Scratchで『スペースインベーダー』のプログラミング体験!

 2018年3月31日、老舗ゲームメーカーのタイトーと、京都・四条烏丸にあるプログラミングスクール・アプリ制作教室プロクラスによるコラボレーションイベント“タイトー×プロクラス わくわくプログラミング無料体験教室”が、東京都新宿区のタイトー本社(新宿イーストサイドスクエアビル内)にて開催されました。
 5年間積み上げてきたスクール運営をさらなる段階に進めたいプロクラスと、新規事業の開拓を模索するタイトーの思惑が一致する形で企画された本イベント。小学校2年生から中学3年生までを対象に、定員20名の講義(90分)を1日で2回行う予定でしたが、応募者多数により急きょ3回目も設けられたそうです。

名作アーケードゲームは時を超えて蘇る!! “タイトー×プロクラス わくわくプログラミング無料体験教室”リポート_01
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記者が取材したのは13時開始の2回目。すべての参加者の子どもには保護者または家族が同席し、プログラミング教育への関心度の高さがうかがえました。

 プロクラスの代表・吉田光広氏による講義は“プログラミング学習の意義は?”、“コンピュータプログラムとは何か?”といった内容から始まり、子ども向けプログラミング学習環境[[“Scratchhttps://scratch.mit.edu/]]”の使いかたの指導に。エディターの画面構成や命令ブロックの配置のしかたなどの基本的な説明を終えると、いよいよ『スペースインベーダー』のゲームプログラミング体験です。

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タイトーが1978年にリリースし一大ブームを巻き起こしたアーケード用シューティング『スペースインベーダー』について解説する吉田氏。参加者の中にも知っている子どもは何人かいたようで、親子2代に語り継がれる名作の底力を思い知りました。

 とは言え、いちからすべてを作り上げるのではなく、ゲームプログラム全体の中から、自機(砲台)の操作に関するルーチンの基礎部分を実際にプログラミングする形式で進められました。
 Scratchは、“スプライト”と呼ばれる、特定の役割を果たすグラフィックの最大公約数的なまとまりごとにプログラムを入力していく構造のため、まずは自機のスプライトに、キー入力で左右移動するルーチンを作成。続いて“弾”のスプライトに、キー入力でいかにも自機の砲身から発射されて飛んでいくように見える動きのルーチンを作成しました。

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Scratchの仕様由来の特殊ルールをその都度補足しつつ、イベントドリブン型プログラムの概要説明など、プログラミングの基礎的な考えかたについても解説していく吉田氏。また「問題が発生するのは当たり前」との前提で、生じた不具合の調整も体験させていました。

 今回は、参加者が持参したノートPCに、スタッフが事前にコピーしたプロジェクトデータを使ってのプログラミング体験……ということで、各スプライトには、『スペースインベーダー』のオリジナル版とほぼ同じグラフィックが、あらかじめ割り当てられていました。
 “本物”の素材を使ってのゲームプログラミングは、少なくともインベーダー直撃世代の記者に近い年齢の参加者の親御さんたちにとって興味を惹かれるものだったのではないでしょうか。

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弾を発射すると、オリジナル版と同じ効果音が鳴るようセッティングされていたこともあり、終盤はかなりにぎやかムードに。参加者たちは“キャラクターが思い通りに動き、音が鳴る”というわかりやすい結果を一様に実感できたようです。

 プログラミング体験および保護者向けの説明が終わってからの“お楽しみタイム”では、プロジェクトデータに格納されていた完成版のゲームプログラムを呼び出して、『スペースインベーダー』を時間いっぱいまでプレイしました。
 スコア表示がなかったり、画面上部を飛来するUFOが登場しなかったりと、オリジナル版のすべての要素が再現されているわけではありませんが、“敵の攻撃をよけながら敵を撃ち落とす”というシューティングゲームの醍醐味を充分に味わえる内容ということで、子どもたちは夢中でプレイしていました。

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ずらりと並んだノートPCのディスプレイには一様に『スペースインベーダー』のプレイ画面が映し出され、けたたましい効果音があちこちから鳴り響く……という状態は、さながら“21世紀版インベーダーハウス”。名作は世代を越えて愛されることを実感しました。
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使用したプロジェクトデータは“今回限定の特別版”ということで、イベント終了とともに削除。その代わり、ゲームプログラム部分は同じで、グラフィックや効果音が異なるプロジェクトデータが、おみやげとして提供されました。

主要スタッフに聞く

タイトー 新規ビジネス推進部新規ビジネス推進課係長 針谷真氏(写真・左)
プロクラス 代表 吉田光広氏(写真・右)

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──そもそもなぜタイトーさんとプロクラスさんのコラボが実現したのでしょうか?

吉田 最初に提案をしたのは私たちです。タイトーさんがお持ちのゲームはシンプルで、ゲームとして子どもたちに教えやすいという構造があったので、『スペースインベーダー』を使わせていただけないかと相談させていただいたのが、お話のスタートです。

針谷 私の部署は、エンターテインメントを軸にさまざまなソリューションを提案する部署で、その中でエデュテイメント(※教育要素のあるエンターテインメント)の分野もいくつか検討していました。今回たまたま縁があって、こういう提案をいただくことができましたので、「これはぜひに」と。

──『スペースインベーダー』のプログラムはどのように作成されたのでしょうか?

吉田 私のほうでScratch用に作ったプログラムを、タイトーさんに監修していただきました。

針谷 『スペースインベーダー』のブランドとしてのチェックと、あとこうしたほうがもっとおもしろくなるんじゃないかというところの提案をさせていただきましたね。

──今日のイベントを実施してみての率直な感想は?

針谷 退出するときに「おもしろかった!」と言ってくれた子もいたので、非常に手応えを感じているところです。最初に募集をかけたときにすぐ予約の定員が埋まったことから、プログラム教育に関心を持つご家庭の方が多いことに驚きました。参加者は、小学生がそれぞれの学年にまんべんなくいて、中学生もいらっしゃいました。

吉田 席の配置は、メンター(サポートスタッフ)が動きやすいように低学年(小2~3)を後方に寄せたのですが、とくに問題なかったですね。関西で行なっているときは比較的低学年の子につきっきりになっている場合があるのですが、東京はお子さんや親御さんの(プログラミング教育に対する)感度や経験値が高いなと実感しました。そのぶん、レベルの高いものをやらないとだめだなという意識もあります。ゲームをふつうに作ること自体はどこでもできると思いますが、その過程でどういう気づきを与えていけるかというプラスアルファを深めていく必要があると感じています。

──そのプラスアルファの部分で、タイトーのIPが重要な役割を果たす……ということでしょうか?

針谷 『スペースインベーダー』は構造がシンプルで、コードにしたときも理解しやすいんです。“これなら自分にもできるんじゃないか”という意欲を引き出せるのは、レトロゲームに属するジャンルの強みだと思います。

吉田 プログラミングの結果が“遊んで楽しいゲーム”としてすぐに目の前に出てくるというのは、今回のScratchプログラミング体験のよさであり、子どもたちのモチベーションもぜんぜん違ってくるのではないかと思います。

''──体験後には、タイトーのゲームを作りながら、プログラミングの基礎と、ゲームの仕組みや柔軟な発想を学べる月謝制の塾を、2018年6月から開催することが発表されました(※場所は今回と同じく新宿イーストサイドスクエアビル内)。こちらに関しての詳細を教えてください。

吉田 具体的な開始時期や授業内容については、現在検討中です。使用する開発環境はScratchだけでなく、Unityなどのツールも導入できればと考えています。

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──いざ始めるとなったら、『スペースインベーダー』以外のタイトーIPも使用されると思っていてよいでしょうか?

吉田 たとえば『スペースインベーダー』のような固定画面のシューティングと、『ダライアス』のように横スクロールするシューティングでは、学ぶポイントがぜんぜん違ってきます。私たちとしては、タイトーさんのいろんなコンテンツ、IPを学習用として切り出しながら活用していきたいなと思っています。

──今回の一連の試みはやはり、2020年度からの公立小学校でのプログラミング学習必修化を見据えたものでしょうか?

吉田 絶対需要があるはずだというところは考えています。

針谷 タイトーとしても新規事業の柱のひとつになればと思っています。

吉田 著名なゲームメーカーさんのIPが使えると使えないとでは、授業の性質が違ってきます。新しい形態のプログラミング学習に、これまでの5年間の指導ノウハウを注ぎ込んで、皆さんに喜ばれるものに仕上げていきたいと思います。

針谷 実際、今回のイベントは、プロクラスさんの経験なくしてはできないものでした。プログラミング教育は、世の中に役立つことに直結させる指導のしかたもあると思いますが、うちと組んでいただくことで“楽しさ”の重要性に着目していただけたのは、非常にありがたかったですね。

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