新型コロナウイルスの影響を受けて開催を延期していたBitSummit THE 8th BITが、2021年9月2日、3日に開催されることが決定した。イベントは、ゲーム関係者やメディアなどを招きつつも、無観客での実施となるという。その真意を日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)の3人に聞いた。

BitSummit THE 8th BITの無観客開催決定に向けての葛藤と紆余曲折。決意と覚悟をJIGAのメンバーに聞く

富永彰一氏(写真中央)

JIGA理事長
キュー・ゲームス クリエイティブディレクター
(文中は富永)

小清水史氏(写真左)

JIGA副理事長
ピグミースタジオ 代表取締役
(文中は小清水)

村上雅彦氏(写真右)

JIGA理事
スケルトンクルースタジオ 代表取締役
(文中は村上)

BitSummit公式サイト

映像配信だけにはしたくないとの思いから、BitSummit GaidenではDiscordを導入

――2020年は、オフラインでの開催は中止となり、オンラインでBitSummit Gaidenを開催することになったわけですが、感触的にはいかがでしたか?

小清水海外の方からは2019年の年末の段階で、「無理だから、早目に中止の発表をしたほうがいい」と言われていたのですが、私たちとしては一縷の望みをかけて、日本ではもしかしたら開催できるのではないか……ということで、ギリギリまで判断を待っていたんです。それが最終的に“できない”ということになり、中止を決断したときは本当に残念な気持ちでした。

 スポンサーさん方には、できなくなったことをお詫びにうかがったのですが、いろいろなスポンサーさんから「大丈夫?」「できることがあったら何でも協力します」と心配していただいたのは、心に沁みました。

――最初はオンラインでやるという考えもなかったのですね?

小清水そのときにはすでに、約80組のチームを選出していたので、その人たちの発表の場が失われるのは申し訳ないとは思っていたのですが、実際にオンラインでどういう風にしてやるのかが、明確にイメージできなかったんです。ただ動画の配信だけをするのもどうかなという思いはありました。

富永BitSummitはデベロッパーさんが主役で、“彼らをどうやってアピールするのか?”、“彼ら自身でどうアピールできるのか?”という場を提供したいという思いが根底にありました。リアル会場ではないとすると、それに変わるような形として、どうしたらいいんだろうという思いはありました。

小清水そんなときに教えていただいたのが、Discordでした。僕ら自身は、オンラインでDiscordを使ったコミュニティーに対する知識はなかったのですが、詳しい方に教えていただいてやるんだったらもしかして何とかなるかも……ということで、正直やってみないとわからないながらも、チャレンジしてみることにしました。

 Utomikさんが、ゲームを遊べるように手伝ってくれると提案してくれたのも、大きな後押しになりましたね。

富永ただ、Discordに関しては、1チャンネル1ブースに見立ててやってみたのですが、たいへんでした。すごくカオスな状態になってしまって。ある意味でリアル会場にも近い雰囲気だったかもしれないですが(笑)。

村上自己アピールがあまり得意ではないインディーゲームデベロッパーのための場を作っているので、少し違和感はありました。そもそもBitSummitって、自己アピールがあまり得意ではないインディーゲームデベロッパーのためにも場を作っているつもりだったので。

――Utomikはどうだったのですか? BitSummit Gaidenは実際にゲームで遊べるというのが、ほかのオンラインイベントにはない特徴だったと思うのですが、手応えはいかがでしたか?

村上ゲームは触らないとわからないので、Utomikがあってよかったと思います。

富永Utomikがなかったらまったく変わっていたと思います。Utomikがあることで、BitSummit Gaidenのメッセージが伝わった。ゲームはプレイすることが大事ですからね。

村上Utomikはよかったのですが、そもそも僕らがゲームを選出するときは、Utomikは前提にしていなかったので、結果としてUtomikで活用できるゲームとできないゲームがあるのは申し訳なかったです。そもそもスマホのゲームは無理でしたし。

小清水Discordへの来場者が約3000人で、Utomikで実際に遊んでいただいた数も3000くらいでした。参加された方がおよそ1回は遊んでくださっている感じですね。

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ある程度の手応えを感じられたというUtomik。

――ちなみに、BitSummit Gaidenに参加された方からはどのようなご意見があったのですか?

村上ポジティブな意見だと、「開催してくれてありがとう」というのは多かったです。一方で、「使いかたがいまひとつわからなかった」「何をしていいかわからなかった」という意見もありました。

――ほかのオンラインイベントが映像を流すことに特化していた中で、BitSummit GaidenはDiscordとUtomikで踏み込んだぶん、出展者やユーザーにとって、難易度が上がったとは言えそうですね。

村上そうですね。

富永BitSummit Gardenに関しては、1回目のときとものすごく感覚が似ていて、“とにかくゲーム関係者を集めよう、そうしたら何かが生まれるかもしれない”という、漠然としたイメージだけで取り組んだ感じです。まあ、課題はたくさんありましたが、やってよかったなとは思います。

小清水2ヵ月くらいしか準備期間がなかったのですが、短期間でよくみんなで力を合わせて企画実現までがんばったと思います。

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「リアルでの開催を!」との熱意で、無観客での開催を決断

――さて、それで2021年はどうするのか、というときに最終的にはどのような決断を下したのですか?

小清水BitSummit Gaidenではある程度の成果は上げられたものの、みやこめっせで開催したときと同等な熱量が提供できたかというと、さすがにそうはいかなかったと思います。そんな中、今年はどうするのかというときに、昨年と同じ形態で開催するのだったらやらないほうがいいのではないか……と、僕自身すごく悩みました。

 そんなときに大きな後押しになったのが、村上さんやジョンさん(ジョン・デイビス氏。JIGAのメンバーのひとり)の「どういう形であっても、BitSummitは1年に1回は必ず開かないといけない」という強い意思だったり、スポンサーさんやパブリッシャーさんの「インディーゲームシーンが盛り上がっているので、何とか対策をしてリアルイベントとして開催してほしい」という強いご要望でした。

村上実際のところ、BitSummit Gaidenが終わったあと、オンラインイベントでできることの限界を感じ、しばらくは悶々としていました。つぎに向かって何かをするというイメージは持てなかったです。その後、オンラインのイベントがたくさん出てきたので、いっしょに組んで日本のインディーゲームを発信することも考えました。しかしBitSummitがやってきたことを振り返ると、やはり人が集まれる場所を作りたいという思いが募りまして、リアルイベントを実現するための道を模索するしかない! という結論にいたりました。

 JIGAのメンバーは、皆さんそれぞれタイプが違って、それがある意味でいいチームなのですが、僕はまずやりたいことを明確にしてから、“どうしたらできるか”を詰めていくタイプなんですね。ですので、僕は「リアルでやりましょう!」と主張し続けていました。何が何でも実現できる方法を考えるという感じでした。

小清水そこで、ふと無観客だったらできるかなと思ったんです。お客さんを入れるイメージは、この状況ですからいまも持てないのですが、無観客という形であればできるのではないかと。

 もともとBitSummit自体が、“国内のおもしろいゲームを海外に発信する”といったところから始まっているイベントでもあるので、お客さんに届ける手段として、いろいろなメディアさんにご協力いただいて、記事として発信していくこともできるし、ステージの様子も動画で配信できる。そういった形で足りない部分をアイデアを駆使して展開していけば、会場でやれるのではないかと。それで、みやこめっせに場を作ろうということになりました。

富永僕自身ものすごく心配性なので、正直リアルでやるのはとても怖いです。しかもゲームイベントは見るだけではなくて、実際に触れるものでもあるので、このコロナ禍ではいちばん敷居が高い部類のイベントだと思っています。本当にできるのか、不安はずっと頭の中にあります。とはいえ、小清水さんや村上さんの熱意に触れていると、「しっかり対策をすればできるのではないか」と思い始めたんです。いまは「万全の体制でやろう」ということで意識を集中しています。

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小清水コロナ対策ということで参考にしたのが音楽業界でした。僕は個人的にエンタメ業界においては、音楽業界がつねに一歩先を行っていると思っているのですが、このコロナ禍で、音楽業界がどう対応するのかをずっと見ていたんです。音楽業界は対策を講じてイベントなどもたくさん実施していて、ノウハウをかなり蓄積していますし、その実績を活かせばできるのではないかと判断しました。しかも、BitSummitの運営をお願いしているFM802さんは音楽業界のイベントも多数担当されているのですが、ダスキンさんと提携して専門のチームを作っているんですね。

富永ダスキン自体にイベントを運営している部署があるらしく、衛生管理に長けていて、イベント運営のノウハウをお持ちなんです。それならば……ということで活路が開けてきました。

――最終的に無観客でいこうと判断されたのは、いつころなのですか?

村上かなり最近です(笑)。3月頭くらいです。ダスキンさんが知見をお持ちだということが、大きな後押しになりました。実際にできるかどうかというのは、精神的な安心感が重要だと思うんです。こういう言いかたをするのもなんなのですが、いまやることを決めておかないと、できるときにできなくなってしまうじゃないですか。ですので、準備だけはしておこうと。状況がどうなるかはまったくわからないですが、急に“やりましょう”となってもできませんので。

富永もし、そのときに状況が思わしくなかったら、中止にするという覚悟を持ちながら準備しています。

村上最大限の対策と安心を担保しつつできるように一生懸命進めています。BitSummitは来場されたお客様にゲームを触ってもらうのが理想ですが、根本のところでは、開発者どうしの繋がりも大事な要素ですので、せめてそこだけは準備したいと思っていました。開発者の人がスポンサーやパブリッシャーと出会う場であったり、メディアの人にピックアップされる場をせめて作りたいというのが、今回の無観客開催の思いとしてあります。

 僕自身は1回目のときは運営としては入っていないのですが、当時参加していた立場からすると、あのときもBtoBの意味合いが強くて、“業界でいっしょに盛り上げていこう”という雰囲気でした。それと似たような感じて、最低限のところで応援できる場を提供したいというところです。実現できるように、できる限りがんばっていきたいです。

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――規模的には、従来と同じくらいの感じで開催するのですか?

小清水はい。場所はみやこめっせの1階 第1展示場です。お客さんは入れませんが、いつものように全面での開催を予定しています。密にしないためにも、ゆったりスペースを使いたいと思っています。

村上例年は週末に開催しているのですが、今年は無観客なので、9月2日(木)、3日(金)と平日になります。9月にしたのも、暖かくておだやかな気候になるのかなというところで判断しています。

小清水で、今年のテーマですが……。

富永“フレキシビリティ”です。日本語で言うと“柔軟性”、“適応性”といった意味ですね。このテーマ自体は、昨年できなかった8th BIT用に作っていたもので、お披露目できずに持ち越しになったものです。あのころは、ストリーミングゲームやサブスクリプションが出てきたときで、ゲーム業界自体が変わってくるだろうと予想していて、そういった環境で僕たちクリエイターがどう関わっていくかをメッセージとして伝えたかったのですが、コロナでそれどころではなくなってしまいました。

 ゲーム業界のみならず、全世界的な問題になっていて、そういった環境下で、僕たちゲーム業界に関わる者たちが、どのように社会に貢献していけるのかという、さらに大きな柔軟性や適応性が必要になってきた。そういった意味では、テーマは同じですが、バックグランドがかなり変わってきたとは言えます。自分たちの置かれている立場でどう貢献できるのか、あるいは自分自身はどうアプローチしていくのか考えましょうということで、“フレキシビリティ”です。

小清水プラットフォームやゲームに求められていくものも劇的に変わっているので、それにどう適応していくのかが、メインビジュアルに込められています。

BitSummit THE 8th BITの無観客開催決定に向けての葛藤と紆余曲折。決意と覚悟をJIGAのメンバーに聞く

村上イベントとしても、僕たちのいままでのやりかたではできなくなっているので、どうやって柔軟に適応していくかと、僕たちにも“フレキシビリティ”は求められているなと感じます。

富永個人的なエピソードですが、僕は大学生のときに神戸の大学に通っていました。大学では、映像やゲームのインタラクティブの初歩的なことを勉強して、作品を作っていたのですが、そこで阪神淡路大震災に被災したんです。家の壁がボロボロになっていたり、道が陥没したり、高速道路が倒れてたり……というのを目の当たりにしました。そういう状況になって、うつ状態になってしまって、1、2ヵ月間ものすごい虚無感に苛まれたんです。「こんな状況で、アートに取り組んでいいていいのか……」とものすごく悩んで、一時期は大学も辞めようと思ったくらいでした。

 それでもなんとか卒業して、就職もして、いまに至っているのですが、この1年間リモートワークをやってきて、そのときに近い虚無感を感じているんですね。「はたして自分が作っている作品は世の中に貢献しているのか?」とか、「自分のやっていることに意味があるのか?」と考えると、あのときと同じ気持ちになるんですね。あのときも「自分にはこれしかない!」という気持ちでやってきたのですが、いまもそれを感じています。

 うまく言えませんが、僕と同じような虚無感を持っているクリエイターがいるとして、BitSummitを開催することによって、それを後押ししたいというか、応援したいと思っています。

村上新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界中が緊急事態になって、エンターテインメントをやっている場合ではないという議論もあるかと思うのですが、人に会いづらい状況の中で、エンターテインメントまでなくなってしまったら、もっと辛いのではないかと思います。

小清水東日本大震災のときに、関西は震災の影響はあまりなかったのですが、いろいろな物流が止まったりコンビニの電気も暗くなったりと全体的に自粛のムードがあったんですね。そのころ僕はすでに起業していて、そんな状況下で社員に対してどのようなメッセージを出すべきか悩んだんですね。「このような状況でゲームを作っていていいのか」という雰囲気があったんです。

 そんなときに僕の胸に響いたのが、ジブリの宮崎監督の行動でした。もう10年も前の話なので少し違っているかもしれませんが、宮崎さんはスタッフに対して、「休まずにアニメを作るから、みんな出てこい」と言ったらしいんですね。ジブリに来る途中にパン屋さんがあるらしく、そこは震災のときでも朝早くからパンを焼いているそうなんです。毎日仕事をしている人がいて世の中は成り立っているのだから、被災した家族がいる人は会社に来れないかもしれないけど、来られるスタッフは仕事をすべきだという趣旨のことをおっしゃったそうなんです。

 それを聞いてすべての持ち場を皆が守ることで世の中は成り立っているのだから「僕らは楽しみに待ってくれている人たち達ために精一杯がんばろう」とスタッフに言いました。

 いまも新型コロナウイルス感染症の影響でたいへんですが、“クリエイターを応援する場所”、“発信できる場所” “チャンスの場”を、途絶えさせてはいけないと思っています。

BitSummit THE 8th BITの無観客開催決定に向けての葛藤と紆余曲折。決意と覚悟をJIGAのメンバーに聞く

開催実現に向けて、最大限の配慮をして取り組む

――無観客で開催するとのことですが、ゲームファン向けにはどのようなことを?

村上もちろん、いろいろと考えています。来られない人のために何をやるべきかは、いろいろな方向を探っている状態です。Utomikさんとはお話をしていて、BitSummit Gaidenのときと同様に、出展されたゲームをPCで遊んでいただくということは実現できそうです。

小清水さらに、インディーゲームのコミュニティーとして、いろいろな人と話をしたいというのがありますよね。出展者と話したいというのもあるかと思います。それは、現状オンラインでするしかないのですが、何らかの形でコミュニケーションできる機会は用意しようと思っています。現状発表できるレベルではないのですが、詳細が確定したらアナウンスさせていただきます。

――出展者は、例年通りの数になるのですか?

小清水そうですね。同程度の数で開催したいと思っています。それも、ダスキンさんと相談しながら、会場スペースに対してブース面積などを差し引いて、どれだけの人数を入れることができるのか、計算できるようになっているようです。実際に使う面積と人数で計算して出せるみたいなので、その計算の中でいくつ出展できるか決まるのですが、今の計算では例年同様の出展者数はお呼びできそうです。

――東京ゲームショウ2021は、インフルエンサーとしてゲーム実況者や招く予定のようですが、その点はいかがですか?

村上昨年の反省点として、より多くの人にイベントのことを知っていただくための、PRの部分はすごく大事なのだと改めて実感しました。そこは、小清水さんと相談して積極的にやっていきます。

小清水前回は、リアルでイベントをやる想定だったときは、インフルエンサーを呼ぶ準備はしていたのですが、けっきょく実現しませんでした。今年はプラットフォーマーとの連携やインフルエンサーに協力してもらい、より注目していただけるようにがんばりたいです。

――海外からの参加希望があった場合どうされる予定ですか?

村上基本リモートでの参加をお願いする予定です。遠隔で参加されるデベロッパーの出展方法に関しては、いろいろと考えていることがあります。たとえば、ブースだけを設置してあげて、本人が不在でも、ゲームを遊べるようにしてあげたり、時差の兼ね合いもあるのでわからないのですが、試遊台の横にビデオチャットができるモニターを設置したりとか……。この辺りははまだ企画の段階なので、ぜんぜん妄想なのですが……。

――BitSummitと言えば、海外の新しいタイトルと出会うことができるのがひとつの楽しみとしてあるので、何らかの形で触れられるとうれしいですね。

小清水基本的には以前と同じように日本のゲームと海外のゲームを、同じようなバランスで出展できるように準備する予定です。海外の方が実際に来てPRできるかどうかは、いろいろと議論はあると思うのですが。

――ダスキンさんとごいっしょするとのことですが、新型コロナウイルス対策として、現状考えていることはありますか?

小清水検温や入場にあたっての消毒はもちろんしますし、会場の人数制限に関しては、ダスキンさんが入れられる人数を計算して管理していただきます。また入り口で入場者数を数えて整備するといったことも行うようです。クラスターを発生させると困るので、会場に入る際には専用のアプリをダウンロードしていただいて、登録していただくという手続きも設けるつもりでいまして、その後入場していただくという流れになりますね。

村上あとは、何かあったときのために、看護師さんたちに会場に待機していていただくという話もしています。

富永あと重要なのは、参加している人がコロナ感染予防の意識を持って会話をしたり、モノを触るにしても、とにかく注意するといったことを、個人個人で意識していただけたらと。

――ああ、試遊となると、そのへんのやりくりは出展者に任されるので、意識を高めてもらわないといけないということですね。

村上BitSummitは、通訳の方であったり、学生さんといったボランティアの方に助けられて成り立っているのですが、今回に関して言えば、ボランティアとして参加してくださるかどうかも、そもそもわからないところがあります。抵抗がある方もいらっしゃるでしょうし、そのへんはこれからの課題ですね。

富永立命館大学の先生方は、ボランティアに参加したいと言ってくださっています。

村上大学ということで言うと、大学側がBitSummitと連携することを授業の一環として取り入れたいというお声もあったりするので、現状の状況は難しいのですが、みんなの気持ちとしては、前向きに少しずつ進んでいるなという気はします。

――新型コロナウイルスの影響下にあってもということですね?

村上はい。この状況下でそういったお話をいただけることが、ポイントかなと思っています。

――この状況下での新たな取り組みというのもアグレッシグですね。

富永先生方も、コロナ禍だからこそできる授業のアイデアに苦労されているようで、BitSummitみたいなイベントに関わることは、いろいろなことが経験できるので有意義なようです。BitSummitとしても、未来を見据えた取り組みをしていきたいと思っています。

小清水たくさんのゲームの専門学校さんも、BitSummitに参加したいと言っていただいていて、すごくうれしいですね。僕は学生さんが参加してのゲームジャムに力を入れていきたいと思っています。2019年のBitSummitで手応えを感じていて、昨年も力を入れて準備していたのですが、実現できず残念でした。今年もできれば、BitSummitでゲームジャムをやりたいと思っています。コロナ禍の中で、どのように運営するかという問題はあるのですが、そこはうまくやっていきたいです。

村上BitSummit Gaidenのときに、オンラインでゲームジャムをやるノウハウができたんです。

――オンラインでゲームジャムって、できるのですか?

富永僕も最初は無理だろうなと思っていたのですが、蓋を開けたらできたんですよ。

村上めちゃめちゃよかったです。

富永通常のゲームジャムのスタイルだと、2日間なりを、いっしょの場所で制作するのが通例ですが、今回は、オンラインでの実施ということで時間に余裕を与えたんですよ。他学校の生徒は集まれないですし。オンラインでコミュニケーションをしたほうが向いていた気はしますね。

村上もうひとつよかったのは、リアルでゲームジャムをやったら、イベントが終わったあとはそれきりになることが多いですが、オンラインだとわざわざ会わなくても繋がっているという環境がそこにあるので、イベント後もいっしょに作り続けていけるんです。しっかりと作りきって、違う賞に応募したりできますし、そこからオンラインストアに申請することもできるので、より実のあるものになりました。

――それはいいですね。ところで、今年はUtomikは活用するのですか?

村上BitSummit Gaidenでの反省を踏まえたところでお話しすると、エントリーのときに“こういう状況だったらUtomikというシステムを使えます”と事前にお伝えできるのが、異なる点になります。BitSummit Gaidenでは、2週間くらいでUtomikに合ったフォーマットに変えていただくというような、無理なお願いをしたんですよね……。今回は出展者の判断次第で、Utomikへの出展を選べるようになっています。

――では、最後に出展を検討しているクリエイターに向けてメッセージをお願いします。

村上BitSummitは、日本の開発者さんのための場を作ることを目的としてやり続けてきました。このようなたいへんな時期だからこそ、同じ場所に集まってお互いの存在を確認しあうことが重要ではないかと感じます。今年はインディーゲームに関わる人たちが集まれる場を提供するために、精一杯がんばるのでよろしくお願いします。

小清水今年も開催することを決めましたし、あとはやり抜きますので、ぜひ会場でお会いしましょう! 僕はゲームクリエイターさんがハッピーになることをやりたいですし、そうじゃなかったらやらないと決めています。今年もおもしろいゲームがたくさん集まることを楽しみにしています。

富永とにかく安心安全でどれだけできるかということを肝に命じて開催に向けてがんばります。今回現場に集まってくれるのは、それ相応の覚悟や気合いのある人たちだろうと予想しています。おそらく、いままでのBitSummitの中でも特別な回になるのではないでしょうか。何年か経った後に、「あのときのあの場所にいたんだ」と言えるような回になればと願っています。

BitSummit THE 8th BITの無観客開催決定に向けての葛藤と紆余曲折。決意と覚悟をJIGAのメンバーに聞く

BitSummitクリエイティブディレクター ジェームス・ミルキー氏

JIGA理事 BlackSheep 代表取締役 ジョン・デイビス氏

 本年度もまたBitSummitが開催できるということで、とてもワクワクしています。振り返ればこの1年、いろいろとたいへんでしたが再びオンラインイベントという形で開催できることを嬉しく思います。昨年のBitSummit Gaidenでは多くのことを学びました。そこで学んだことやこれまでの経験を活かし、さらにパワーアップしたBitSummitにしていきたいと考えています。残念ながら、国内・海外からの渡航や密となる集会についてはまだ制限があるため、従来のように皆さんをお迎えすることはできませんが、来年のBitSummitでは、皆様をお迎えし京都にて盛大なパーティーができることを願っています。

 I'm really excited that BitSummit is coming back! This past year has been tough, so it is very encouraging to hold a live event once again. We learned a lot in doing the event online with BitSummit Gaiden, so we are hoping to combine our experiences over the past year and make an even better BitSummit. Unfortunately, we won't be able to welcome everyone to the show since travel and gatherings are still under restrictions. But the next BitSummit will be a step forward in a positive direction and hopefully next year we can have a huge party in Kyoto!

BitSummit THE 8th BITの無観客開催決定に向けての葛藤と紆余曲折。決意と覚悟をJIGAのメンバーに聞く

◆開催概要◆

  • BitSummit THE 8th BIT(ビットサミット ザ エイト ビット)
  • 日程:2021年9月2日(木)・3日(金)
  • 時間:10:00〜17:00(2・3日)
  • 会場:京都市勧業館「みやこめっせ」1階 第2展示場
  • 主催:BitSummit 実行委員会
    • 一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)(キュー・ゲームス/ピグミースタジオ/Skeleton Crew Studio/BlackSheep Consulting)
    • 京都府
  • 共催:KYOTO CMEX
  • 制作:株式会社802メディアワークス

出展エントリー受付中

 BitSummit THE 8th BITでは出展者のエントリーを受付中だ。
 国内からの出展者は直接参加、京都の会場でのブース設営を予定。国外からの出展者については、会場にブースを設けつつ原則リモートでの参加を予定しているとのこと。
 なお、コロナ情勢状況により変更する場合がある。
 エントリーの受付は2021年5月28日の17時まで。レイトエントリーの締切は6月4日の17時までとなっている(日本時間)。

BitSummit THE 8th BIT出展エントリーページ