30周年記念作に対するこだわりは?

 2017年2月23日に発売予定の『DARIUS 30th ANNIVERSARY EDITION』は、その名前のとおり人気シューティング『ダライアス』シリーズの30周年を記念して、初代『ダライアス』のプレイステーション4版ディスクや、『Gダライアス』までの歴代タイトルのサントラCD、Blu-rayビデオ、インタビューブックレットなどを収録した商品だ。
 この豪華なパッケージはいかにして生まれたのか、誕生の経緯から大まかな内容まで、タイトーの石川勝久氏に語っていただいた。また、『ダライアス』シリーズがタイトーというゲームメーカーにとってどれだけ大事なコンテンツであるかの証言ともなっているので、じっくりと味わっていただきたい。

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▲音楽CD7枚、プレイステーション4専用ソフト『ダライアス』、インタビューブックレット、Blu-ray ディスクという豪華な内容の『DARIUS 30th ANNIVERSARY EDITION』。ECサイト“エビテン[ebten]”の専売商品として予約受付中だ。価格は13800円[税抜]。
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石川勝久(いしかわ かつひさ)氏。
1969年10月9日生まれ。山形県出身。学生時代から音楽に接し、日本電子専門学校サウンドクリエイティブ科を卒業後タイトーに入社。サウンドチーム・ZUNTATAの一員としておもにアーケードゲームの効果音制作を受け持つ。派生ユニット“ZUNTATA-J.A.M.”を結成し、『電車でGO!』のテーマソングではボーカルを担当する。現在はZUNTATAの5代目リーダーとして、サウンド制作以外でも活躍中。ちなみに、手に持っている『ダライアス』のLPレコードは学生時代に購入した私物。

30周年記念パッケージにふさわしい豪華過ぎる内容

――まずは、『DARIUS 30th ANNIVERSARY EDITION』の企画が決まるまでの経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

石川 話はまず、タイトー社内で『ダライアス』30周年を記念するアイテムを作りましょうという企画からスタートしています。過去にもZUNTATAからCD-BOXを発売はしているのですが、それがもう10年前のことなので、30周年にふさわしい新しい形でのBOXを出したいと思っていました。そこでちょうどハムスターさんからアーケードアーカイブスで『ダライアス』が配信されていたこともあって、ZUNTATA初の試みとして、ゲームとCDが一体になったパッケージにしようという形で決まったわけです。

――どのようなコンセプトで制作されているのでしょうか?

石川 10年前のCD-BOXは、ZUNTATAによる『ダライアス』の記念アルバムというスタンスで作ったのですが、今回はゲームそのものを記念した商品です。ゲームに寄り添ったものにしたいということで、プレイステーション4版もパッケージングしたということです。

――CDに家庭用版の楽曲を含めたのも、そういった理由から?

石川 そうです。今回はZUNTATA楽曲にこだわらずに収録しようということで、タイトーから販売されたほぼすべての家庭用『ダライアス』作品も収録しています。

――デリケートな部分ですが、すでにアーケードアーカイブス版がダウンロード販売されていた上でのパッケージ化というところで懸念もあったのでは。

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石川 たしかに、一度配信で販売されているタイトルをパッケージ化するということで社内的には懸念される声もありました。ただ、どうしても“モノ”として手元に置いておきたいというユーサーさんが一定数いらっしゃる。その声にお応えしたいということです。パッケージであれば手元にディスクが残りますから、もし仮に配信サービスが終わってしまってもプレイができます。幸いハムスターさんに企画をお話したところ、「それは非常にいいですね」と言っていただいたので、以降は円滑に進められましたね。

――ゲームには、アーケードアーカイブス版にはない追加要素がありますね。

石川 インストラクションパネルの表示機能が追加されます。当時を知っているプレイヤーからは、ゾーンの分岐を確認しながらプレイしたいという声があってですね。何度も遊んでいる方でも「つぎのゾーンはどちらに行くんだ?」と確認しながら遊びたいという声があったので、ささやかではありますがご要望に応えるものかと。それと、まだお話していないのですが、モードがひとつ追加されるかもしれません。

――えっ、ホントですか!?

石川 より詳しいことは、12月2日に放送されるZUNTATA NIGHTで公開する予定ですので、ご覧いただければと思います。まだ検討中なのですが、アーケードアーカイブス版もアップデートでパッケージ版の新要素追加が対応できればと考えています。

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――すでにアーケードアーカイブス版を購入した人でも安心ということですね。つぎはCDについてお聞きします。まず、初代~『Gダライアス』までの期間を選んだ理由というのは?

石川 まず『ダライアスバースト』については、CDシリーズが現行商品としてふつうに購入できますので、すでに持っている方からすると最近購入したばかりなのに、ダブることになってしまいます。それに仮に『ダライアスバースト』以降を含めると、CDの枚数がもう4枚くらい増えてしまう(笑)。それだと商品価格も上がってしまいますので、僕が“アーリーシリーズ”と呼んでいるタイトル、つまり『Gダライアス』までの区切りとしました。

――家庭用『ダライアス』が初CD化というトピックもあります。

石川 メガドライブ版『ダライアスII』やゲームボーイ版の『サーガイア』、スーパーファミコン版『ダライアスツイン』はデジタル配信はしているのですが、いずれも初CD化ですね。少し説明をすると、『ダライアスツイン』の作曲は“Splatter.A”名義でタイトーの楽曲を多数手掛けていただいた相澤静夫さんで、データ化したのは古川典裕さんこと、現・なかやまらいでんさん。半分ZUNTATA製なんです。さらに言うと、『ダライアスツイン』に関しては国内版と海外版を収録しているんです。曲は同じなのですけど、国内版はモノラル、海外版がステレオ仕様です。詳しい事情は知らないのですが、本来のデータはステレオで作られていて、何らかの事情で国内版はモノラルにせざるを得なかったらしいです。『ダライアスフォース』は、完全にZUNTATAはノータッチでしたが、今回初めて収録となりました。

――マニアックな部分まで網羅されているわけですか。そう言えば、ケータイ版も収録されていますね。

石川 そうです。要は『ダライアス』と名のつくタイトルの楽曲をアーカイブ化しておきたかったと。ケータイ版は『ダライアスワイド』といって、音源違いを2バージョン、ざっくり言うとFM音源とPCM版を収録しています。細かく言い出すとケータイ版にはもっと音源違いはあるのですが、キリがなくなってしまうので(笑)。ケータイ版はZUNTATAでかなり力を入れてやっていたので、聴き応えがある思います。さらに『レインボーアイランド』や『バブルシンフォニー』のダライアスステージの曲も収録されてます。

――音源は、すでにあるものを使っているのでしょうか?

石川 いえ、ほぼすべての音源を新規収録しているところです。しかもこれまでアナログで収録していたのを、音源から直接デジタルで収録しているので、音質的には最良のものとなっています。現在絶賛収録中なのですが、初代『ダライアス』のデジタル収録が非常にたいへんでして。じつは初代『ダライアス』は、音源の後にミキサー・アンプ回路が入っていて、そこで左右のパン、ボリューム、フィルターなどのコントロールをしているんですよ。

――ええーっ!? 知りませんでした!

石川 ですから“COSMIC AIR WAY”みたいにパートが左右にパンする曲は、その回路でコントロールをしているんです。シルバーホークの位置でショット音の定位が変わるのも、その回路で制御しています。そうした理由は、YM2203x2という音源チップからの音をミキシングする必要があったんです。それと、チップ側でできない細かな部分、たとえばボリュームエンベロープなどをするためですね。WARNING音とかも、その回路があるから作れた音なんです。

――ではCD用の収録はまさか……!

石川 ええ、音源チップから直接デジタルデータを取り出しただけでは、ステレオになっていない曲になってしまうので、制御回路の情報も取り出して、ミキシングして収録しています。これはもう収録スタッフの超技術のなせる技ですね! ホント、頭が下がります!

――めちゃくちゃ手がかかっているんですね。ところで、新作のアレンジ楽曲も収録とのことですが。

石川 はい。全部で5曲あって、ZUNTATAからは現メンバーの土屋昇平とMASAKIが担当しています。なんの楽曲かはまだナイショです(笑)。それ以外に、ZUNTATAがプロデュースした新音楽ユニット“ZELKOKO”が手掛けた歌モノのアレンジが3曲入っています。『ダライアス』で歌モノといったらコレだろうというのが2曲、あとの1曲は「コレを歌モノにするのか!」というチョイスになっています。ZUNTATAがいままでやらない方向性、歌を中心にして、タイトーやZUNTATAの世界を広げていくのがコンセプトなユニットなので。

――Blu-rayディスクに収録される映像は?

石川 初代、『外伝』、『Gダライアス』のスーパープレイヤーによる超絶プレイを収録しています。現在もリアルタイムにプレイを続けているシューターの方のプレイなので、すごいものを見せてくれるハズです。初代『ダライアス』に関してはアーケードアーカイブス版を使っていますが、『外伝』と『Gダライアス』に関してはアーケード実機でのプレイとなります。

――インタビューブックレットはどのような内容となるのでしょう。

石川 新規で取材をした完全書き下ろしになるのですが、これはかなり充実した内容になりますよ。初代~『Gダライアス』までの作曲を手掛けた小倉久佳さんのインタビューは巻頭からかなりのページ数を取っています。小倉さんがタイトーを離れてから、タイトーからロングインタビューをお願いするのはこれが初めてだと思うんですよ。小倉さんならではの切り口を聞いてみたいですね。

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▲石川さんがインタビューに持参してきたのは、なんと小倉氏直筆の初代と『II』の譜面。当時はコンピューターに直接楽曲をコンバートできなかったため、一度譜面に起こしてから曲データを打ち込んでいったのだとか。

――オフィシャルによるインタビューということは、そこでしか聞けない話が多数掘り起こされるんでしょうね。

石川 それ以外にも、初代、『II』、『外伝』や『Gダライアス』に関われれたスタッフにお話を伺っていて、コメントまでを含めると、10名ほどが登場します。とくにすごいのは、初代『ダライアス』のメカデザインやポスターのイラストを描いた小川浩さん、大倉宏俊、小野隆嗣さん――元タツノコプロで“アンモナイト”の名前で数々のアニメ作品に関わっていた方々へのインタビューなんですよ。

――それはすごい! さわりで結構ですので、どんなお話をされているかをおきかせいただけますでしょうか。

石川 タイトーからどんな経緯でデザインの依頼がいったのかとか、デザインする上で気をつけていたことなどですね。おもしろかったのは、彩色がすごく大変だったということで、ヒミツのノウハウもお聞きしました。

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▲アンモナイトによって描かれた初代のキービジュアル(ポスター)。たしかにデザインラインにタツノコプロっぽさを感じさせる。

石川氏から見た『ダライアス』史

――ここからは、石川さんが見聞きしてきた『ダライアス』史をお話いただければと思います。タイトーに入社されたのは1990年とのことですね。時期としては『ダライアスII』がリリースされた直後くらいですか?

石川 そうですね。僕、入社前に『ダライアスII』のロケテストに行っていましたから(笑)。余談ですけど、ロケテストバージョンだと曲がまだ完成していなくて、一部『ニンジャウォーリアーズ』の“Are You Lady?”が流れていたんですよね。ロケテストで聞いて驚いた覚えがあります。

――そんな出来事が(笑)。ZUNTATAに加わるまではどんな流れだったのでしょうか。

石川 入社試験のときは企画志望としたのですが、半年間の新人研修期間中にいろいろと考えまして「やっぱり音(の仕事)をやろうかな」と決心して、ダメ元で希望を出してみたところ、サウンド部の試験を無事にクリアーできて、そこから僕の音屋としてのキャリアがスタートしました。

――入社してから初めて触れた『ダライアス』って覚えています?

石川 覚えています! タイトー中央研究所に配属されて初めてサウンドの作業部屋に行ったときに流れていたのが、『ダライアスツイン』だったんですよ。古川さんが開発装置で鳴らしていたんですが、何度も耳にしたので、すごく記憶に残っているし思い入れがあります。

――入社してからは『ダライアス』の話を関係者に聞いて回ったりとかも?

石川 そうですね。元々『ダライアス』が好きだっただけに、学生時代に仲間たちとアレンジバージョンのカセットテープを作っていたんですよ。それを若気の至りもあって、サウンド配属前に小倉さんに渡したりして(照れ笑)。小倉さんからは「ここの耳コピが間違っていたよ」とか言われました。ただ、僕はコンポーザーではなかったので、楽曲のコンセプトなりを小倉さんから直接レクチャーしてもらうことはなかったですね。

――ああ、そうだったんですね。

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石川 ひとつ思い出したのは、初代『ダライアス』の“CHAOS~Main Theme~”や“Inorganic Beat”のPCMがローファイなのが、学生時代の僕としては「すごくカッコイイな」と思っていたんですよ。当時すでにハイファイな音源とかもあったのに、わざとやっているんだろうなと。それを後に小倉さんに伝えたら、「当時は(コストやチップの性能面などで)あれで精一杯だったんだ」と返された思い出がありますね。当時はPCMチップはともかく、メモリが高かったのが理由だというのは入社してから知りました。

――『ダライアス外伝』では、小倉さんが楽曲、石川さんが効果音を担当されることになります。効果音を作るにあたって、小倉さんとはどう作業を進めていったのでしょう。

石川 僕が効果音をいくつか作っては、まとめて小倉さんに確認してもらうという流れでした。ただ、特徴的な音については、「どうしたらいいんでしょうか?」と質問しましたね。WARNINGであったり、ボンバーのブラックホール音だったり。

――どちらもゲーム中ではすごく印象的な音ですね。

石川 元々あの音はWARNING音として使う想定はしてなかったんです。小倉さんにいくつか聞いてもらっている中で「これいいね、WARNING音にしよう」と決まったんです。個人的には初代の低音が効いたWARNING音が好きだったので、あの音が選ばれたのは意外でした。

――それには理由が?

石川 シリーズの楽曲を聴いていただければわかると思うのですが、小倉さんは毎タイトルごとに、違うモノにしたいという思いがすごくあるんです。それは効果音でも同様で、初代や『II』とも違うテイストのあの音になったわけです。選ばれた瞬間は「えっ、コレ!?」と思いましたけど、それで『ダライアス外伝』の効果音の方向性が見えた部分はありますね。

――有機的、生物感といった方向性ですか。

石川 はい。“VISIONNERZ~幻視人~”からして女性のオペラボイスを使っていますし、WARNING音に選ばれた音もコーラス風なものです。「だったら女性の声をどんどん使っていこう」と思ってその後の作業を進めていったんです。ボンバーを撃ったときに聞こえる女性の悲鳴とかが、まさにそこから生まれた発想ですね。アイテム獲得時に“Soul”や、ステージクリアー後の“Wakeup”と流れるボイスも小倉さんのアイデアなんです。

――小倉さんならではのコンセプト作り、サウンドデザイン術があったということなんですね。

石川 そうですね。タイトルごとに明確なものはあったはずです。小倉さんの中にある完成形に、どれだけ近づけていくかというところだったと思います。

――すごいこだわりだったんですね。

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▲シリーズの歴史を感じさせる、これまで発売されたダライアス関連のCD群。これらに収録されている音源のほとんどを『DARIUS 30th ANNIVERSARY EDITION』は網羅している。

石川 こだわりますね。直接小倉さんから話を聞いたわけではないですが、『ダライアス』シリーズの楽曲は「ありきたりのものにはしたくない」という思いはあったでしょうね。シリーズごとに違うテイストにしようというのもそうです。毎回ごとにコンセプトを考えて方向性を定めてから作っているので、制作は大変そうでしたね。

――『ダライアス』に限らず、タイトーサウンドというと、ゲーム展開との一体感を感じさせるこだわりを感じます。

石川 社内で「こういうふうにコンセプトを立てて組み立てていきなさい」といったことを、教わったわけではないんです。ただタイトー全体でサウンド部署をすごくリスペクトしてくれているというのはあります。グラフィックと同じくらい重要な要素として認めてくれているし、サウンドからの「こうしたい」という意見も聞いてくれる。とくに昔の開発現場はスタッフの人数が少なかったので、みんなでいっしょになって、“ああでもないこうでもない”とやっていたからもありますね。「曲のタイミングを2フレーム遅らせてくれ」みたいな話はよくしていましたね(笑)。

――1/30秒の違いにもこだわったからこそのタイトーゲームらしさが生まれたということですね。ちなみに石川さんから見た小倉さんというのは、どういう人物なのでしょうか?

石川 うーん、難しいですね。仕事を離れたら非常にフレンドリーでおもしろい話もされる気のいい方ではあるんです。でも創作に対する力の入れようはすごい、身を削って生み出している感がありますね。楽曲制作中はすごく悩まれていて、自分のデスクでしきりにメモを取っているんです。たぶんコンセプトを整理していたのだと思いますけど、小倉さんは大先輩にして雲の上の人でしたから「それ、何を書いているんスか?」とは、とても聞けませんでした(笑)。ですから、制作に対する考えを聞けるようになったのは、本当にここ最近ですね。

――改めてお話をうかがうと、タイトー社内での『ダライアス』シリーズの存在感というのは、やはりすごく大きなものだったのですね?

石川 別格でしたね。さらに別格として『スペースインベーダー』があるんですけど、それはともかく(笑)。やはりタイトーを代表するIPとして大事にしていきたいです。裏を返すと、“安易な気持ちでは作れないぞ”という想いは、みんなが持っていると思います。年代が進んで“アーリーダライアス”を知らないスタッフもだいぶ増えましたけど、それでも看板タイトルであるという意識は受け継がれていますね。

――であるからこそ、30年続くタイトルになったと。

石川 そうです。ですので、『ダライアスバースト』が『ダライアスバースト アナザークロニクル』としてアーケードに凱旋したときは、社内は大いに盛り上がりましたね。

――ふと思ったのですが、音楽面では小倉さんが“『ダライアス』の顔”となっていますが、ゲーム面となると代々受け継がれていったという感じなんでしょうか?

石川 そうなんですよ。じつは『ダライアス』って一貫して関わっているのは小倉さんだけで、ゲーム制作のスタッフって毎回ほぼ違うんです。一作一作が違うゲームで、だからこそ飽きられずに続いている理由のひとつなのかとも思います。

――とは言え、タイトルに注がれた熱量は膨大であるでしょうし、その熱量がユーザーにも伝わったから人気が続いたとも言えそうですね。

石川 はい。初代の洗礼を浴びてタイトーに入社した僕みたいな人間はほかにもいたので、作るほうも思い入れがありますからね。『Gダライアス』とかは、開発期間がどんどん延びていきましたから(笑)。つまるところ、僕の中でも『ダライアス外伝』は効果音クリエイターとして「ここまでやってもいいんだ」という自信を得たタイトルです。キャリアの中のひとつの節目となっています。

――なるほど。ところで12月2日には、恒例の情報番組“ZUNTATA NIGHT”が配信となります。

石川 30周年であるのと、ナンバリング放送が10回目ということもあって、全編『ダライアス』尽くしになります。音楽面では小倉さんをゲストにお迎えしてとことん語っていただく予定です。あとは“皆さんの『ダライアス』に対する想い”をフィーチャーしながら、当時の思いを語っていただこうかなと。ゲーム部分に関しては、元タイトーのアオキ ヒロシさんから、当時の開発内部から見た『ダライアス』史を語っていただく予定です。今回は収録場所も一風変わっていて、“ダライアスを食らう”という謎企画も用意しています。いつも以上におもしろい内容になるので、ぜひご覧いただければと思います。

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