2021年12月16日に、Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One用向けにシティコネクションから発売される『デススマイルズI・II』。『デススマイルズ』、『デススマイルズ メガブラックレーベル』、『デススマイルズIIX 魔界のメリークリスマス』という3作品が収録される本作では、ケイブから配信中のスマートフォン向けシューティングゲーム『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』とのコラボDLCの配信も決定しています。

 そんなコラボDLCについて解説していく連載の最終回である第7回では、DLCで追加されるサウンド要素についての解説に加えて、本作のスタッフの方々にサウンドについて伺ったインタビューをお届けしていきます!

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DLCでは『ゴシックは魔法乙女』の原曲&アレンジ楽曲でゲームが楽しめる!

 これまで、この連載ではDLCに収録されるキャラクターたちをメインに紹介してきましたが、魅力はそれだけではありません! DLCを手に入れると、ゲーム内のサウンドを切り替えられる機能も追加され、『ゴシックは魔法乙女』の曲で『デススマイルズ』をプレイすることもできてしまうのです。

 ステージ道中の曲を切り替えられるのはもちろん、ボス戦に突入すると『ごまおつ』のボス戦の曲が流れたり、ステージクリアー時の曲も『ごまおつ』仕様に変えることができます。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】
楽曲はメインメニューの設定から切り替えることが可能。ステージなどの項目ごとに細かく設定できるため、好みのカスタマイズでゲームが楽しめるのも嬉しいポイント。また、ゲーム中のポーズ画面にあるサウンドの設定から楽曲を切り替えることもできる。

 そして、切り替えられるのは『ごまおつ』の原曲だけではありません。本作には、『ごまおつ』の楽曲を手がけてきた松本大輔氏が今回のためにセルフアレンジを施した『ごまおつ』アレンジ楽曲も収録されているんです! アレンジ楽曲のベースは『ごまおつ』の楽曲ですが、『デススマイルズ』楽曲が部分的にアレンジとして盛り込まれていたり、『デススマイルズ』の楽曲で印象的なギターの音色が加えられていたりして、双方のファンが楽しめるような遊び心満載の『デススマイルズ』ライクなアレンジに仕上げられています。

さらにDLCキャラクターは録りおろしボイスも収録!

 DLCで登場する『ごまおつ』の5乙女たち(ラナン、カトレア、スフレ、プルメリア、ロザリー)は、今回のために録りおろされたキャラクターボイスを収録。もちろん、キャストは『ゴシックは魔法乙女』で彼女たちを演じたオリジナルキャストが参加しています。

 ステージ選択時のセリフや、ボム使用時のセリフなど、『デススマイルズ』のキャラクターたちと同じようにボイスを聴くことができる仕様となっているので、『デススマイルズ』の世界に融和した『ごまおつ』キャラクターたちの活躍をぜひお楽しみに!

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】
キャラクター選択時のセリフも、5乙女たちらしい個性が感じられるものに。ロザリーもちゃんと生意気でかわいい。
『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】
本来の『ごまおつ』にはない、パワーアップ使用時の「パワーアップ!」というセリフは意外とレアかも。

開発陣にサウンドにまつわる制作秘話を直撃!

 そして、ここからは『ごまおつ』の原曲&今回のアレンジ楽曲を手がけた松本大輔氏、キャラクターボイスのディレクションを手がけた渡辺敬氏、そしてシティコネクション代表の吉川延宏氏のインタビューをお届け! サウンド面にまつわる制作秘話やなどを中心にお話を伺いました。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】

松本大輔氏(中央)

シティコネクション所属。『ゴシックは魔法乙女』の楽曲を始め、多くの作品でサウンドや効果音を手がけるサウンドデザイナー。本作ではアレンジ楽曲の制作を担当。

渡辺敬氏(右)

シティコネクション所属。本作ではディレクターを担当し、コラボDLCのストーリーやボイスディレクションなども手がけた。

吉川延宏氏(左)

シティコネクション 代表取締役

『ごまおつ』ファンも『デススマイルズ』ファンも幸せになれるアレンジを

――今回『デススマイルズI・II』に『ごまおつ』のアレンジ楽曲が実装されることになった経緯について教えてください。

吉川まず『デススマイルズI・II』の売りは何にしようと考えたときに、ひとつの要素として、楽曲を切り替えられる機能をつけたいと思っていたんです。ということは、もちろん原曲ではないものが入ることになるので、アレンジ曲を入れたいと要望は開発陣に伝えていたんです。その後、「アレンジは誰に頼むか?」、「そもそも『デススマイルズ』のアレンジでいいのか?」という議論をしているあいだに『ごまおつ』のDLCが決まり、「それでは『ごまおつ』の曲を作っている松本大輔にアレンジしてもらおう」という自然な流れで決まりました。

松本私がケイブに所属していたころから本作の企画はスタートしていたのですが、過去に『ごまおつ』に『デススマイルズ』のキャラクターが登場したときに、『デススマイルズ』風のオリジナル曲を書いたことがあったんです。その楽曲と、今回の『デススマイルズI・II』を結び付けたらおもしろいのではないかという話になり、『ごまおつ』のキャラクターが自機としてプレイアブルで出るなら、音楽も『ごまおつ』の原曲やアレンジ音源も入れようということで実装することになりました。

――アレンジ楽曲を聞かせていただきました。かなり『デススマイルズ』の楽曲の特徴を盛り込んだアレンジになっていると感じたのですが、今回のアレンジのテーマは何か考えられていたのでしょうか。

松本今回『ごまおつ』原曲から選出したおもなステージBGMは、『ごまおつ』で『デススマイルズ』コラボをおこなったときに、“『ごまおつ』の世界観で『デススマイルズ』を表現した曲”というテーマで制作した楽曲なんです。そのときは、『デススマイルズ』の曲で使われていた楽器はあえて外して、『ごまおつ』で使っていた音色を駆使して、「もし自分が『デススマイルズ』の曲を作ったら」というテーマで作りました。“港町”、“森林”、“沼地”、“湖畔”、“火山”がそれにあたります。

――確かに音色は『ごまおつ』のまま、曲調は『デススマイルズ』の雰囲気といった感じでした。

松本その楽曲たちを本当に『デススマイルズ』の音に寄せつつ、フレーズの一部分に『デススマイルズ』のメロディーっぽい要素を入れてみたり、曲の展開も『デススマイルズ』の曲を踏襲したりといった、並木さん(並木学氏。『デススマイルズ』シリーズの作曲を担当)の楽曲へのリスペクトを混ぜたのが、今回のアレンジのテーマになっています。自分がリスナー側なら凄く盛り上がるコンセプトだと思ったので、この方向性で進めていきました。

――松本さんは『ごまおつ』の楽曲を数多く制作されていますが、『デススマイルズ』の曲で印象的なギターの音色が『ごまおつ』の曲だとあまり使われていませんよね。そもそも『デススマイルズ』の曲と意図的に差別化を図っていたのでしょうか。

松本『ごまおつ』の楽曲を作るとき、池田さん(池田恒基氏、「ゴシックは魔法乙女」制作総指揮)から「『ごまおつ』は『デススマイルズ』の世界観に連なるタイトルだけど、『デススマイルズ』とは違ったアプローチを」と言われたんです。そこで、『デススマイルズ』の楽曲のどういう部分が特徴的かを考えたときに、ギターの音色だと思ったんですね。それで、『ごまおつ』のBGMでは、あえてギターを使わずに作曲していました。そういった背景もあって、今回のアレンジは逆にギターを入れて、曲の構成もステージの原曲に寄せて制作するというフォーマットに固まったんです。

――曲作りをするにあたり、並木さんにお話を伺ったりしたのですか?

松本並木さんが当時思っていらっしゃったことを自分なりに汲み取って、自分で構築していかないとモノにできないと思っていたので、直接お聞きすることはありませんでした。

 自分がユーザーとして「こんな曲展開があったら熱いな」というのを考えながら、原曲の作曲者である並木さんに対するリスペクト、そして応援してくださるユーザーの皆様へのリスペクトを念頭に入れつつ制作しました。これはふだん制作業務をおこなっているときも思っていることなのですが、こういう作りかたをしている自分はやはり“職業作曲家”と言いますか、アーティストではないんだろうなぁとしみじみ思います(笑)

 ちなみに、DLCの情報が公開された後で、リスペクトアレンジについては並木さんにご一報入れさせていただきました。

吉川たしかに松本はアーティストタイプではないかもしれませんね。ゲームミュージックとして、プレイヤー目線だったり、タイトルのユーザー層の目線になって曲を作るタイプなので。逆に言えば、そういうところが松本の強みでもあります。「こうしたらユーザーは喜ぶ」と思ったら、それがどんなにベタな展開でも、いままでと同じような曲をやってきたとしても、抵抗なくできるんです。アーティストタイプだと、こういうことをできない人も絶対にいると思います。

――それはとても興味深いですね。

松本ユーザーが聴いたときに、ゲームとマッチしているかというのはとても大事ですね。僕自身もプレイヤーとしても「この展開でこの曲がかかって、最高じゃん!」という体験をしてきているので。

――吉川さんは今回のアレンジを聴かれていかがでしたか。

吉川第一印象はいい意味で「アレンジに聞こえない」と思いました。アレンジと聞くとけっこうオリジナルからガラッと雰囲気が変わったり、アレンジャーの色が出たりするものですが、今回はセルフアレンジなので、原曲の抑えるところはしっかりと抑えつつ、狙いがはっきりしているアレンジでおもしろかったですね。凄くよいものになったなと思いました。今回のアレンジを松本大輔以外に依頼していたら、しっくりこなかったのではないかなと。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】

――今回セルフアレンジということで苦労された部分はありましたか?

松本一度自分の中で完成してしまっているものを再構築するということなので、最初は悩みました。あとはそもそもの選曲に関しても楽曲のバランスなども考えていたりして。たとえば“純白の飄風”は1面らしい曲ということで作っていて、プレイヤーの多くの方は“港町”から“墓地”へ進むと思うので、“港町”からの温度差の流れというのも意識しました。

――温度差ですか?

松本はい。私の場合、1面の曲は、割と最初から盛り上げつつ、サビでさらにテンションを上げてインパクトを与える作りかたをしますが、2面では派手さを抑えて、しっかりとしたメロディーを打ち出しつつ、Bメロからサビで盛り上げるようなイメージで制作していて、曲どうしの展開に温度差をつけているんです。たとえば、最初は“墓地”ステージにキャスパーをイメージした曲“金紫の宵闇”を選ぼうと思っていたのですが、あえて、『ごまおつ』が初期のストーリー上で新たな展開を迎えたときに作った曲“祈り、祝福の未来へ”をチョイスしました。この曲は制作当時、シューティングの2面をイメージして作った曲だったんです。

――そういう曲ごとの温度差を意識しながらの選曲というのも難しそうですね。

松本いままで私が遊んできたシューティングの曲構成、温度差を意識してステージごとに曲を当てはめていく作業がいちばん考えました。もちろん、攻略の仕方によってステージの選びかたは変わるので、そのあたりも考慮しつつの選曲は中々難しかった記憶です。

――『デススマイルズ』はステージ選択制ですが、楽曲の展開としてオススメルートなどもあったりしますか?

松本いちばんのオススメは“港町”→“墓地”→“森”→“沼”→“湖畔”→“火山”の順番ですね!

キャラクターがダメージを受けたときのセリフはとくに苦労した

――続いて、新規録りおろしのキャラクターボイスについてお伺いしたいのですが、こちらも最初から決まっていたのでしょうか。

吉川『デススマイルズI・II』の企画段階から『ごまおつ』コラボDLCを作ることは決めていましたが、シューティングだと新しい自機が使えるだけというスタイルのDLCはよくあるので、当初はそんな形を想定していたんです。新しいストーリーを用意するとなると、ボイスも必要になるし、ストーリーも辻褄を合わせたものを作らないといけないし、背景だっているので、相当な労力がかかりますので。

 そんなときに渡辺から「コラボストーリーもやりたい」と話があったので、であれば……ということで任せることにしました。

――コラボストーリーやボイスは渡辺さんのこだわりから立ち上がったのですね。

渡辺『デススマイルズ』はシューティングとしては珍しく、世界観もはっきりしているし、ストーリーもしっかり描かれていますよね。ですので、スピンオフ作品である『ごまおつ』のキャラクターが出るとなったら、「2作品を絡めるべきなのでは」と思ったんです。それで吉川に「やりたい」とお願いしたのですが、蓋を開けてみたら、これがすごくたいへんで(笑)。とくに、キャラクターの性格などを改めて調べながら、セリフを考えていく作業は本当に悩みました。

――お察しします。

渡辺ボイスを新たに録った理由としては、『デススマイルズ』は個人的にけっこう喋っている印象があったんです。『ごまおつ』のキャラクターとのコラボを考えたときに、『デススマイルズ』の世界にマッチするような量のボイスを準備したいと思って、新たに収録させていただきました。

松本『ごまおつ』ユーザーから見れば、『デススマイルズ』のスピンオフ作品として、しっかりと物語として描かれるのは嬉しいのではないかと思います。

――セリフを考えるのはかなりたいへんだったとおっしゃっていましたが、とくに苦戦したセリフなどはありましたか。

渡辺キャラクターがダメージを受けたときのセリフです。たとえば、『デススマイルズ』のウィンディアならダメージを受けると「キャー」、「あぁんもう!」と言って戦いに戻りますが、短いセリフでキャラクターの特徴を出すのがたいへんでした。特徴を入れようとするとセリフが長くなったりしてしまって、松本さんに泣きついて調整してもらったりしました(笑)。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】

――そして、クラリスショップの購入特典として“「純白の飄風」チップチューンソノシート&ダウンロードコード”が付きますが、特典にソノシートというのも珍しいですよね。

吉川今回は音を前面に出した展開にしていますので、音関係の何かをつけたいと思っていました。ただ、無料のショップ特典なので、多くはコストがかけられない中、なんとかソノシートであれば諸々クリアできそうでしたので決めました。

――収録されるのは、今回アレンジされた“純白の飄風”のチップチューンバージョンですが、この曲を選ばれた理由はなぜでしょうか?

松本何か特典にするなら、今回のごまおつDLCでは自分の中で“看板曲”だと思っている“純白の飄風”を……とは、当初から思っていました。で、それはそれとして、ソノシートと聞いたときに、凄く懐かしさを感じたんです。昔、子ども向けの雑誌とかにはペラペラのソノシートが付いてきて、レコードプレーヤーでかけてもペラペラすぎて音がちょっとヨレてたりしたのを思い出したりして。その懐かしいイメージから、1面の曲のイメージで作った“純白の飄風”をチップチューンアレンジにしたらおもしろいかなと思って選びました。

クラリスショップ『デススマイルズI・II』商品ページ

――僕はソノシートという物自体は初めて見たのですが、ペラペラとおっしゃっていたわりにはしっかりとした作りですね。

松本僕らが子どものころに触れていたソノシートよりも材質がすごくよくなっていて、音もけっこういいんですよ。色はランダムで3色用意していて、『ごまおつ』で最初に契約できるラナン、カトレア、スフレをイメージした色になっています。ダウンロードコードも付いているので、レコードの再生環境がない方でもお楽しみいただけます。

吉川ショップ特典としてはかなりおもしろいものができたのではないかと思います。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】

――最後に、今回で『ごまおつ』コラボ連載も最終回となりますので、発売を楽しみにしている方々へメッセージをお願いいたします。

松本アレンジBGMも気合いを入れて作りましたし、『ごまおつ』の原曲と比較しながら聴いてもおもしろいと思うので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。ステージごとに並木さんの曲とも切り替えたりできるので、いろいろと組み替えて遊んでいただけたらうれしいです。

渡辺『デススマイルズ』の世界観を引き継いでいる『ごまおつ』キャラクターたちですが、音や声、演出などで『デススマイルズ』に違和感なくなじむものを作ったので、ユーザーの皆さんにも喜んでいただけたら嬉しいです。

吉川今回の『デススマイルズ』と『ごまおつ』のコラボは、ケイブファンの方からすると自然なコラボレーションに見えるかもしれないですが、両タイトルの関係性をご存じでない方もいらっしゃるかと思います。ファンの皆さんにとって、しっかりと遊べるDLCになっていますので、ご期待ください。

『デススマイルズI・II』の『ごまおつ』コラボDLCのサウンド要素をさっさと解説しなさい!アレンジ楽曲や録りおろしボイスの秘密を開発者を直撃【連載第7回】

『デススマイルズ I・II』商品情報

  • プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One(※Xbox One版はダウンロード版のみ)
  • 発売元:シティコネクション
  • 発売日:2021年12月16日(木)
  • 価格:パッケージ版/5980円[税込]、パッケージ特装版(DLC付き)/9980円[税込]、ダウンロード版/4950円[税込]、DLC/2970円[税込]
  • ジャンル:ゴシックホラーシューティング
  • CERO:12歳以上対象
  • プレイ人数:1~2人