アーケードビデオゲームの希望の光?新システム基板開発者「exA-Arcadia」独占インタビュー

すでに10以上のタイトルを開発中

アーケードビデオゲームの希望の光?新システム基板「exA-Arcadia」独占インタビュー - アカとブルー Type R
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いまやアーケード用ビデオゲームといえばバンダイナムコエンターテインメントによる「鉄拳7」「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブースト ON」や、ネットワーク配信サービスでいえばタイトーの「Nesica×cross Live」、セガ「ALL.Net P-ras MULTI」が主なものであり”それしかない”という状況だ。

「基板」というポイントに注目すれば、ROMやコンデンサといった部品が半田付けされた緑色のプリントサーキットボード形式のものは対戦格闘ゲーム「エヌアイン完全世界」に採用されたシステム基板「SYSTEM BOARD Y2」(エスアイエレクトロニクス/2009年~2011年)や「怒首領蜂 最大往生「(ケイブ/2012月)が最後となっており、PlayStation 3ベースの互換性を持った「SYSTEM357(369)」や「Taito Type X」など、ソフトとなるHDDを入れ替えることによって利便性を図った「PC基板」が2000年代中盤から台頭し始め、現在の主流となっている。

近年ではネットワーク接続が必須となったことにより、1クレジット毎にメーカーが一定額を徴収する従量課金の発生や、通信・接続料の負担など、ゲームセンターの経営にさらなる圧迫となっているのが現状だ。

「ジャパンアミューズメントエキスポ」(JAEPO)に出展されるタイトルもここ数年は大型筐体を用いたガンシューティング、メダルゲーム、プライズゲームばかり。時代の変化と言ってしまえばそれまでだが、やはりビデオゲームがないことには寂しさを感じてしまう。こうしたなか、これまでIGN JAPANでもインタビューやレビューにて取り扱ってきた(株)タノシマスのiOS/Android用縦スクロールシューティングゲーム「アカとブルー」が「~TYPE-R」のサブタイトルを冠してアーケードゲーム化されることに加え、今年の「JAEPO」に出展されることが発表されている。

「Nesica×cross Live」「ALL.Net P-ras MULTI」にて配信されるだろうという予想に反し、この時代に単体基板でリリースされることに驚いた人も少なくないはずだ。この背景には、海外で発足した「とあるプロジェクト」が存在していることを紹介しなければならないだろう。今回「アカとブルー TYPE-R」を採用した新システム基板「exA-Arcadia」(以下「EXA」)のプロジェクトメンバーであるShouTime:ことEric Chung氏(株式会社ShowMeHoldings代表取締役)にインタビューを敢行した。


アーケード業界に新しい活力を与えること

――「EXA」プロジェクトが立ち上げたきっかけと時期をお教えください。

ShouTime:ゲームセンター向けコンテンツがどんどん減っていることと、多数の店舗が閉店しています。ゲームセンターの聖地として知られている日本でもこんなことが起こっているという問題を解決しようとしました。2017年に国内外市場における対策を考慮したところ、ユーザー、オペレーター、ゲーム開発者等のニーズに対応できる商品がないことを知り、その年の9月に「EXA」を開発することに決めました。

――プロジェクトのメンバーはみなさんアメリカの方なのでしょうか。

ShouTime:私は「謎のアメリカ人」として、マニアックなアーケードゲーマーの中では噂になっていることもあったかもしれませんが、実際は「EXA」システム基板を開発・販売することに関して世界的な視野を確保するために、私以外にもさまざまな国籍のプロジェクトメンバーを迎えております。日本、米国、豪州、ウクライナ、カナダ、ブラジル、メキシコ、台湾、欧州等からのメンバーもいます。EXAはたった一つの市場に向ける商品でなく、世界のユーザーや業者のためのハードです。

――「EXA」という言葉に込められた意味をお聞かせください。

ShouTime:「EXA」は「100京」、すなわち「10の18乗」ということを意味します。弊社のプロダクトはアーケード業界を成長させるために、そのエコシステムにおけるあらゆる当事者を満足させるポテンシャルを示しています。弊社の使命は、いつかEXA(100京)件のゲーセンも存在できるように、アーケード業界に新しい活力を与えることです。

1クレジット毎の分配収益(従量課金)がないため、オペレーターさんの運営・経営に負担をかけることはありません。

――筐体との接続はJVS(※1)だけではなくJAMMA(※2)にも対応するのでしょうか。スペックも併せてお教えください。

ShouTime:「EXA」はJVS基準対応で、I/O基板を用いればJAMMAに変換して稼働することも可能です。このI/O基板もセガ、ナムコ、タイトーと各社から市場に出ていますが、すべてに対応しております。MVS(※3)のように、本体となるマザーシステムにソフト用ROMが最大で4本同時に搭載することが可能です。マザーとROMキットの価格は未定ですが、今夏からの販売を考えております。スペックについてはまだ詳しく発表できませんが、単純な仕様観点からすればPlay Station 4、XBOX ONEと同等もしくはそれ以上です。また、ソフトのバグや不具合が発売後に見つかっても、インターネットに接続できる環境であれば無償アップデートによる対応が可能です。

(※1)ゲームとシステムの多様化や筐体間通信の向上を目的に、日本アミューズメントマシン協会(JAMMA)が1997年に制定した新規格。
(※2)それまでメーカーごとにバラバラだった筐体と基板の接続を統一すべくJAMMAが1986年に定めた旧規格。
(※3)SNKが開発したシステム基板「Multi Video System」の略称。複数のカートリッジを差し込むことによって、ひとつの筐体でも複数のゲームを選べるようにしたことで利便性を向上した。

――「Nesica×cross Live」「ALL.Net P-ras MULTI」といったネットワーク配信サービスとは違うアピールポイントや、「EXA」ならではの強みをお教えください。

ShouTime:「EXA」はネットワーク接続不要のスタンドアローン基板であるため、インターネットインフラ設備が強く築いていない地域においてもオペレーター、ユーザー等は高価なネットワーク器具、デジタルサービス契約を一切することなくゲームを購入することができます。国内市場における現行機体と異なり、弊社の商品はオペレーターもユーザーも同様に購入できるものです。また、1クレジット毎の分配収益(従量課金)がないため、オペレーターさんの運営・経営に負担をかけることはありません。近い将来、「EXA」がどこの市場でも最適で選択されるプラットフォームとしてさらに目立つように、ユーザー、オペレーターのための新しいサービスを色々計画しております。

――MVSのカートリッジを用いて「Fast Striker(高速ストライカー)」を開発した「NG:DEV.TEAM.」や、基板の設計販売を自前で行った「SKYCURSER」チームなど、「EXA」プロジェクトに先駆けて業務用ビデオゲームをリリースしている会社もありますが、そういった会社とは異なるアプローチを仕掛けたり、独自のプランニングを考えられているのでしょうか。

数十年にわたって続く活気のあるアーケードエコシステム

ShouTime:アーケード市場向けに新しい商品をプロデュースしている「NG:DEV TEAM」「Griffin Aerotech」を大いに尊敬しております。新しいハードウェア、ソフトウェアを一から開発することは簡単ではありません。弊社のアプローチはユーザー、開発者、オペレーターの泣き所を考慮したうえ、開発者が素晴らしいゲームを開発するために使いやすいプラットフォームのみならず、新しいゲームのリリースが今後、数十年にわたって続く活気のあるアーケードエコシステムを確保するため、業者も健全な事業を築くために提供しております。まだ発表することはできませんが、オペレーター向け機能もたくさん企画しております。

――中小メーカーやインディーズからのピックアップだけではなく、かつては業務用ビデオゲームをリリースしていた日本(海外)メーカーと協力にも期待が膨らみます。

ShouTime:素晴らしいゲームは国籍を問わずあらゆる規模の企業によって作られております。もちろん、日本ゲーム業界の偉大な先駆者と手を組むことは喜んでお受けします。いくつかの大規模な海外メーカーとはすでに話を進めております。ご興味のある企業様なら、ぜひお声掛けください。

――すでにメーカーやゲームセンターには営業をかけているのでしょうか? これまでの反応やご意見がありましたらぜひお聞かせください。

ShouTime: 今のところ、営業をかけた開発者、業者に非常に熱心や興奮を表していただき、拒否されたことは幸いにもいまだありません。この傾向が続くよう願っております。オペレーターの方は特に自身のニーズに優先的に見合える新しいシステムを楽しみにしているそうで、「EXA」の基板をどれだけ早く入手できるかというお問合せをたくさん受けております。

アクション、格闘ゲーム、パズル、スポーツなど、開発中のタイトルは10本もあります。

――「アカとブルー TYPE-R」「SUPER HYDORAH」といったシューティングゲームが「EXA」でアーケード化しますが、ビデオゲームといえばアクションゲームや対戦格闘ゲームを忘れることはできませんよね。

ShouTime:現在、縦シューティングの「アカとブルー TYPE-R」と、横シューティングである「SUPER HYDORAH AC」を正式に発表しました。これ以外にも、アクション、格闘ゲーム、パズル、スポーツなど、開発中のタイトルは10本もあります。

――「EXA」によって日本そして海外のアーケードシーンがどのように盛り上がることを期待されているのでしょうか。

ShouTime:国内市場に関して言えば、世界で知られている素晴らしいコンテンツを有して、かつてのアーケードゲームクリエイターがアーケードシーンへ本格復帰することを期待しております。特にe-Sports市場における競争ゲームに関して、弊社は現地のコミュニティと協力しながら、最高に楽しめる作品にできるように全力を尽くします。一方、日本人でも楽しめる、驚くほどの高いクオリティの素晴らしい作品を海外から日本国内にリリースします。さらに、海外市場において北米のアーケードシーンの復活に火をつけることや、南米・東南アジアなど忘れられたアーケードシーンを再構築することを支援することを期待しております。

――ビデオゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

ShouTime:アーケード用ビデオゲームファンや業者のみなさん、一緒にゲーセンを再びに盛り上げましょう! 「POWER TO THE EXA!」

ネットワーク接続いらずで従量課金を徴収しないことはオペレーターへの負担を確実に軽減し、シューティングゲーム以外にもさまざまなジャンルからのリリースを10本予定しているのは幸先の良いスタートを切ることができそうだ。これからの動向には目をそらさずに見守りたい。

公式Twitter:
https://twitter.com/exaarcadia

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