日本物産の名作シューティング『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』シリーズの完全新作の続編として、プラチナゲームズが手掛けるシューティング『ソルクレスタ』。2021年9月2日~3日の2日間にわたり開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit THE 8th BIT (ビットサミット ザ エイト ビット)”では、本作の発売日が2021年12月9日に決定したことや、キャラクターが登場し物語が描かれていく“ドラマティックDLC”などの新情報も明かされ、大きな注目を集めた。

 そして、当日の会場では『ソルクレスタ』の試遊も行われていたということで、筆者が体験したプレイレビューと併せて、会場にいた本作の総監督を務める神谷英樹氏にお話うかがうことができたので、その模様をリポートしていこう。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】

自由自在に自機を動かす感覚がとにかく楽しい

 本作最大の特徴は、なんといっても自機となる3つの戦闘機による合体、分離、フォーメーションのシステム。ボタン操作で分離を行い、方向スティックで自機を動かすことで、合体時の戦闘機の並び順を組み変えたり、フォーメーションを組むことができる。どのような並び順で合体するかによってショットが変化し、さらにはさまざまなフォーメーションによっても強力な攻撃が行えるのだ。そのほかにも、アイテムを集めてパワーアップすることで使用可能となる、レバー入力でくり出す“コマンドショット”と呼ばれる攻撃方法もあり、多彩な攻撃を駆使して戦うことができるのも魅力だ。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】

 このような攻撃方法の豊富さもあって、自機を動かしているだけでワクワクさせてくれるようなシューティングといった印象を受けた。操作に少し慣れてくると、分離して機体の並びを組み替えて合体したり、フォーメーションを組んだりするのも楽しくなり、演出のカッコよさも相まって、別に分離しなくてもよい場面でも思わず使いたくなってしまうほど。『テラクレスタ』の続編ということもあって、フォーメーションの攻撃は比較的どれも強力で、撃って敵を倒していく爽快感も存分に味わうことができた。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】

 攻撃方法が多彩だからといって、一般的なシューティングよりも難しくなっているという印象はなく、分離した際にはスローになる演出もあり、全体的に遊びやすい調整がなされているように感じた。また、操作で使うのは方向スティック、ショットボタン、分離を行うボタンという3つだけで、この多彩な攻撃バリエーションを少ない操作でまとめられている点も筆者が感動したポイントだった。

 少しプレイしただけでも、上達すればするほどおもしろくなることがうかがえ、豊富なショットを駆使して思いのままに戦えるようになれば、さまざまな状況に合わせて自機を組み変えていくという戦略性も生まれてくるはずだ。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】
『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】
当日のブースの様子。当日はアーケード筐体での試遊も行われていて、筆者はそちらで遊ばせてもらった。

月奪回にも地球奪回にも失敗した人類の戦いを描く『ソルクレスタ』

 ブースには、プラチナゲームズの神谷英樹氏がいたのでいくつか質問をさせていただいた。神谷氏のどういった考えから『ソルクレスタ』が形成されていったのかを始め、サウンドに古代祐三氏が参加した経緯や、“ドラマティックDLC”についても話を伺った。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】
プラチナゲームズの取締役でチーフゲームデザイナーの神谷英樹氏。本作では総監督を務める。

――本作は『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』などのクレスタシリーズの続編にあたる作品ですが、『ソルクレスタ』というタイトルにしたのはなぜでしょうか。

神谷もともとは『クレスタ』シリーズとは関係なく、3機の戦闘機が合体したり、分離しながら戦うシューティングを考えていたんです。そのアイデアを企画書に起こす際に、「合体と言えば『クレスタ』シリーズがあったな」と思い出し、それまであまり気にしていなかった『クレスタ』シリーズのストーリーを調べてみたところ、『テラクレスタ』というタイトル自体が地球を奪回するために人類が結成した組織の名前だということを知って、そうなると前作にあたる『ムーンクレスタ』は、月を奪還するための組織の話なのか? などと考えたら、妄想がどんどん膨らみ始めたんです。『テラクレスタ』は、海底基地から機体が発進するところからゲームが始まるじゃないですか。

――自機のウイングギャリバーが出てくるシーンですね。

神谷あの演出は地球を奪われた人類が海底基地に追いやられたという設定によるものなんですが、そうなると前作にあたる『ムーンクレスタ』では、人類は侵略軍と戦ったけど負けてしまった、ということになる。月、地球ときたら、つぎは太陽じゃないですか。月を奪われ、地球奪回にも失敗した人類は、さらに太陽も奪われて絶体絶命の状況になる、そこで太陽奪還組織“ソルクレスタ”を結成して、最後の戦いに立ち向かう……と想像したらめちゃくちゃ燃えてきて。それで自分のアイデアを『クレスタ』シリーズと結びつけて、権利元であるハムスターさんからなんの許可もいただいていない状態なのに、一気にプロットを書き上げたんです。

――確かにここまで熱い展開が浮かんでしまうと、実現させたくなる気持ちもわかるような気がします……。実際にハムスターさんに企画を持ち込んだときの反応はいかがだったのでしょうか。

神谷戦々恐々としながらハムスターさんのところに持っていきました。ハムスターさんは毎週木曜日にアーケードアーカイブスの番組を配信されていて、そこにアポなしで参加させていただいたりと、社長の濱田さんとは以前から仲よくさせていただいていたんですが、それはあくまでプライベートというか、ビジネスとは無縁の付き合いでのことなので、企画の持ち込みはもちろんアポを取って行くことになりました。

 「勝手に『ソルクレスタ』という企画を作って、気分を害されたらどうしよう」とか、「濱田さんと気まずくなってしまったら……」とか、いろいろ考えて緊張しましたが、いざ持っていったら、その場で企画書も読んでいただいて、よい反応をいただけたのですごくホッとしました。本作は僕たちだけでできるプロジェクトではないので、本当にハムスターさんの協力のおかげです。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】

――サウンドには古代祐三さんが参加されていますが、こちらはどういった経緯だったのでしょうか。

神谷僕は最初から古代さんしかいないなと思っていました。本作は“ネオ-クラシック・アーケードシリーズ”と銘打って、クラシックという部分をテーマに置いて作っているのですが、僕は古きよき時代をユーザーとしては体感していますが、その当時ゲーム作りをしていたわけではないですし、うちのスタッフにもそういう古い時代のハードに対してのノウハウを持っている人間がいないんです。

 そんな中で“クラシック”という部分をどう表現しようかと考えたときに、たとえばビジュアル面では、アセット自体は3Dで作りながらシェーダをかけてドット絵っぽく見せるという技巧などを使って表現しているんです。では、サウンド面ではどうするかとなったときに、サウンドに関してもまったく当時のノウハウがなかったので、クラシックの大事な部分を守りつつ“ネオ”を表現するうえで、しっかりと知識のある方にご協力いただきたいと思って古代さんにお願いした形です。

――確かに古代さんであればクラシックとしての大切な部分は守りつつ、ネオなものに仕上げてくれそうですね。では、古代さん主導で楽曲制作は進められたような形なのでしょうか。

神谷“『ソルクレスタ』におけるネオ-クラシックとは”みたいなレギュレーションも古代さんの経験と知識から提案してくださって、「それはいいですね」という形でお願いしました。

――今回、DLCとして収録されることが公開された“ドラマティックDLC”に関してはどのような経緯で開発に至ったのでしょうか。

神谷自分たちが作ってきた作品でも、キャラクターのドラマを描いたり、イベントシーンの演出など、シネマティックにやってきた経験があるので、そのノウハウは本作でも活かしたいというのは早い段階から話していました。過去にも『重装機兵ヴァルケン』など、バトルの最中でもキャラクターが出てきてセリフを喋るような作品もあったので、そういうスタイルにならって、シューティングだけど分厚いシナリオを入れてみようという形で取り組みました。

――公開されていた映像も見ましたが、思っていた以上に喋っていてビックリしました。

神谷まだ本当に一部分しかお見せできていませんが、本当にすごい量を喋ります(笑)。シナリオは僕が書いていますが、筆が乗ってしまって、正月返上で会社に入り浸って熱を入れて書きましたね。いままでの僕の作品で言うと『ベヨネッタ』のときくらいの勢いでシナリオを書いてしまったので、ゲーム中はほぼ喋り続けているくらいのボリュームになっています。シューティングゲームというのは敵が出てきてそれを撃っていくという単純なゲームですが、そこにいい付加価値ができたのではないかと思います。

 シナリオを楽しめるものは、“ドラマティックモード”として通常のモードとは分けているので、従来どおりのシューティングを遊びたいという方は“アーケードモード”で遊んでいただければよいですし、よりドラマティックに楽しみたい方は“ドラマティックDLC”を買っていただいて……という感じになっています。もちろん、僕としては“ドラマティックモード”も遊んでいただきたいですし、ドラマが入るとシューティングに対する熱の入りかたも違うと思うので、ぜひおすすめしたいです。今回は戦いの導入部が感じられるようなシーンを公開しましたが、ほかにもいろいろなキャラクターがいたり、因縁の戦いがあったりするので、そういう情報も今後出していけたらと思います。

『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】
『ソルクレスタ』先行プレイレビュー。神谷英樹氏に本作のシナリオについて直撃「本当にすごい量をしゃべる」【BitSummit THE 8th BIT】
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