『Star Wars:スコードロン』マルチプレイ - レビュー

長期的で堅実なお付き合いを続けたいゲームというよりは、現時点ではうっすらとした関係性で終わってしまう作品

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『Star Wars:スコードロン』シングルプレイのレビューはこちら


『Star Wars:スコードロン』のストーリーモードで私が惹きつけられたのは、細部にまでこだわった船の内装と魅力的なキャラクターであった。しかし、カジュアルに遊べるPvPのマルチプレイモードは、地形という意外な点においてエキサイティングな仕上がりとなっている。取っつきやすくも絶妙なフライトコントロールとシステム管理は健在ながら、いざ対人戦を行ってみると、小惑星の周りや狭い通路でどれほどトリッキーな操縦が可能であるか身をもって実感することができる。やや残念なのは、モードやマップ、プログレッションシステムの面では、これを上回る特長がないことであろう。

本作には2つのモードがある。「ドッグファイト」は30キルを目標に競い合う、5対5の対戦モード。そして「フリートバトル」は各分隊が大型艦船を一機ずつ持ち、相手チームの艦船を解体して破壊していく削り合いのモードだ。両モードに共通する6つのマップは、目標や全体的な戦略にこそ大きな差はないものの、豪華なビジュアル面と巧みな障害物レイアウトの点でそれぞれ趣を異にする。例外は「ヤヴィン」で、このマップでは最も美しい地平線を眺められるものの、その代償として隠れたりだまし討ちできるような遮蔽物が何もない。この完璧なまでに空っぽのステージは、戦闘が始まれば毎回、完全なる殺戮の舞台となる。

どちらのモードであっても、『スコードロン』の飛行メカニクスの面白さだけで十分に楽しむことができる。ストーリーモードのレビューでも述べたように、飛行そのものの操作は非常に取っつきやすく出来ているが、「ドッグファイト」では各プレイヤーのスキルがより重視され、ちょっとした判断の良し悪しがスコアボードに直結するようになる。シールドから武器にパワーを切り替えて余分なダメージを与え、武器からエンジンにパワーを切り替えて素早い離脱を図るなど、随所の判断が勝負の行方を左右する。絶妙なスロットルコントロールで敵を振り払い、遮蔽物の後ろに入ってエンジンを切って身をひそめ、くるりと反転して敵を急襲……などといった、まさにスター・ウォーズ映画のようなドラマチックな動きも再現可能だ。

広々とした空間で行われる「ドッグファイト」は通常、相手の周りをただただ旋回するような飛行ゲームによくある戦い方に陥りがちで、『スコードロン』でもそれは例外ではない。しかし本作ではステージのレイアウトを上手く利用することで、そんな停滞感を払拭する機会が数多く設けられている(空っぽの「ヤヴィン」を除いて、だが)。壁スレスレを飛行し、スペースステーションをくぐり抜け、オブジェクトの周りを旋回して敵のミサイルロックを振り払い、予想外の角度から相手めがけて飛び込んだりと、私は大いに楽しんだ。地表近くで停止しつつパワー配分を切り替え、その努力がキルによって報われる瞬間はまさに快感。スター・ウォーズ映画でパイロット達が見せる反応と同じく、私も笑ったり、興奮して叫んだりしてしまった。

「フリートバトル」にも同じような特長があるものの、目的が大きく奥行きがあるにもかかわらず、実際には「ドッグファイト」ほど楽しむことができなかった。貧弱なAI戦闘機が定期的に敵側に向かって行ったり、相手チームの主力艦を攻撃する前に中型艦2隻『League of Legends』における “タワー” のようなもの)を破壊しなければならなかったりと、通常のオブジェクトベースのシューティングに寄せつつも、明らかにMOBAにインスパイアされた要素も見て取れた。キルを重ねることで画面上部のバーのバランスが変化し、自軍が全力攻撃に出る前に、それを埋めていかなければならない。これは考えなく突撃することを防ぐ、面白い構造と言える。シールドやタレットなど、戦略的に集中して無効化させなければいけない特定のシステムも用意されており、単に勝つまでレーザーを撃ち込むだけでは主力艦が破壊できない、という仕組みが上手く実装されていると感じた。

そうは言っても、上部のバーが絶えず行ったり来たりし、実際の攻防戦よりも目標までの飛行時間の方が長くなる傾向があるため、「フリートモード」は時として少し冗長に感じられた。さらに、AIによって操作される大きなターゲット船は全体的に丸見え状態に近いため、地形を利用した激しい旋回で攻撃を仕掛ける……などといった手に汗握る攻防戦は、ほとんど見られない。友達同士で艦隊を組んでメタ戦略を探るという楽しみ方もあるだろうが、静的な目標達成に焦点を当てているために、『スコードロン』の特長であるダイナミックな攻防戦の興奮がいまいち感じられないモードとなってしまっている。

その代わり、本モードではより大局的な戦略に焦点が当てられている。「ドッグファイト」では、ファイター、ボマー、インターセプター、サポートの4つのクラスから1つを選び、終始固執するようなプレイをしていた私だが、「フリートバトル」では状況に応じて積極的にクラスを入れ替えることとなった。防御に徹する際には、ファイターやインターセプターで素早く近くの敵を一掃。主力艦に近づいたら、より耐久性の高いボマーに切り替えてタレットの攻撃に耐え、環境に大ダメージを仕掛ける。装備武器の選択肢もより細かく分かれているが、多くの補助オプションが主力艦の攻撃用に特別に設計されている。例えば、敵の砲火を防ぐための一時的な前方シールドや、機動力を犠牲に大ダメージを与える持続型レーザーのようなオプションは、一対一のドッグファイトではほとんど役に立たない。
面白いかと問われれば確かにそうではあるのだが、「フリートバトル」は個人的にはあまりワクワクさせられないモードであった。連携の取れたチームであれば、MOBAゲームをプレイするのと同じように、奥深い戦略やチーム構成を追求することができるだろう。また実際にこのモードがランク形式であるという事実も、それに拍車を掛けている。しかしながら、実際にランダムな対人戦を行ってみると、現実は理想よりもはるかに厄介であることに気づくことになる。空を飛ぶ行為そのものの面白さと、非の打ち所がないほど丁寧に描かれたスター・ウォーズの世界設定のおかげでまだ楽しめるものの、「ドッグファイト」のような奥深く繊細な戦いに比べて、直ちに満足感を得られるものではない。

さらに残念なことに、現状ランクモードはプレイヤーの「離脱問題」にもかなり悩まされているようだ。私の経験上、5対5の互角の状態が最後まで続いたのは、マッチングした試合の約半分ほどに留まっていた。誰かが早々に離脱した際、それにつられてチーム全員が退出すればペナルティなしで再マッチングができる。しかし自チームがゲームに深く入りこんでしまっている場合、私に残された唯一の選択肢は、自ら退場してペナルティを受けるか、どう見ても絶望的な試合をなんとか最後までプレイし続けることしかなかった。

EAはここ数年で教訓を得たようで、『スター・ウォーズ バトルフロントII』が発売時に直面したゲーム進行に関する大失敗を、『スコードロン』では回避することができている。しかしながら、それでも本作のゲームの進行はかなり薄っぺらいもので、そこに長い時間を投資する意味を見出すことはできなかった。本作にマイクロトランザクションが存在しないことを聞いて喜ぶ人は多いことだろう。本作のアンロックは試合をプレイすることで得られる2種類の通貨で行われ、1つは武器やエンジンの改造など船の装備品に使われ、もう1つは船のスキンから派手なパイロット服、かわいいダッシュボード用のおもちゃまで、さまざまな装飾アイテムを入手するために使われる。

機能面を強化する船のパーツはすべて同じ価格(1サプライポイント)で、ほぼすべての選択が、明確なパワーアップというより個人的な好みの問題となる。プレイヤーは、最高速度の一部を犠牲にして操縦性を向上させたり、シールドの容量とリチャージ率を天秤にかけたりすることになる。

もう一方の通貨で入手できる装飾アイテムは、どこか愛らしくクスリとしてしまうものばかり。機体のスキンやデカール、パイロットのヘルメットや服、コックピットのダッシュボードに飾れるおもちゃまで、カスタマイズのためのアイテムがたくさん用意されている。その中でもひときわクールなアイテムについては「グローリー」と呼ばれる通貨のコストが高く設定されており、入手するためについついプレイしたくなってしまう……と言いたいところだが、現実にはそれらのアイテムのほとんどがプレイヤーから見えない状態になってしまっているのだ。ダッシュボード用アイテムがかなり魅力的なのは確かだが、『スコードロン』のカメラ視点のせいで、それ以外のアイテムのほとんどが無意味に感じられてしまう。

なにせこのゲームはもっぱら一人称視点で進む上、機体の塗装が見えるほど敵艦に近づくことなどほとんどなく、自分のパイロットの姿が見えるのも勝利後の結果画面くらいしかないのだ。試合の合間にメニューやカットシーンでチラリと見えるだけのスキンに、こだわる理由を見つける方が難しいのではないだろうか?

開発元であるMotiveが、発売後のDLC追加は予定していないという考えを改めてくれればいいのだが、モードやアップグレードオプション、機体やマップなどの追加パッケージがあれば、本作をより充実させるのに大いに役立つだろう。仮にそれが20ドルで発売されたとしても、本体と合わせて60ドルであれば、極めて標準的な市場価格になるだけである。飛行メカニクスと戦闘のコアがとても魅力的なのに反して、今のところコンテンツ不足に感じられるのが本作の残念なところである。

総評

極めて詳細に作りこまれたTIEファイターやXウィングを操り、多くの可能性に満ちたマップを飛び回り、5対5のドッグファイトで他のプレイヤー達と戦うスリルを与えてくれる『スコードロン』は、間違いなく素晴らしい作品だ。飛行メカニクス、そしてパワーマネージメントでは瞬時の判断がカギとなり、カスタマイズオプションはパワーアップよりも個人の好みを重視する作りとなってはいるが、それでもまだ伸びしろがたくさんあるように感じられる。現時点では、6つのマップを共有する2つのモードしか用意されておらず、それらをまとめるシンプルなプログレッションシステムが提供されているものの、長期的で堅実なお付き合いを続けたいゲームというよりは、現時点ではうっすらとした関係性で終わってしまう作品に仕上がっている。

※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。

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『Star Wars:スコードロン』マルチプレイレビュー

7
Good
長期的で堅実なお付き合いを続けたいゲームというよりは、現時点ではうっすらとした関係性で終わってしまう作品。
『Star Wars:スコードロン』マルチプレイ
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