GRAND CROSS: ReNOVATION - レビュー

貫け【太陽剣】!レーザーで全てを焼き切る激ハデ同人STG

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STGは素晴らしいジャンルだが、伸びしろのないジャンルでもある。停滞・衰退の理由は「もうとっくに完成されてしまってるから」だとぼくは思っているが、まあ、とにかく風通しの悪いジャンルであることは間違いない。だから、新しいSTGを作って新しいファンにアピールするなら、なにかしらユニークなものを入れなければならない。たとえば、モダンなビジュアルだったり、なにか一つの尖ったシステムだったり、そういうのである。

そこで『GRAND CROSS ReNOVATION』が選んだのはレーザービームだった。全てを貫き、薙ぎ払い、焼き切る、超強いレーザービームだった。

『GRAND CROSS ReNOVATION』は個人サークルEternal Sphere4によって開発され、Henteko DoujinからPC向けに発売されている90年代風2D縦STGである。全6ステージで、2周目などはなし。アイテムによる自機のパワーアップなどはなく、最初から最後まで最強装備で進める。コンティニューは有限で、プレイ中の特定の行動で得られるポイントでのみコンティニュー回数を増やすことができる。

本作はガワだけ見れば普通の、ちょっと派手なオールドスクール同人STGという感じなのだが、実際にプレイしてみるとプレイフィールは昔ながらのものとは全く違うことがわかる。その違いは、自機が装備している太陽剣と名付けられたビーム武装によるものである。これは、直線上を貫通し、自機を中心に360度回転させることができる強力な武器である。

この太陽剣がすっごく強くて、すっごく楽しいのである。まず、このレーザーは敵弾の殆どを打ち消してしまう(通常ショットなどでは不可)。攻撃力もある。ボタン同時押しで放つ大太陽剣と拡散太陽剣もある。雑魚敵と弾幕はワイパーのように薙ぎ払い、大型敵は大太陽剣で集中して焼き切り。まさに、どんな状況も文字通りぶった切ってしまう超兵器である。

しかしこの太陽剣の仕様にはちょっとしたデメリットがある。ライフを消費するのだ。気持ちいいからとずっとレーザーをぶっ放しているとライフはすぐになくなってしまう。ライフは太陽剣を使わなければすぐに回復するが(ライフよりアーマーという感じか)、敵の弾幕は激しく、太陽剣を効果的に使わなければこんどは被弾でライフを削られてしまう。

おもしろいのは、このレーザー射出のリスクがスコアシステムに関わっているところ。ライフを半分以下に減らすと、リスク値が増加する。これはライフが減れば減るほどに上がり、ライフほぼゼロ・一発被弾で撃墜の状態で、最大値である100%に達する。このときに敵を倒すと高スコアが出たり、コンティニュー回数を増やすためのテクニカルボーナスを取得したりする。ライフを保ったまま安全にプレイするか、自分からライフを削って高スコアを目指すか、その駆け引きは楽しい。

本作は派手な武装が特徴だが、ストーリーや設定もまた派手である。ゲームを起動してプロローグを始めると、大変そうな場面にいきなり放り込まれてしまう。本作のストーリーは光と闇の最終局面から始まる。世界を覆い尽くす闇の軍勢。絶望的な状況のなか立ち上がる、闇出身の戦士・ネグザルツ。プレイヤーはネグザルツとして、闇を切り裂く光の超兵器・太陽剣を振るい、闇の中枢へと侵入するのである……。

そんな感じで、頭からいきなり最終決戦なので、他のSTGでは後半ステージでしか許されないような展開が最初から最後まで気前よく出続ける。たとえば巨大強化ユニット[聖鎧]との連結合体だ。これは自機を大幅にパワーアップさせる、その局面だけの限定装備で、他のゲームだったら最終面のとっておきに出てくるようなビジュアルと能力だが、本作では2面で出てくる。ボスやボスの発するセリフも1面からすごく壮大である。

でかい設定と、画面を埋め尽くす絶え間ない弾幕と光線と、Neotro Inc.によるサウンドトラックが合わさって生まれるのは、光と音のジェットコースターだ。グラフィックのスタイルは「国内の個人サークル制作のSTG」と聞いたときに想像できる以上のものではないが、全体のハイテンションは、そういうアマチュアっぽさを吹き飛ばしてしまうくらいに爽快である。

さて。ド派手ノンストップのハイテンションは本作のセールスポイントで、実際にとても楽しいのだが、ちょっと垂れ流しのだらしなさを感じることがある。みんな派手でカッコイイが、派手さ・カッコよさの程度が最初から最後までずっと同じなので、個々の展開の印象が薄いのである。全体の体験は印象に残るが、「あのボスやステージがよかったよね」というのはあまりないのだ。正直なところ、ボスやステージ背景をちょっとシャッフルしても気づかないだろう。

ゲームプレイに要求されるスキルが最初から最後まであまり変わらないというのも弱点か。太陽剣が強すぎるのである。特に一瞬だけ(大)太陽剣を出してその余韻のレーザーで薙ぎ払うという行動が強い。ライフの減少を抑えたまま高い火力を出せるので、低リスクでずっと突き進んでいけてしまうのだ。ハイスコアを生むリスク値システムもかなり甘い。一回ライフをギリギリまで削って100%にすれば、ライフが半分くらい回復するまでずっと100%を保っていてくれる。本作の高リスクとハイスコアのトレードオフはおもしろいのだが、実際はだいぶカジュアル寄りの調整で、あまり機能していない。

いちばん気になるのが効果音だ。サウンドトラックは派手でカッコいいのだが、射撃時の効果音はすごく地味で、完全に埋もれてしまっている。普通のゲームならこのくらいでもいいのだが、このゲームは違う。太陽剣なんてすばらしい武装があるのに、その効果音が「ビー……ボボボン」なんてありふれたものだというのはスゴく勿体ないではないか?そういうところにサウンドの工夫があったらゲーム全体がもっとオモシロく、カッコいいものになっていただろう。

しかし、本作の持つカジュアルな楽しさは、そういった欠点たちを打ち消す魅力がある。全体的な大味さ、太陽剣の強さは「強い超兵器で思う存分暴れてくれ」という設計からくる意図的なものだろうし、実際ビームをがしがし撃って弾幕を薙ぎ払うのは何度やっても楽しい。オールドスクールなSTGのようにステージ研究をせずともアドリブでガシガシと攻略していけるから、カジュアル層にも優しい。熱心なSTGファンも、そうでない人間も、カジュアルに入門して、笑顔でプレイを終えることができるだろう。

長所

  • 見た目もゲームプレイもハデで気持ちいい
  • ユニークな太陽剣システム
  • かなり取っ付きやすい

短所

  • 展開・ゲームプレイ共にやや一本調子
  • 地味で面白みのない効果音

総評

『GRAND CROSS ReNOVATION』は太陽剣と名付けられたビーム兵器の導入によって停滞したジャンルに新しい風を吹き込んでいる。オールドスクールなSTGの美しさを期待して挑むべきではないが、「全てを薙ぎ払う光線でガンガン攻略していけ」という設計は大成功している。ゲームプレイの性質はまったく違うが、『超連射68k』や『神威』のような国産同人STGの血を感じることができる力作である。

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『GRAND CROSS ReNOVATION』レビュー 貫け【太陽剣】!レーザーで全てを焼き切る激ハデ同人STG

8
Great
太陽剣と名付けられたビーム兵器の導入によって停滞したジャンルに新しい風を吹き込んでいる。ゲームプレイの性質はまったく違うが、『超連射68k』や『神威』のような国産同人STGの血を感じることができる力作である。
GRAND CROSS: ReNOVATION
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