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映画を観るかのように始まって終わる弾幕シューティング『アカとブルー』レビュー

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「俺たちは、プレイヤーを、タノシマス!」
そんな標語を掲げ、弾幕シューティング老舗から独立したプロデューサーKMRさんが立ち上げたタノシマス社の処女作が『アカとブルー』である。
本作はシンプルな作りながら、入門者をジャンクな物量の楽しさと物語でクリアまで導き、リスクとリターンが複雑に絡まり合った奥深いボムシステムで稼ぎに誘導する良作である。

『アカとブルー』は、指に合わせて自機が移動する相対タッチ方式・オートショットの縦スクロールシューティングである。ライフ制を採用しており、1ステージで3回ダメージを受けるとやり直しとなる。
操作は移動とボムのみと非常にシンプルだが、ボムシステムは非常に深く、ゲームを面白いものとしている。
初心者にはほぼ無敵の緊急回避システムとして、上級者にはリスクをはらむ稼ぎシステムとして見事に機能し、1つのシステムで2つの役割を見事に実現しているのだ。
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ボムはボムゲージが1以上のときに画面を2本指でタッチすると発生する。
ボムゲージのチャージに応じて効果が変化し、チャージ1の段階では自機周囲の弾を消すだけだが……。
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チャージが2以上になると球形の球が発射され、敵の弾を消し得点アイテムの“メダル”に変えるスコアアタックのお供になる。
得点アイテムの出現っぷりも景気が良く、最大のチャージ5ボムを撃ったときの気持ちよさは格別。インスタントでジャンクな楽しさがある。
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で、肝心なのはボムゲージが増える条件。
ボムゲージは、敵を破壊するかショットを撃ち込みまくると増えるほか、ボムが弾を消したときにも増える。
後者の“弾を消したとき”という条件がミソで、このゲームを幅広いプレイヤーに向けたエンターテイメントに消化しているポイントだ。

この仕組みにより、弾に当たった瞬間にボムが自動発動する“オートボム”設定をONにしたとき、プレイヤーはボス戦でほぼ無敵になる。
オートボムは自動で1レベルのボムを使用し、自機の周囲の弾だけを消す。このとき、自機の周囲の弾を消すだけで再び1レベルのボムゲージが貯まる。
ほんのわずかなオーバーヒート時間だけボスの攻撃を避ければ、弾幕シューティングの上級者でなくとも本作をクリアできてしまう。
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▲怒濤の弾幕!でも結構余裕で生き延びられる。

もちろん、オートボムを使ってもクリアにはそれなりの困難が伴う。だが、本作にはゲームを先に進めるモチベーションも用意されている。
それは物語だ。本作では、秘められた過去を持つアカ・シンクと、真面目な軍人少女ブルー・サーニの掛け合いによって出撃の経緯から結末までがゲーム中に語られる。
ステージの背景で状況を語りつつ、ボイスがそれを補強していく。ステージ1からエンディングまでの道のりはそれ自体が1つの旅であり、1本の映画のような体験である。
ストイックに攻略するだけでなく、これを最後まで観るのが最初のモチベーションとなる。
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▲声優陣の熱演でアカは豪快でかっこいいオヤジに、ブルーはツンデレ優等生に仕上がっている。テンプレだが、良い。

そして、1度クリアした頃にはボムが使いこなせるようになり、ゲームがより豪快に、爽快になる。
敵弾が多く存在しているときにボムを使うと、弾消しによって即座に最大までボムゲージが貯まり、レベルの高いボムを連続して使えることに気づくのだ。
慣れればプレイ中ボムを使いまくり、得点アイテムとりまくりの快プレイが実現する。敵ボスの弾幕なんて、ボムゲージを回復させる餌でしかない。
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ただし、ボムを撃った直後はオーバーヒートして短時間ボムが使えなくなるため、その期間は避けを要求される。ボムゲージが貯まっているほどオーバーヒート時間が長くなるため、いい気になって使っているとすぐライフが尽きる。リスクを取るほどリターンがある。そんな面白さを提供している。
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こんなにいい感じの『アカとブルー』であるが、プレイに入るためのハードルは結構高い。
たとえば、本作の難易度を下げる“オートボム”は初期はONになっていない。しかも、序盤の難易度が高めで弾が少ないのでオートボムの半無敵効果を序盤は感じられず、シューティング入門作としてはかなり厳しい。
もう1つは少しずつ自機が指の位置まで戻ってくる「自動座標補正」。これをオフにしないと弾幕の中で微妙に自機が動いてミスしてしまう。
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▲ついでに、SEを大きめにすると爽快感が上がるのでおすすめ。

また、機体選択アカを選べばいいが、ブルーを選択してしまうとボムの照準に癖があるので制御が難しい。
50%のプレイヤーがブルーを選ぶと仮定しても、50%は初心者向きではない機体を選ぶわけだ。
本作は、初期設定のミスで大きなハンデを負ってしまっている。
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その他、得点アイテムが出現してから時間をおかずに取得するほどに高得点になるが、得点アイテムで敵が隠れてぶつかってしまうことがあるとか、ボムチャージの貯まり具合が確認しづらい(音声で予告されるが聞き分けづらい)など、いくつかの修正しやすい欠点は早めに直して欲しいとは思う。

とは言え、『アカとブルー』は独立後第1作と思えないほど面白くできている。
豪快に指を動かして得点アイテムを取る爽快感はスマホのタッチ操作ならではだし、物語との融合も結構上手くいっている。最近のスマホシューティングに足りないピースを上手く埋めている印象だ。
シューティング好きなら手にとって損はない。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
難易度に合わせて意味の変わるボム
アカとブルーの掛け合い、ステージ変化で進む熱い物語
爽快感たっぷりの弾幕シューティング

気になるポイント
初期設定が良くない
アカとブルーの使い分けが初心者向けと上級者向けで別れすぎている
ボムレベルが確認しづらい
通しプレイのスコアが欲しい

アプリDL:
アカとブルー (itunes 960円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:タノシマス(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: