トークやライブが実施

 2017年9月2日、タイトーサウンドチームZUNTATA(ズンタタ)のトーク&ライブイベント“REAL ZUNTATA NIGHT2 ~もっと!レイシリーズを語れ!!~”が東京・渋谷のLOFT9にて開催された。タイトーの名作タイトルの開発者が登場し、来場者の目の前でトークやライブをくり広げるこのイベント。今回は、『レイストーム』稼動開始20周年を祝したCD-BOX『Ray’z Music Chronology』の発売記念ということで、『レイフォース』、『レイストーム』、『レイクライシス』からなる、人気縦スクロールシューティング『レイ』シリーズがテーマとなった。ロックオンレーザーという特徴的な仕組みと、SF的な世界観、そしてTAMAYO氏による楽曲といった点で根強い人気を持つシリーズについて濃密な空間が形成された、その模様をリポートしていこう。

『レイ』シリーズの濃密な世界がトーク&ライブで綴られたイベント“REAL ZUNTATA NIGHT2”の模様をリポート_01
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▲100人を超えるファンが駆けつけただけに、CDやTシャツなどの物販は大盛況。このイベントのために用意されたコラボメニュー(コンヒューマンやセラミックハート!)は、早々に売り切れるほどの人気だった。

 イベントの冒頭を彩ったのは、元ZUNTATAのCOSIO(小塩広和)氏によるDJライブ。この日のためにセットしてきたという『レイ』シリーズの名曲たちがノリノリでプレイされると、来場者たちはそれぞれに記憶に残るシーンを思い浮かべながら聞き入っていたようだ。

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▲COSIO氏。

トークコーナーではシステムやサウンドにまつわる秘話が明らかに!

 この日も司会を務めたZUNTATAリーダー・ばび~こと石川勝久氏が、ゲストのTAMAYO氏(『レイ』シリーズコンポーザー)、中西宗博氏(『レイ』シリーズサウンドエンジニア)、コメンテーターのなかやまらいでん氏を招き入れると、第一部のサウンドトークがスタート。YAMAYO氏の楽曲は独特のタイトル名が印象的だが、それもそのはずで、タイトル名からイメージを膨らませて作曲を行うのだそう。たとえば、『レイフォース』の“Penetoration”なら「企画書に“貫く”って単語があって」(TAMAYO氏)からだそうで、その作曲スタイルはいま現在においても変わっていないそうだ。

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▲左から石川氏、なかやま氏、TAMAYO氏、中西氏。
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▲ほかにも「(基板の)F3システムに載っていたエンソニックのチップが扱いにくかった」、「とある効果音はボードにPCM-ROMが載っていないときのエラー音で心臓に悪かった」など、当時の現場を知る人ならではのエピソードが続出。

 トークの最中では、なかやま氏はシリーズ楽曲のアカデミックな分析も行われた。最初に言及したのは、『レイフォース』の“Penetoration”と『レイストーム』の“Geametroic City”の類似性についてで、「テンポが近く、楽曲の構成、キャチーなAメロ、Bメロになると不思議な響きになっているところまで同じ。しかしメロディはまったく違う。そのキーになっているのは、イントロ、メロディの最初の3音である」(なかやま氏)と分析し、それゆえに聞く人に似た印象を与えるのではないかとした。しかし作曲者であるTAMAYO氏は「考えてなーい」とバッサリ。それらを感性で行っているTAMAYO氏の天才ぶりに、来場者からは笑いと拍手とが送られていた。

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▲なかやま氏作成による“Penetoration”と“Geametroic City”の曲構成を比較した図。

 また、なかやま氏は『レイクライシス』の“ラベンダーの咲く庭”については、実際にピアノで曲を演奏しながらの説明を行い、「ピアノで弾くと不協和音にしかならない」と、技術的にトリッキーなことをしていると解説。これもまたTAMAYO氏の「重ねていて気持ちのいい音を選んだ」という感性のなせる技だということを証明し、ファンを驚かせた。

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▲ピアノ演奏にて“ラベンダーの咲く庭”のトリッキーさを解説するなかやま氏。

 トークショー第2部では、ゲストとして『レイストームHD』(PS3 / Xbox 360)のプロデュースなどを担当した現マーベラスのアオキヒロシ氏と、『レイ』シリーズのプランナーである山下智久氏、そしてファン代表としてCHAKO氏が登場。当時のエピソードを交えつつ、シリーズにまつわる大小の謎が掘り起こされていった。

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▲左から石川氏、アオキ氏、山下氏。

 アオキ氏は、『レイ』シリーズが開発されていた1993年を“シューティングゲームの転換期”と定義。この年と前後として大手メーカーのシューティングゲームが減っていったこと、また、扇型ショットとボムによる『雷電II』のわかりやすさ、『ストリートファイターII』のヒットによる多彩なキャラクター性がトレンドであったにもかかわらず、『レイフォース』にはそのどれもがなく、時代に逆行するストイックな作りであったと説明。同年にアーケードデビューをした彩京やライジングが独特の世界観を売りにしていたのとは逆に、ある種使い古された直球のSFをテーマとしたのも、プライドの高さからではないかと考察した。

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▲アオキ氏がこの日のために作成した年表を元に、当時の(シューティング)ゲームのトレンドが分析され、その中での『レイフォース』の立ち位置が示された。

 それを受けて山下氏は、「ロックオンレーザーは(目新しさから逆に)開発や営業からの反発があった」ことを披露。それを解消するために、AREA1の冒頭では、低高度にいる敵がしばらく上がってこないといったゲームの仕組みがわかる仕掛けを用意していたのだという。しかし、開発内部でも新システムに難儀することもあったようで「AREA5のオーディンにダメージを与えると高度が下がる仕組みは、気づいたらプログラマーが勝手に入れていてくれた」(山下氏)と語り、それにより遊びに幅が増したのだそう。

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▲AREA1冒頭(左)やAREA3ボスの弱点(右)など、高度を使った遊びをわかりやすくするための仕掛けを各所に用意したという。
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▲お蔵入りしたシリーズ第二弾『R-Gear』の映像(左)や、広報誌に掲載された若かりしころの山下氏の顔写真(右)など、硬軟取り混ぜた資料の数々も披露された。

 ほかにも、「ZUNTATAが作成した年表が開発側の世界観設定に影響を与えた」、「『レイストーム』のロックオン保持時間が長いのは見下ろし視点になったため」、「『レイクライシス』の初期企画はもっと3Dらしい後方からの視点だった」――といった貴重なエピソードが語られ、そのたびに来場者からはオドロキの声があがっていた。

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▲山下氏がCHAKO氏制作の同人誌に寄稿した『レイクライシス』の初期設定。これもまた貴重!

ZUNTATAとBETTA FLASHによるミニライブ!

 イベント第三部では、ZUNTATAとBETTA FLASHによるミニライブが行われた。最初に登場したのは、石川氏(Key.)、下田祐(Gt.)、MASAKI(Dr.)による3ピース編成のZUNTATA。「Tスクエアを意識した」というMASAKI氏による爽快な新アレンジによる“Penetration”、そして“GEOMETRIC CITY”の“electric shock ver.”が披露された。

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 続いてステージに姿を見せたのは、TAMAYO氏とCyuaさんによるサウンドユニット・BETTA FLASH。“ray'z BEYOND Live Ver.”と“安置 -Antithese- ZTT night Ver.”、“CERAMIC HEART by Schnack”の3曲を立て続けに披露すると、来場者は立ち上がってリズムに身を委ねていた。

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 盛況のうちに幕を閉じた“REAL ZUNTATA NIGHT2”。今年はZUNTATA30周年ということもあって、さらなる仕掛けも準備されていそう。公式サイトなど、今後のニュースにも注目だ。

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