インディーの境目が曖昧となってきたシューティングゲームまとめ:BitSummit 2018

移植にリメイク、完全新作まで

インディーの境目が曖昧となってきたシューティングゲームまとめ:BitSummit 2018 - BitSummit Volume 6
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5月12日・13日に京都市のみやこめっせで行われた国内最大級の大型インディーゲームイベント「BitSummit Volume 6」。IGN JAPANでは一日ぶっ続けの生中継を行ったため、MCをつとめた筆者自身はそれほど会場を回る時間がなかった。だが、それでも! だが、それでもシューティングゲームだけは見逃せないッ!!

ということで、インディーゲームイベントの毎度恒例のシューティングゲーム(以下STG)まとめを行ってみたい。先日掲載したこちらの記事でもわかる通り、昨今、シューティングゲーム界隈はニッチなジャンルの割には思いの外、新たなニュースと発表で賑わっている。これはNintendo SwitchやexA-Arcadiaといった新たなプラットフォームの恩恵を受けたものではあるが、それはインディー業界でも変わらない。

そもそも今回のBitSummitにおいては『斑鳩』や『サイヴァリア デルタ』といった往年の名作STGも出展しており、もうSTGに限ってはインディーとメジャーなんて境界はあまり意味がないだろう。たとえ大会社であっても、このジャンルにタイトルを投入してくる企業はやりたくてやっているのは間違いないのだから。

また今回のBitSummitのステージでは「Shooting Stars- シューティングゲームのジャンルや歴史、インスピレーションを得ているインディーゲームについて語らいます!」というセッションが行われた。この中でピラミッドの柏木准一氏がこれからもピラミッドではSTGをリリースしていきたいと意気込んでいたのが印象的だ。ビデオゲーム産業全体としては確かにニッチかもしれないが、まだまだこのジャンルに興味を持っているクリエイターと熱いファンがいることは間違いないのだ。

『デビル・エンジン』by Sinoc

こちらのgif動画はitch.ioのページから。会場で遊べたステージは別のものだ。

今回出展したタイトルでは一番のダークホースがDangen Entertainmentがパブリッシュする予定の『デビル・エンジン』だ。その禍々しい名前から予想される通り、高難易度の高速横スクロールシューティング。筆者も含めて、多くの来場者を地獄の底にぶち落としていた。STGを普段からプレイしている人でも初見では1分耐えることすら難しく、初心者なら冗談抜きに30秒で死ねる。

ゲームシステム自体は(一見)シンプルな部類だ。通常ショットに加えて強力なミサイル攻撃のボム、さらに低速移動と自機のまわりの敵弾を消すことが可能なバーストを4つのボタンで操作する。ストック制のボムは通常の弾幕STGなどと異なり、弾消しや無敵といった効果はなく、ほぼダメージに特化した武装。そのかわりにバーストによって敵弾をうまく消して画面端で切り返すようなプレイイングが求められる。

一見、高機能な自機に思えるが、通常ショットの威力が弱く、逆に敵の耐久力が高いため、かなりの敵を撃ち漏らしてしまう。結果として高速の自機狙い弾で画面端に追い詰められてしまうが、ここでバーストで切り返せばなんとか生き残ることが可能となる。とはいえ、バーストの範囲はそこまで大きくなく、一度使えば、数秒のクールダウンが必要。うまく使いこなすには敵弾の誘導を含めた高度なパターン化が必要となる。

画面からはこの難しさが伝わりにくい……。ともかく高速の自機狙い弾が迫ってくる。

ビジュアル的には16bitな雰囲気のゴージャスなピクセルアート。多重スクロールを多用した背景は『サンダーフォース』からの影響を強く感じさせる。また開発者は『Hellsinker.』が好きと公言していたが、癖のあるゲームプレイに影響している可能性は大いにあるだろう。

本作は2018年内にPCでリリース予定。全部で6つのステージで構成されるそうだが、会場でプレイできたのはステージ4。ステージ1がこの難易度じゃなくてよかった……とこれを聞いてかなり安心した。また残機無制限でのスコアタックを楽しめるキャラバンモードもあるようだ。高難易度ながらもバーストを駆使して攻略したい気持ちは強く、STGの一部が取り憑かれる可能性は非常に高いだろう。デモ版はこちらで公開されているので、気になった方はチェックしてみよう。

『斑鳩 IKARUGA』by トレジャー

今回会場で見て驚いたのが、『斑鳩』のSwitch版。5月30日にPikiiからリリースされるということはつい先日聞いたばかりだが、まさか会場で遊べるとは思っていなかった。会場では実際にSwitch版が展示され、縦置きモニターでプロコンで試遊できた。

内容は説明の必要はないだろう。あくまでもいつもの『斑鳩』がSwitchでできるだけということだ。移植はさすがにトレジャー自身ということだけあって、問題はないだろう。筆者は最近はSteam版でプレイしているが、2面までプレイした感じで違和感があるところはなかった。1面ボスの処理落ち演出などもしっかりと入っている。

どちらかと言えば気になるのは、プロコンだ。好みの部類かもしれないが、プロコンのD-padは斜めの入力がややシビアである。SwitchユーザーのSTGファンは本格的に環境を整えるべきかもしれない。

『サイヴァリア デルタ』by シティコネクション

こちらもいまや古典として知られる名作弾幕STGの移植作品。もともとは2000年にサクセスが開発、タイトーが発売したアーケードゲームであり、今回は『サイヴァリア ミディアムユニット』と、マイナーチェンジ版『サイヴァリア リビジョン』の2作をリメイクし、『サイヴァリア デルタ』としてシティコネクションがリリースする。

基本的な内容は変わらないが、指摘すべき部分は以下の3点だ。ひとつは現在の環境に合わせた高解像度化。横画面はもちろんのこと、縦画面のプレイにも対応しており、ビジュアル的にアップグレードしている。

次に重要なのは本作を象徴する「ローリング」の操作だ。本作は敵弾にカスればカスるほど、経験値が溜まり、レベルアップでショットが強化されるだけではなく、一瞬無敵となる。つまりなるべく敵弾に接近するというリスクを負えば、負うほどリターンが得られるシステムだが、それをさらに強調するのが「ローリング」なのだ。レバーを左右にすばやく入力すると、自機が回転して当たり判定が小さくなり、カスり判定は広がる。ゆえに弾幕の中で踊るがごとく、ローリングしまくってレベルアップしつつ、弾幕を回避するという芸当が本作の攻略の方針なのだ。

とはいっても、敵弾スレスレのところでレバーを左右に動かすというのはなかなか勇気がいることだ。そもそも微調整で避けながら左右に動かすのは場合によっては事故のもとである。だが、本作ではボタンひとつでローリングすることができるため、思いの外カジュアルにプレイできるようになっているのだ。これは過去のPS2に移植されたバージョンにも実装された要素だが、今回も踏襲されているのはとてもありがたい。

三点目は新しいサウンドトラック。『サイヴァリア』といえば、いち早くトランスをSTGに取り入れたゲームであったが、本作はオリジナル版にWASi303氏の新曲も収録。会場でもかなりの大音量で鳴らされていたサウンドトラックは全体的にハードコアテクノよりでかなりカッコよかった。サイバーな雰囲気のこれまでのトランスも素晴らしかったが、楽曲が盛り上がる前にボスを倒してしまうことがあったが、今回のハードコアテクノは最初からかなりアッパーなテンションでプレイすることができる。本作はPS4とSwitchで今年の8月30日にリリース予定だ。

『Black Bird』by Onion Games

今回のBitSummitで最優秀賞「バーミリオンゲート賞」を獲得したOnion Gamesの最新作。最優秀賞だけではなく、「エクセレンスインサウンド賞」も獲得している。その独特な世界観はOnion Gamesらしさがたっぷりと詰まっているが、特に注目してほしいのは音楽だ。動画などでは伝わりにくいが、奇妙な男性のボイスにトム・ウェイツと東欧の民謡が合わさったようなアヴァンギャルドな音楽と共にゲームが進行する。いくつかの敵の編成や場面変化は音楽とシンクロするように作られている。

IGN JAPANの放送ではOnion Gamesの木村氏は本作が「ダーク・ファンタジーゾーン」というコードネームで始まっていることを漏らしてくれた。その名の通り、『ファンタジーゾーン』に影響を受けた左右に自由に動ける横スクロールSTGなのだが、あまりにも世界観が強すぎてオリジナルを忘れてしまうほどだ。

さて肝心のSTGとしての評価はどうか。筆者は最初期のビルドを触ったことがあるが、格段に爽快になったのは間違いない。左右から登場する雑魚キャラを撃破しながら、複数個ある砲台を破壊していくという基本メカニクスはとりあえず及第点となっている。さらに細かな建物の破壊やアニメーションは作り込みはさすがで、いろいろな場所を破壊したくなる。結果としてすべてを破壊していく形のゲームプレイが誘導され、ゲームのテンポを損なうのではないかという不安もあった。

またボムのシステムは興味深いが、まだまだ練り上げる必要がある。レベルアップすることで自機が変化していき、レベルに応じてボムの威力が増していく。しかしながらボムはアイテムとして入手しない限り、支給されず、ライフを得るかどうかとトレードオフであるため、スコア狙いといった特別な理由がないと使用するメリットが薄く感じられた。安全にプレイするならば、ちまちま雑魚を倒しながらライフをゲットしていくことになるだろう。

以上のような懸案事項は存在するが、STGファンも納得させる作り込みを期待している。木村氏も放送でその意気込みを見せてくれたが、彼の周囲には東方ProjectのZUN氏や同人STGサークルのエンドレスシラフといったSTGのベテラン開発者がいるため、STGファンをうならせる素晴らしい作品が生まれる可能性は十分にあり得るだろう。本作はSwitchとSteamで今夏発売予定。

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