R-TYPE FINAL2 - レビュー

フォースと波動砲は永遠の輝き

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【前回のあらすじ】電界25次元の最深部でマザーバイドの撃退に成功するも、バイドの侵攻はつづき太陽系防衛ラインへ到達した。滅亡の危機に瀕した人類は総力をあげて「バイドをもってバイドを征する」研究に挑み、Rシリーズ究極互換機の完成にこぎつける。バイドコアへの強襲、因果ループの発見、26世紀に向けたメッセンジャー派遣をもって、バイド根絶に成功し作戦名“Last Dance”は完了した――

R-TYPE FINAL 2』のテーマは戦史の編纂である。戦中の混乱で失われた戦役の追体験、そして次元戦闘機Rシリーズの開発史をまとめ、人類と敵性生命体バイドの戦いを「未来」に継承するのが目的だ。これはシリーズ背景に対するもうひとつのバイド根絶作戦であり、ファンにとって感慨深いテーマといえよう。一定の功績をあげたプレイヤーには、作戦命名権(ゲームタイトル変更)という形で歴史に名を刻む機会が与えられる。是非励まれたし。

 
『R-TYPE FINAL』公式サイトの壁紙(現在サイト閉鎖)

同時にビデオゲーム史においても継承の意味がある。何しろ17年ぶりの新作なのだ。それは初代『R-TYPE』から最終作『R-TYPE FINAL』(以下、前作)までの16年間よりも長い。《グラディウス》《ダライアス》シリーズにならぶ横STGの代表作が、これほど長く休止していたにもかかわらず、その間にスピリチュアル・サクセサー(精神的後継作)が生まれなかったのは不思議な話だ。

この疑問は本作を手にしてスグに解けた。シリーズを象徴するゲームシステム「フォース&波動砲」は、永遠に輝きつづける存在だったのである。『R-TYPE FINAL 2』は時代を超えたエポックメイキンクを軸に、STGパートのステージを新規デザインし、前作の目玉要素「R's Museum」を改善した。

なつかしさをただよわせ、それでいて新しい、あの戦いがよみがえる。《R-TYPE》シリーズ最新作は4KHD解像度で新生した。ここに失われたシリーズ設定を収集する遊びが加わっていたなら、名実ともにSTG史の記念碑となれたであろう。

フォースと波動砲―― 最強の盾と矛

1987年から始まった《R-TYPE》シリーズは高難度・横スクロールSTG(以下、横STG)の代名詞だ。懲罰的な難しさに隠れた印象だが、実は自機がとんでもなく強い。代表的な武装は2つある。回数無制限で敵弾をふせぎ、接触ダメージで敵機を破壊する「フォース」。戦艦の主砲に匹敵する威力のチャージショット「波動砲」。どちらもSTGにおいて最強の一角を占める兵器だと、STGファンは周知していよう。

フォースはパワーアップアイテムを取得すると画面後方からやってくる。パワーアップアイテムは中頻度で出現するから、自機とフォースは1セットの存在だと思えばよい。フォースは自機前方・後方に合体でき盾のように扱える。そしてパワーアップアイテムでフォースは成長し、ショットボタンに呼応してレーザーを発射する。

フォースのレーザーは3種類だ。正面高火力の赤色、斜め方向に射出する広範囲の青色、上下攻撃や地形を這う黄色で、あらゆる戦況に対応する。レーザーから身を隠すよう地形や遮蔽物を使う敵にはフォース分離攻撃だ。自機から分離したフォースは広範囲にショットをばらまく。フォースの合体・分離を使い分け、全方位を攻撃・防御すべし。

フォースだけでも十分に強いが、チャージショットの波動砲も同じく強い。通常ショットより判定が大きく、耐久力1の敵を貫通し、レーザーを数発要する敵を一撃で破壊できる。チャージの溜まりがはやく、「硬いぞ?」と感じてからチャージしても間に合う。自機の正面火力が波動砲の存在感を際立たせている。

ここまで書けばプレイ中の立ち回りは察しがつく。フォースで画面全域を焼き払い、フォースに身を隠しながら波動砲を放つのだ。そんな強い自機と対するのだから、ステージデザインには趣向が凝らしてある。フォースの防御を前提とした大量の敵機・敵弾。むきだしの自機方向から襲いかかる上下や背後の敵。ドッキリ死狙いの敵出現位置や、ややこしい地形トラップに、正面攻撃が通じない敵の体当たり。それらワカラン殺しが次々とやってくる。

『R-TYPE FINAL 2』の美点は、死に覚え要素の厳選だ。ステージ攻略で覚えるポイントを、フォースと波動砲の使い方に集約した。ワカラン殺しを体験したなら、あとは最強の兵器で立ち向かえばよい。フォースを前後のどちらにつけるか、または切り離すか。波動砲チャージ中はいかにフォースで身を守るか。ワカラン殺し地点の前でフォースと波動砲を準備すれば、おちついて対処できるハズだ。

自機を倒そうと工夫を凝らすステージデザインこそが、フォースと波動砲に活躍の場を与えている。これが本作のひとつ目のテーマ、戦役の追体験だ。死に覚えのステージ攻略を存分に楽しめると保証しよう。そして初見ステージはワカラン殺しにおびえてドキドキすると約束しよう。ゲームの主軸たるSTGパートは前作から大きく改善した。正確には、前作でステージデザインを制約した「R's Museam」を改善し、攻略しやすい高難度ステージを取り戻した。

R's Museumのリニューアルオープン

R's Museum(R博物館)は本作のもうひとつのテーマ、次元戦闘機Rシリーズの開発史だ。要点をまとめれば、ステージクリアで入手する素材を使い「強い機体」を開発できる。特記すべきはその機体数で、99機とゲーム中に書いてある。さあ、ゲームをどんどんプレイしていろんな機体に乗ってみよう。単純な仕組みだが、プレイ戦略の短期目標、ステージ攻略のカリキュラムとして機能し、ゲームクリア後のエンドコンテンツもかねている。

即物的な話をしよう。ゲームクリアを目指すなら「RX-10 アルバトロス」の後継機「TX-T エクリプス」の開発を急ぐべし。テンタクルフォースはフォースから上下に広がるアームで敵弾をふせげる。フォース分離時は自動的に敵を追いかけ、フォースショットも集中タイプでDPSが高い。衝撃波動砲IIは3ループで大きく炸裂し、地形・遮蔽物ごしに敵を攻撃できる。ゲーム開始時の自機「R-9 アローヘッド」とくらべて段違いの性能だ。

先の例は過去作経験者向けゆえ、シリーズに不慣れなゲーマーには最強機体の一角「R-9Leo2 レオII」を勧める。サイビット改は地形を貫通して敵を追尾攻撃し、レーザーも攻撃範囲が広く、死角がまるで見当たらない。こいつを開発すればゲームクリアも時間の問題だ。素材集めでステージを回せば、フォースと波動砲の使いどころを覚えてSTGパートの攻略が進むだろう。こうして、機体開発がゲーム熟達に欠かせないリプレイを促した。

ゲームクリア後はR's Museumの機体開発がエンドコンテンツとなる。ステージごとに素材種類の偏りがあり、選んだステージだけをプレイするスコアアタックモードを試しやすい。当然、ステージに適した機体を使えば快適に稼げる。変化が欲しいなら別の機体を使えばよく、選ぶ機体は悩ましいほど多い。刺激が欲しいならゲーム難度をあげよう。最高難度ではシリーズの妙たるステージデザインに心ゆくまで悶絶できる。機体開発は戦いに備える遊び方を広げ、リプレイは高難度モードへの挑戦心を養っていく。

ここで前作との相違点をあげたい。前作の機体開発は「前バージョンの機体を一定時間使用する」だった。戦闘データで後継機を開発するのは理にかなっている。しかし扱いづらい機体でも遊べるようにステージデザインを制限してしまった。本作のルールなら素材を得るステージクリアだけを考えればよい。だからステージデザインとフォース&波動砲の対決、開発者とプレイヤーの攻略合戦が成立したというワケだ。

R's Museumのリニューアルはシリーズ本来のステージデザインを、そしてフォースと波動砲の輝きを取り戻した。さらに、プレイヤーをゲームクリアまでみちびく働きも加わった。死に覚えで攻略するスパルタンな本作は、上達の実感を得にくくモチベーションの維持が難しい。そこでゲーム進捗を約束しつつ、多様なプレイフィールを用意する、機体開発の数でモチベーションの枯渇をふせいだ。R's Museumは家庭用ゲーム機の特性を生かしたSTGジャンルの革新である。

マニアが喜ぶにはまだはやい

本作がタイトルに『R-TYPE FINAL 2』を選んだのもうなずける。ステージデザインとR's Museumの改善をもって、前作『R-TYPE FINAL』のリワークを成し遂げた。シリーズリブートの機会にふさわしい17年の休止期間を経た上で、前作のリワークにとどめたのだから、その意図を尊重すべきであろう。だから批評点はこのようになる。本当に、前作より良くなったのか? 格段に良くなったが、前作に劣る部分もある。

比較のため『R-TYPE FINAL』寸評を記す。メリハリのないステージデザイン。悲壮感を奏でるあまり変わり映えがなく環境音と化したBGM。系統最強機体の開発にひとつ前の機体を1時間もプレイさせるR's Museum。これら3つの欠点を除けば当時のジャンル最高水準だ。特にビジュアル品質、アートワーク(前衛的表現も含む)、画面スクロールの物語演出は目を見はるものがある。

本作のSTGパートは前章までに述べたとおりだ。特にゲーム難度設定を反映したステージデザインがすばらしい。本作で久々にジャンルへ復帰するゲーマーには最低難度を強く勧める。敵機・敵弾の殺意的配置が減り、ステージギミックを覚えやすい。そのうえ、ノーミスがつづけば緩やかに難しくなり、緊張感をそれなりに味わえる。STGパートという幹の部分には大満足だ。

枝葉の部分はムラがある。プラス要素は機体のディテールだ。出撃シーンの見栄えを飾りカッコイイ。R's Museumの視点変更や、自機ハンガーの写真撮影モードは、等身大視点でRシリーズを眺める夢をかなえてくれた。またステージBGMは印象に残る曲こそ少ないが、ビートを聴き取りやすく行進曲として士気を保てる。これも前作からの改善ゆえプラスに計上しよう。

しかし加減採点でマイナスの印象が勝っている。目に入ってしまうアラが多いのだ。特に次の3つが目立つ。まず、ステージ3の巨大戦艦はビジュアルが弱い。人類軍AIがデザインしたからのっぺりしていると意匠を汲んでも、外装破壊で内部構造が露出しない。伝統の巨大敵ステージならば破壊描写も伝統に則ってほしかった。次に、最終ステージを除き画面スクロールの物語演出が乏しい。カメラワーク演出が控えめになりSTGパートのテンポはよくなったが、物語演出を補う別の取り組みはない。前作で印象を残したステージ開始モノローグもなくなった。最後は、未完成のR's Museumである。作中に合計99機と表示したが、発売日時点の実装数は半分程度だ。特にシリーズ直系作『R-TYPE III』の自機が未実装なのは残念である。手放しで「前作を越えた」と褒めることはできない。

付け加えて、シリーズ過去作の設定を収集する遊びがなかった。「戦史の編纂」がテーマゆえ満たしてほしかった要素である。ゲームレビュアーの立場を離れ、ひとりのファンとして言おう。過去作の説明書や、BGMアレンジ集CD『R-TYPE SPECIAL』といった、今日では入手が難しい媒体に掲載したシリーズ設定も後世に残してほしかった。

ファングッズを越えて

『R-TYPE FINAL 2』はクラウドファンディングで投機したゲーマーに向けたファングッズだ。しかし額面どおりにファングッズとして扱えば、枝葉の出来映えに気を取られて幹の太さを見落としてしまう。特に、R's Museumの機体未実装に肩を落としたファンは多かろう。とはいえ、機体合計数を調整すればバレなかった(かもしれない)未実装を、「バージョンアップまでお待ちください」と明かしたのは希望がもてる。好意的にいえば『R-TYPE FINAL 2』はシーズン制を採用した。次シーズンで機体が増えると考えれば長く付き合えるだろう。

発売日記念トレイラー動画。1分18秒からオマージュステージの紹介。

Game*Spark誌のインタビューでは、発売後2年はサポートしたいと開発者が意気込みを述べた。となれば、サポート完了の最終シーズンまで黙って見守りたい――というのがファン心理である。しかしDLCで過去作オマージュのステージを追加するなど現代ゲームらしい取り組みもあり、本作がどんな方向に成長するか予想できない。よって本稿は発売日バージョンで暫定の批評をつける。

《R-TYPE》シリーズの最小構成要素とは何か? もちろんフォースと波動砲であり、それらに活躍の場を与えるステージデザインだ。ここにリニューアルしたR's Museumを加え、家庭用ゲーム機のSTGジャンルは新たな地平に到達した。これこそが本作の幹である。その上で、現代ゲーム水準のビジュアル品質を満たしたのは好感だ。波動砲チャージのライティング効果はカバーアートやムービーシーンのように美しい。暗い閉所空間を意図的に用い、ライティングのスクリーンとした絵づくりも見逃せない。

本作がシリーズリブートではなく前作のリワークを選んだ理由は明快だ。フォースと波動砲は古びないどころか「いまだ新しい」のである。これを現代ゲーム水準のビジュアルで新生し、闇を切り裂く光、絶望に立ち向かう希望は鮮やかによみがえった。シリーズ33年を経てもなお、フォースと波動砲は思い出よりまばゆく輝いている。

長所

  • 唯一無二のフォース&波動砲
  • ゲームシステムを生かすステージデザイン
  • R's Museumの機体開発
  • 現代ゲーム水準のビジュアル

短所

  • 画面スクロールのストーリー体験が乏しい
  • 3面の巨大戦艦はビジュアルが弱い
  • 戦史編纂というテーマに対し設定情報が少ない
  • R's Museumが完成していない

総評

『R-TYPE FINAL 2』はゲーマーの感想とプレイヤーの感触が大きく違うゲームだ。それは枝葉と幹の違いである。枝葉への思い入れが強いゲーマーは当然それを口にするので、前作同様に不満意見の数は多い。しかし絡み合った2本の幹が、なつかしくも新しいプレイフィールを約束する。フォース&波動砲を生かすステージデザイン。ゲームクリアまでプレイヤーを育てあげるR's Museum。ここに現代ゲーム水準のグラフィックを加え、オールドスクールな《R-TYPE》体験のモダン化に成功した。

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『R-TYPE FINAL 2』レビュー:フォースと波動砲は永遠の輝き

7
Good
『R-TYPE FINAL 2』はゲーマーの感想とプレイヤーの感触が大きく違うゲームだ。それは枝葉と幹の違いである。枝葉への思い入れが強いゲーマーは当然それを口にするので、前作同様に不満意見の数は多い。しかし絡み合った2本の幹が、なつかしくも新しいプレイフィールを約束する。フォース&波動砲を生かすステージデザイン。ゲームクリアまでプレイヤーを育てあげるR's Museum。ここに現代ゲーム水準のグラフィックを加え、オールドスクールな《R-TYPE》体験のモダン化に成功した。
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