BLUE REVOLVER - レビュー

ビビッドな色彩と強烈なサウンドによるスピード感あふれる脳内麻薬装置

「BLUE REVOLVER」レビュー
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シューティングゲーム(以下STG)は既に廃れたジャンルと見られる向きもある。極めてニッチな市場。変わり映えのしないメカニクス。枯渇したアイデア。STGを愛する私にとっても、それはある程度認めざるを得ない事実である。

しかし一方ではSTGほど完成されたジャンルはない。シンプルで直感的な操作。一目瞭然のルール。即座に得られる爽快感。現在のSTGはこれらの完成したフォーマットをあえて崩して新規要素を入れるか、このフォーマットの中でいかに卓越化するかの板挟みにある。どちらの道にも困難が立ちはだかるが、本作「BLUE REVOLVER」が選んだ道は後者である。

彼らは本作を弾幕やBullet Hellと呼ぶのは好まない。そうではなくManic shooterと呼ぶのだ。

本作はStellar Circleによって開発された全5面の縦スクロールSTGだ。彼らはLudum Dareというオンラインのゲームジャムで知り合ったメンバー6名による国際的なチームであり、本作が商業作品としてはデビュー作にあたる。

ケイブやライジングといった古典的名作STGに影響を受けながらも、彼らは本作を弾幕やBullet Hellと呼ぶのは好まない。そうではなくManic shooterと呼ぶのだ。

確かに本作は通常の弾幕系に比べると弾の数はそれほど多くない。一方で敵弾のスピードは速く、自機の移動も速い。さらに敵機はやや硬く、処理するために時間を要する。結果として本作のプレイフィールはとても速く、とても忙しく、とても熱狂的なものとなる。つまりこれが「Manic shooter」なのだ。

ただし、メカニクス自体は通常のSTGの枠を大きく出たものではない。4つのボタンで通常ショット、ボム、ラピッドショット、スペシャルウェポンを使用する。通常ショット押しっぱなしで自機が低速移動になるため、ゲージを使用するスペシャルウェポンを除けば、ケイブの弾幕STGと同じ仕様である。

個性の強いスペシャルウェポンと敵機の硬さはパターン構築の楽しさという点で、非常に良いシナジーを生み出している

自機のパイロットは赤髪のバニーガールMAEと黒髪ポニーテールのVALの2種類存在する。通常ショットやボムの性能は変わらないため、私は積極的にVALを選んだ(理由はお察しください)。ただしゲームのキーとなるスペシャルウェポンはMAEとVALにそれぞれ4種類提供されるが、その内容が微妙に異なっている。

太く強力なHyper Laserと爆風が持続するCluster Missileは両機に共通したスペシャルウェポンだが、MAEのLaserの方がVALに比べて攻撃の発生が遅い分、威力が強い。また連射可能なPlasma Lancerと防御と攻撃を兼ねたVortex BarrierはMAE専用。同時に複数の敵をターゲットするArc Casterと敵弾を跳ね返すStasis FieldはVAL専用となる。

スペシャルウェポンは攻撃特化や防御重視などかなり個性が強く、それぞれの武装によってまったく異なったパターンを構築する必要がある。そもそも敵機が硬めであるため、スペシャルウェポンは積極的に使用しなければ、道中を切り抜けるだけでも大変だ。しかしながら、適切な状況で使用すれば圧倒的なDPSを出せる。さらに弾消しと同時にゲージ回復アイテムを発生するボムを利用するとボスを瞬殺することも可能だ。

個人的には攻撃重視のHyper LaserとCluster Missileが使いやすかった。特に後者は爆風で多くの敵を巻き込むことが可能であるため、敵編隊の出現位置に発射することで、画面の片方を制圧することが可能になる。個性の強いスペシャルウェポンと敵機の硬さはパターン構築の楽しさという点で、非常に良いシナジーを生み出している。そして、それは本作のリプレイ性向上に大きく寄与している。

初心者がまったく太刀打ちできないような類のものではない

本作の難易度はNormal、Hyper、Parallelの3種類。デフォルトがHyperに設定されているが、普通のプレイヤーは間違っても選んではいけない。これらの難易度は、ほぼSTG初心者、アーケードプレイヤー、人外のレベルに相当する。

実際のところ筆者はNormalを4、5回のプレイでワンコインクリアに到達したが、Hyperは現在のところ4面ボス到達がやっとだ。しかしながら、レベルデザインは洗練されており、敵機編隊やボスの弾幕パターンを覚えることによって突破可能となる。

敵機の硬さと敵弾と自機の速さがあるため、弾幕系が得意な人も最初はやや苦戦するであろう。とはいえ、スペシャルウェポンの使い方と適切なボムの運用を学べば、誰でもNormalはクリア可能と思われる。Hyper以降はSTG経験者向きといって良いが、初心者がまったく太刀打ちできないような類のものではない。

またSTGファンにとって重要な稼ぎ要素もスペシャルウェポンと密接に関わっている。通常ショットで敵を倒すと倍率が8倍まで上がり、この状態でスペシャルウェポンで敵を倒すと64倍の倍率でスコアが精算される。他にもパーツ破壊によるブレイクボーナスが存在するが、初心者やクリア重視では狙わない方が良い。とはいえ、本作はスコアによるエクステンドが4回まで可能であり、クリアのためにはある程度稼いだ方が良く、初心者にもスコア稼ぎの楽しさを教えてくる。

さらにこれらの稼ぎ要素を活かした24のミッション、スコアに応じてもらえるポイントを利用した壁紙やリミックスBGMアンロック要素などコンテンツは非常に豊富だ。各種オプションもボタンコンフィグ、解像度、縦画面回転など充実している。

総合的なデザインを鑑賞することもまたひとつの快楽なのだ

最後に本作のデザイン面の秀逸さに触れないわけにいかない。特筆すべきなのは、その色彩感覚と斬新なレイアウト、そして強烈なサウンドトラックだ。アートディレクションとキャラクターデザインを担当するwoof氏のビビッドなビジュアルイメージはこれまでにないSTGの世界観を表現しており、ただ見ているだけでも満足を与える。ハードコアテクノをベースとしたQygen氏のサウンドトラックは、ステージの進行とシンクロすることでプレイヤーに脳内麻薬を分泌させる。これらの要素は文句無しに最先端の“ゲームのデザイン”として記憶されるものであり、普段STGをプレイしない人にも一見の価値があるだろう。

さらに自機選択でのアニメーションやボイスエフェクト。スコアリザルト前のカットイン演出と効果音。アニメ的でありながら最先端のファッションに身を包むキャラクターたち。様々なところでSTGの歴史が培ってきた表現のエッジを見せつけてくれる。

「ゼビウス」のどこが偉大かあなたは知っているだろうか――それはロゴである。いや、もちろんそれ以外も素晴らしい。だけど、本当に良いゲームとはただゲームプレイが楽しいだけでは不十分だ。そのサウンド、ビジュアル、UI、世界観が調和しており、ひとつの世界として際立っているものなのだ。

シューティングゲームをプレイするということは、ただ撃って避けるだけではない。それらの総合的なデザインを鑑賞することもまたひとつの快楽なのだ。変わり映えのしないメカニクス。枯渇したアイデア。だけどそれでも傑作は作れる。「BLUE REVOLVER」がまさにそうであるように。

長所

  • タイトに洗練されたレベルデザイン
  • スペシャルウェポンごとのパターン構築
  • ビビッドでポップなデザイン
  • 強烈なサウンドトラックとゲームプレイのシンクロ

短所

  • 初心者を寄せ付けない雰囲気

総評

メカニクスやシステムの点で本作はSTGというジャンルで何事かを達成しているとは言えない。だがそれはビデオゲームの美学をゲームデザインだけで語る愚行である。スペシャルウェポンを起点としたパターン構築とスコア稼ぎの楽しさ。それに原始的な破壊の爽快感をビビッドな色彩と強烈なサウンドでまとめ上げた本作は、プレイヤーに脳内麻薬を生み出す。

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「BLUE REVOLVER」レビュー

9
Amazing
ニッチと化したシューティングゲームというジャンルの中で極めて高いレベルの完成度を誇る作品。スペシャルウェポンを起点としたパターン構築とスコア稼ぎの楽しさに加え、ビビッドな色彩と強烈なサウンドは唯一無二の世界観を見せてくれる。
BLUE REVOLVER
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