませんので「訊きたい!」という要望の声がございましたら、ぜひお寄せください。いずれどこかの機会で(笑)。

・ユーザーへのメッセージ

 『バトルガレッガ Rev.2016』へ収録の新規サウンド“Rev.2016 perfect edition”の制作は、いままさに佳境の状況です。FM音源大好きなあなた、ご安心ください! ちゃんとFM音源を載せたまま、パワーアップをはかっていますよ!しかも必要があれば音色パラメータからいじっていますし、新たな音色を作ったりもしています(笑)。21年前と同じ作りかたで、21年前の自分と向き合いながら進めております。
 メロディや楽器音については従来どおりのFM音源を使って、“そのまま”ステレオ化、そして新搭載の新音源(通称M2PCM)のほうは主にリズムサウンドを中心に、アーケード版の約二倍のサンプリングレートによる当時として高品質なサウンドをステレオで実現しつつ、2016年時点での“パーフェクト”なサウンドを目指していますので、どうぞご期待ください。

 この辺、どんなサウンドになっているか気になるというあなたはぜひ、“エムツー ショット トリガーズ”公式サイトのプロモーション映像をご覧くださいませ! 開発途中のバージョンですが、何曲か聴くことができます。

 そうそう、完全受注生産の『プレミアムエディション』には、この『Rev.2016 perfect edition』のサウンドトラックCDが同梱となりますので、ほしいという方はこの機会をどうかお見逃しなく!!

気鋭の開発スタジオが満を持してパブリッシャー参入! エムツーが仕掛ける“エムツー ショット トリガーズ”という新たな挑戦【インタビュー】_12
▲並木氏より特別に開発環境のスクリーンショットを提供いただいた。現在の作曲作業はグラフィカルな作曲ツール・DAWを使うのがあたりまえだが、それまったく真逆のテキストベースで作業が進められていることがわかる。