MMOシューティングゲーム『Lazarus』開発中止、9月にサーバー停止へ。「SpatialOS」を採用する大規模作品のキャンセル相次ぐ


イギリスのデベロッパーSpilt Milk Studiosは8月12日、MMOシューティングゲーム『Lazarus』の開発を中止すると発表した。本作は2016年からオープンアルファテストをおこない、プレイヤーからのフィードバックを得ながら開発を続けてきたが、今回の決定により今後のアップデートも中止。今年9月12日をもってサーバーを停止させるとのこと。

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『Lazarus』は、16万平方kmもの広大な宇宙を舞台にするトップダウンシューターであり、数千人規模のプレイヤーが一緒に楽しめるMMOゲーム。資源を求めて宇宙を探索し、新たな技術を開発したり宇宙船のカスタマイズなどをおこないながら、3つあるエイリアン勢力やほかのプレイヤーとの交流やドッグファイトを楽しめる作品である。

本作の開発終了を決めた理由についてSpilt Milk Studiosは、まずゲームを運営しながらコンテンツを開発し続けていくには、サーバーのコストや使用ソフトウェアのライセンス料、さらなるプレイヤーを呼び込むためのマーケティングなどにさまざまなコストがかかるとコメント。そしてこのアルファテスト期間中の状況から、想定していた収益化モデルのまま正式ローンチさせた場合、同スタジオの財政は危険な状況に陥ってしまうと判断し、そのようなリスクを取ることはできなかったと述べる。

なお、この開発中止が同スタジオ自体の運営に与える影響はないとのこと。これからは現在抱えているというほかのプロジェクトに注力することになるのだろう。『Lazarus』は、3年ものあいだ開発を続けてきた意欲作ではあったが、早めに決断を下したことで同スタジオにとって、またプレイヤーにとっても影響は最小限にとどめたと言えそうだ。

今回の発表の中では、『Lazarus』のアルファテスト期間中には開発パートナーであるImprobable社へのフィードバックをおこない、同社の技術改善に寄与してきたことにも触れられている。本作では、Improbableが提供するオンラインマルチプレイゲームの開発と運用をおこなうための分散オペレーティングシステム「SpatialOS」を採用していた。SpatialOSは、多数のプレイヤーを許容する大規模で複雑なゲーム世界の構築を得意としているため、本作との相性が良いと判断され採用されたのだろう。

実は、SpatialOSを採用するタイトルの開発中止は今年だけで3件目となる。今年5月、Bossa Studiosが手がけるMMOサンドボックスゲーム『Worlds Adrift』の開発中止が発表。理由としては、プロジェクトを継続するために必要なだけのプレイヤー数が集まらなかったとしていた(関連記事)。『Lazarus』のアルファテスト中のプレイヤー数については不明だが、今回の発表がおこなわれたSteamでのユーザーの反応は極めて薄い。同作のようにプレイヤーが思うように集まらなかったため、収益化に不安を覚えたのかもしれない。

また今年7月には、英国Automaton GamesによるMMOシューター『Mavericks: Proving Grounds』も開発中止となった。こちらも最大1000人対応という大規模な作品を計画していたが、同スタジオが破産したためプロジェクトは終わりを迎えた。破産に至った理由については不明である(関連記事)。

SpatialOSを採用するタイトルとしてはほかに、『Halo』シリーズなどに携わったベテランスタッフを擁するMidwinter Entertainmentが手がけるサバイバルシューター『Scavengers』が開発中(関連記事)。また、日本のアニメやJRPGから影響を受けたというVR対応MMO『Zenith』が、ちょうど本日からKickstarterキャンペーンをおこなっており、開始からわずか4時間で初期目標金額2万5000ドルを突破している。

SpatialOSは、『Lazarus』などの開発中止の直接的な原因ではないだろうが、安定して運営されている採用タイトルがまだない新しいソリューションであるため、短期間にこうも相次ぐと目立って見えてしまう。SpatialOSの特徴から、小規模なインディースタジオが大規模な作品に利用する例が多く、開発や運営には難しい面もあるのかもしれない。上に挙げた『Scavengers』などの開発中タイトルには是非成功してほしいと願うのは、メーカーやファンだけでなく、SpatialOSを提供するImprobableも同じだろう。