【特別企画】

「ゲームギアミクロ ブラック」全収録タイトルレビュー

セガを代表するシリーズ作品3作と良作シミュレーションRPGが遊べる、バラエティに富んだ逸品

【ゲームギアミクロ ブラック/ブルー/イエロー/レッド(全4色)】

10月6日 発売予定

価格:各4,980円(税別)

 いよいよ発売を迎える、懐かしの携帯型ゲーム機を復刻したゲームギアミクロ。本稿では、全4色(※12月発売予定のホワイトも含むと5色)ある本機のうち、ブラックに収録された全4タイトルの見どころをまとめてご紹介しよう。

 ブラックの収録タイトルは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、「ぷよぷよ通」、「アウトラン」のセガを代表する有名シリーズと、今回が初の移植となる「ロイアル・ストーン ~開かれし時の扉~」という構成。アクション、パズル、ドライブ、そしてシミュレーションRPGと幅広いジャンルが楽しめるのが特徴だ。

【ゲームギアミクロ ブラックの収録タイトル】
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」
「ぷよぷよ通」
「アウトラン」
「ロイアル・ストーン ~開かれし時の扉~」

シビアな操作テクニックが要求されるので実に手強い「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」

 1991年にメガドライブ用ソフトして発売され、世界中で大人気を博したアクションゲームのゲームギア版。方向ボタンの左右で主人公ソニックの移動、ボタンでジャンプという基本操作は同じだが、ステージ構成はメガドライブ版とはまったく異なるので、メガドライブ版を遊び尽くしたプレーヤーであっても、イチからじっくりと攻略を楽しめる。

 元祖「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」と言えば、ソニックが目にも止まらぬほどのスピードでステージ内を走り回れるのが最大の特徴だ。だが、ゲームギア版はメガドライブよりもハードの性能が劣る(※筆者注:前者のCPUは16ビットで後者は8ビット)こともあり、スピード感はメガドライブ版には及ばない。ならば、ゲームギア版がつまらないのかと言えば、けっしてそんなことはない。ジャンプの軌道を微調整して狭い足場に着地したり、動くリフトを連続ジャンプで飛び移るなど、スリリングなジャンプ操作が随所で楽しめるところに本作ならではの魅力があるからだ。

 ゲーム全般の難易度は、メガドライブ版よりも高いというのが筆者の率直な印象だ。敵キャラクターの出現頻度こそ少ないが、前述したようにシビアなジャンプ操作のテクニックが要求され、なおかつ画面下部に落下すると即ミスとなるポイントが非常に多いことが、その理由のひとつである。

 各ステージの随所に配置されたリングを取っておくと、敵や障害物に1回触れただけではミスにはならないのもメガドライブ版と同様だ。ただし、ゲームギア版ではメガドライブ版と違って、敵や障害物に触れた際に散乱したリングを再回収できないため、これも難易度を高める一因となっている。しかも、Dr.エッグマンとの一騎打ちとなる各ゾーンのアクト3(3面)にはリングが一切登場しないため、必然的にノーミスで倒すパターンの構築が要求されるのでかなりハードだ。全6ゾーン(18ステージ)をクリアするのは、アクションゲームを得意とするプレーヤーでも一筋縄ではいかないだろう。よってリングだけでなく、バリアや1UPなどのアイテム類も見付けたら可能な限り取っておくといい。

 リングを50個以上持ったままステージをクリアすると、ボーナスステージに進むことができる。ボーナスステージには大量のリングと、ここでしか入手できないコンティニューアイテムが出現するので、セーブ機能を使わずに自力でクリアしたいという人は、特に後者のアイテムは必ず回収しておきたい。また、シリーズ作品ではおなじみの秘密のアイテム「カオスエメラルド」は、ゲームギア版では各ゾーンのどこかに1個ずつ、合計6個隠されている。腕に自信があれば、ぜひすべての「カオスエメラルド」を回収し、真のエンディング到達を目指していただきたい。けっして簡単ではないが、チャレンジする価値は大いにある。

 なお、ゲームギアミクロ版においては、方向ボタンが元々小さいこともあり、左右の移動時に斜め入力になりやすく、普通に走って移動したい場面でもソニックがスピン(回転)状態になりやすい感がある。どうしてもスピンになりやすくて困る場合は、移動時に右上または左上に入力するといいだろう。

【「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」】
落ちると即ミスになる場所が多いので、正確なジャンプ操作が要求される
敵などに触れた際に手放したリングは、再回収できないのでなかなか厳しい
Dr.エッグマン戦はリングが出現しないため一度のミスも許されない
ボーナスステージでは、コンティニューアイテムをぜひとも入手しておきたい
腕に自信がある人は、カオスエメラルド探しにもぜひチャレンジしてほしい

画面は小さくても連鎖の快感は大きい「ぷよぷよ通」。ビッグウィンドーミクロがあると便利

 落ち物パズルゲーム「ぷよぷよ」のシリーズ第2弾として、1994年にアーケード、およびメガドライブで発売された「ぷよぷよ通」の移植版にあたる。本機は1人プレイ専用であるため、元のゲームギア版に存在した「ふたりでぷよぷよ」と「みんなでぷよぷよ」の2つのモードは省かれ、遊べるのは「ひとりでぷよぷよ」のみとなっている。

 まず気になったのは、得点や文字はハッキリと読めるものの、「ぷよ」のサイズがかなり小さいため、どの色の「ぷよ」なのかが、慣れるまで見分けがつきにくかったこと。特に、青と紫の「ぷよ」は間違いやすい感があるので、形状で種類を見分けるといいだろう。ゲームギアミクロを4色とも購入し、特典アイテムのビッグウィンドーミクロを入手した人は、これを使用して画面表示を拡大したうえでプレイすることをおすすめしたい。

 ROMの容量が少なかったためなのか、本作には「ぷよぷよ」シリーズではおなじみの、対戦時にヒロインのアルルと相手キャラクターによる漫才シーン、および連鎖を組んだときに流れる音声は残念ながらカットされている。だが、連鎖を組んで相手に「おじゃまぷよ」を大量に落下させたときの爽快感は一切損なわれておらず、後半のステージに登場する相手は高速で「ぷよ」を落下させてどんどん「おじゃまぷよ」を送り込んでくるので、元祖アーケード版などと同様に白熱した対戦が楽しめるのがうれしい。

 1、2ボタンで「ぷよ」の左右の回転、および方向ボタンの下を押すと「ぷよ」を素早く落下させることができる基本操作はアーケード版と同じだが、素早く落下させたいときはうっかり斜め方向に入力して着地点が左右にズレないよう注意したい。

【「ぷよぷよ通」】
本機では、「ひとりでぷよぷよ」モードのみ遊ぶことができる
大連鎖を完成させたときの快感は健在。相手が連鎖を組むのを見計らって「おじゃまぷよ」を相殺するのも楽しい

抜群のスピード感を実現した、ドライブゲームの金字塔「アウトラン」

 1986年に登場した、ハンドル操作に応じて筐体が左右に傾く、アーケード用体感ドライブゲームを移植した作品。ゲームギア版では、全4ステージを走破してゴールを目指す「1プレーヤーゲーム」と、CPUの車と同時にスタートしてどちらが先にゴールできるかを競う、「バーサスコンピューター」の2種類のゲームモードがある。

 本作の最大の魅力はズバリ、スピード感にある。最高速で走行中は、路面やセンターラインのグラフィックスが目まぐるしく動くのでとても気持ちいい。また登り坂があるコースでは、登坂中にいきなり眼前に敵車が出てることもあるので、思わずびっくりすることだろう。

 シフトはロー・ハイの2段があるが、本作ではゲーム開始時にAT(オートマティック)とマニュアルのいずれかを選べる、アーケード版には存在なかった機能を搭載している。慣れるまでの間は、ステアリングとブレーキの操作に専念できるのでATがおすすめだ。

 「1プレーヤーゲーム」モードは、アーケード版と同様に各ステージの終盤に左右2つのルートに分岐するのが特徴で、次のステージの開始地点に到達する前に残り時間がゼロになるとゲームオーバーになる。コース外に飛び出し、看板などにぶつかりクラッシュすると大幅なタイムロスとなり、しかも途中で1回でもクラッシュすると全ステージクリアが難しくなってしまう、本家アーケード版と同様のスリルが楽しめる。

 「バーサスコンピューター」モードは、1コースだけを走ってCPUの車と勝敗を競うルールになっている。コースは「1プレーヤーゲーム」にも登場する、全10コースのなかから自由に選択できるので、「1プレーヤーゲーム」がなかなかクリアできない場合は、本モードで各コースの特徴を覚えるのに利用するといい。

 アーケード版と同じく、ゲーム開始時に「マジカルサウンドシャワー」、「パッシングブリーズ」、「スプラッシュウェーブ」の3種類の名曲が選べるのもファンにはうれしいところ。FM音源こそ使用していないもの、ゲームギア版も聞き応えは抜群。個人的には、後半のパートでぐっと盛り上がり、テンションを大いに高めてくれる「パッシングブリーズ」がイチ押しだ。

【「アウトラン」】
ゲーム開始時に、ATまたはマニュアルのいずれかを選択することができる
画面は小さいが、真っ赤なオープンカーを操って抜群のスピード感を体験できる面白さはアーケード版と変わらない
「1プレイヤーゲーム」モードは、アーケード版と同様にステージ終盤でコースが左右に分岐する
CPUの車と1コース限定で勝負する「バーサスコンピューター」モード。コースの暗記に利用するといい

重厚なストーリーと頭脳戦が楽しめる「ロイアル・ストーン」

 1995年に発売された、騎士イファをヒロインとするシミュレーションRPG。フィールドマップ上で「戦う」、「防御」、「魔法」などのコマンドを入力して敵軍と戦うバトルと、町や村を探索するパートを交互にプレイするのが特徴だ。

 当初は画面サイズが小さいため、はたして文字がはっきり読めるのかが気になったが、筆者がプレイした限りでは、オープニングのシーンで青地に白の文字がにじんで読みにくかった以外はまったく問題がなかった。ただし、町や村に登場する住人、あるいはイファと仲間たちの表情まではハッキリ見ることができなかった。また、バトルパートで敵ユニットに戦いを挑む際は、戦う相手を剣型のカーソルを動かして選択することになるが、このカーソルが非常に見えにくい。よって、各キャラクターの表情をじっくりと見たい場合や、バトルの基本操作に慣れるまでの間はビッグウィンドーミクロを使うといい。

 本作ならではの大きな魅力は、独特のストーリーにある。オープニングでイファが牢屋から連れ出され、仲間を裏切って戦場から脱出し、育ての親を殺めたかどで町の住民から罵られ、王様から流罪にされるというショッキングなシーンからスタートする。ゲームを進めるごとに、イファがなぜ断罪される行為に及んでしまったのか、その真相が徐々に明らかになるのも大きな見どころだ。また、町や村で住人と会話などをすると、新たな仲間がどんどん増えていくのも楽しい。

 バトルパートもとても面白い。敵軍に勝つための最大のポイントは、各ユニットに設定された火、水、風、地の属性の相性を見極めたうえでバトルを挑むこと。例えば、水属性のユニットは火に強いため、自軍ユニットが水属性で敵が火だった場合は、攻撃すると大きなダメージを与えられる。逆に、敵が水で自軍ユニットが火だった場合は、攻撃を受けると大きなダメージを負ってしまうといった具合だ。

 とりわけ本作のバトルは、属性の相性が非常に大きく反映されることを必ず覚えておきたい。平地や森など、各ユニットの居場所によって優劣が発生する地形効果ももちろん存在するが、本作では属性の相性がそれ以上に大きく影響される印象だ。

 バトル開始時は、敵ユニットの正体が一切わからないのも本作ならではの特徴だ。敵の正体を知るためには、イファの魔法「スキャン」を使うか、隣接する位置に移動したうえでバトルに挑むことが必要だ。正体不明の敵にバトルを挑んだ際に、もし敵が相性の悪い属性だった場合は非常に危険なので、敵ユニットと隣接してバトルが可能となるまでの間に、「スキャン」でなるべく多くの敵の正体を明らかにしておくことをおすすめする。

 筆者は本作を今回初めてプレイしたが、ストーリーを読み進めるのも、バトル中に戦略を考えるのも実に面白く、紛うことなき良作と断言したい。

【「ロイアル・ストーン」】
ヒロインのイファが流罪になるところから物語が始まる
バトルパートは、自軍とCPU軍とが交互にユニットを動かすターン制となっている
バトルでは属性が勝敗を大きく分けるポイントに。相性の悪い属性が相手だと大ダメージを受けることも……
バトルパートで勝利を収めると、町や村の探索パートに移行。住民などと会話をすると仲間が増えることもある

 繰り返しになるが、異なる4つのジャンルのゲームを1台で遊べるのがブラックの特徴だ。なので、例えば「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を集中してやり込み、「ちょっと疲れたな」と思ったら「ぷよぷよ通」に切り替え、大連鎖を組んでスカッと気分転換を図ったり、あるいは思考力が要求される「ロイアル・ストーン」に没頭して脳内に疲労感を覚えたら、「アウトラン」のノリノリでBGMを聴いてリフレッシュするといった要領で、その時々の気分に適した遊び方ができるところに、本機ならではの良さがあると言えるだろう。