Thrustmaster「TCA Yoke Pack Boeing Edition」試用レポート 振り子動作やオートパイロットも扱えるフライトヨークの決定版

価格に目をつむれば万人にオススメしやすいフライトヨーク

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Thrustmasterから「TCA Captain Pack Airbus Edition」に続き、実在する航空機のフライトシステムをイメージした周辺機器がリリースされた。その名も「TCA Yoke Pack Boeing Edition」(公式サイト)。フライトヨークと、カスタマイズ可能なスロットルクアドラントがセットになった製品。Amazonでの販売価格は7万5000円(税込)と、同種の製品の中でもなかなかの高額製品だが、その価格に見合うだけの作り込みなされている。

本製品は、中型旅客機でありながら、大型旅客機並みの航続距離を可能にした次世代機として華々しくデビューしたBoeing社の名機Boeing 787のコックピットをインスパイア。1/1スケールの振り子式フライトヨークの機構が本製品の最大の特徴と言えるのだが、Boeing機が搭載する特徴的なオートパイロットのロータリースイッチを装備するなど、細かい部分も配慮されたデバイスだ。

対応機種は、Xbox One/Xbox Seriex X|S/PC。今回Thrustmasterに本製品をお借りすることができたので、インプレッションを紹介する。

本製品は、ハンドルのような操舵軸を再現した「フライトヨーク(「ジョイスティック」といったような機器の総称)」タイプ。<br />
本製品は、ハンドルのような操舵軸を再現したフライトヨークタイプ。

なお、IGN JAPANでは、これまでにもThrustmasterがAirbus社のA320をコックピットをイメージして制作した「TCA Captain Pack Airbus Edition」の試用レポートも掲載している。ジョイスティックタイプのデバイスが好きだという方はこちらも参考にしてほしい。

振り子式にこだわったフライトヨークとスロットルクアドラントによる製品構成

まず本製品の構成だが、回転軸を上下逆さまにした振り子のように動く操舵軸を再現した「フライトヨーク」のユニットと、スロットル操作を行う「スロットルクアドラント」からなる。

フライトヨークは操縦桿が自動車のハンドルのような形状をしており、ゆったりと操縦する旅客機向けのシステムだ。ラダーを操作するためのアナログスティックや、エンジン出力のコントロールができるレバーも装備しており、フライトヨークユニット単体でもひと通りの操縦が可能となっている。

 

「スロットルクアドラント」は、見た目にもわかるとおりエンジン出力を調整するレバーがメインのユニットだ。単体でも販売されており、2つのスロットルクアドラントを用意することで最大4機のエンジンを個別にコントロールできるようになる。これは「TCA Captain Pack Airbus Edition」のスロットルと基本的に同じ考え方だ。

いくつか異なる部分があり、その代表的なのが取り外して配置を自分好みにカスタマイズ可能なレバーだ。これによってエンジンスロットルをあえてひとつだけにして、残りのレバーをフラップとスピードブレキーキに割り当てるといった使い方も可能だ。変更にあわせてゲーム側の設定も変更する必要があるので注意しておこう。

 

ほかにも、Thrustmasterが販売するラダーペダル「TPR:Thrustmaster Pendular Rudder」と「TFRP Flight Rudder Pedals」にも対応している。

振り子式にこだわったフライトヨーク

フライトヨークは、振り子を再現するためデスクに吊り下げて本体部分を低い位置に保っている。低い位置から操舵軸を上に伸ばして振り子の動きを再現しているため、背の高い製品だが操縦桿がモニターとの間に割り込み視界の邪魔をするということはない。

動きはとてもスムーズで、ハンドルの回転が機体の動きの目安となるので視覚的にも機体の動きを制御しやすいのは、フライトヨークのもっとも評価するべきポイントのひとつだ。特に10度など、狙った角度に機体を傾けて旋回するといった繊細な操作は、圧倒的にスティックタイプのものより容易だ。旅客機ではこうした繊細な操作を求められるので、本体価格にさえ目をつぶれば初心者にこそオススメしたいデバイスだ。

Xboxのコントローラーと比較すると、その大きさがイメージできるかもしれない。<br />
Xboxのコントローラーと比較すると、その大きさがイメージできるかもしれない。
後方に備わっているクランプでテーブルに固定して使用する。<br />
後方に備わっているクランプでテーブルに固定して使用する。

本製品こだわりの操舵軸の前後(振り子)の動きは、内部のスプリングで動きを少し重くしており、その数を変更することで動きの抵抗を調整できる。スプリングは最低でも操舵軸の左右に1個ずつ(合計2個)の装着が必要で、最大4個まで装着して操舵軸の動きを重くすることが可能だ。重くすればリアルになるというわけでもないので、自分に合った適度な重さになるように調整してフライトを楽しもう。

2~4個のスプリングで調整する。標準では3個のスプリングが装着されており、筆者の場合は2個がほどよいと感じた。<br />
2~4個のスプリングで調整する。標準では3個のスプリングが装着されており、筆者の場合は2個がほどよいと感じた。

グリップ周りは、先端部分に各種ボタンやスティックが備わっている標準的なラダーのデザイン。トリガーボタンも装備しているので、一応シューティング系のゲームもプレイ可能だ。

親指で操作するボタンには、フラップ・トリムなどの機体の補助操作を行う機能が割り当てられており、右側のスティックはアナログ入力でラダー操作が可能だ。こうした機能配置は実際の航空機に近いユニバーサルデザインのようなもので、直感的な操作がしやすいデザインとなっている。たとえば左側のボタンは上下に動くボタンで、機体の上下運動に関係する補助機能が割り当てられている。こうしたボタンマッピングは、PDFファイル(ゲーム設定の「Mapping - Microsoft Flight Simulator 2020」)やマッピングをひとまとめにした画像が公開されているので、購入した際は参考にするといいだろう。

右側のボタンは左右に動き、機体のロールや機首の左右の動きを補助する機能が割り当てられている。<br />
右側のボタンは左右に動き、機体のロールや機首の左右の動きを補助する機能が割り当てられている。

ほかにも本体には、エンジンのスロットルやスポイラー(ブレーキのようなもの)を操作できるレバーや、タイヤの出し入れを行うレバーも備わっている。

 

そして本体上面には、モバイル端末を設置するためのスペースが設けられている。「SpaceDesk」や「DuetDisplay」といったアプリを利用して、モバイル端末をPC用サブディスプレイとするのがシンプルな使い方だ。『Microsoft Flight Simulator』では、ゲーム内の計器類の情報を別のモニターにまとめて表示できるので8インチクラスのタブレット端末があるとサイズ的にも使いやすくてベストだろう。

スマホやタブレットを置いてサブモニターとして使用できる。<br />
スマホやタブレットを置いてサブモニターとして使用できる。

自動操縦に対応したスロットルシステム

「スロットルクアドラント」は、3つのレバーと多機能ダイヤルに、5つのボタンが備わっている。スロットルクアドラントは軽量で、なおかつスロットルの動きがやや重めのセッティングなので、ヨーク本体と同様にクランプでテーブルに固定して使用する。

付属の金具を取り付けて使用する。<br />
付属の金具を取り付けて使用する。

レバーは脱着が可能で、装着するレバーの種類によって機能を変更することができる。オーソドックスな使い方は2つのレバーを使って2機のエンジンを調整して、残りのひとつでフラップかスピードブレーキとして使用する形だ。

単純に航空機を飛ばして楽しむ分には左右のエンジンを別々に調整する必要はあまりないので、ひとつのレバーに2機以上のエンジン操作を同時に割り当てても良いだろう。エンジン出力を調整する際に若干雰囲気が損なわれるが、フラップとスピードブレーキなどを機械的に操作可能になるので、航空機の操縦がぐっと楽になる。

そして、手前にあるダイヤルやボタンにはオートパイロットに関係する機能が割り当てられている。ダイヤルは上下2段階になっており、ダイヤルの下段は設定するオートパイロットのモードセレクト。上段は、下段で選んだモードの値を調整するダイヤルでプッシュボタンにもなっている。

・「IAS/MACH」 対気速度(速度)に関する設定。<br />・「HDG/TRK」 HDGは機首が向いている方角、TRKは進行方向を設定。<br />・「ALTITUDE」 飛行する高度の設定。<br />
・「IAS/MACH」 対気速度(速度)に関する設定
・「HDG/TRK」 HDGは機首が向いている方角、TRKは進行方向を設定
・「ALTITUDE」 飛行する高度の設定

5つのボタンの上段3つは、各種オートパイロットに関連するボタンが割り当てられている。例えば左上のボタンは「Toggle Autopilot Airspeed Hold」で、「設定した対気速度を維持する」といったオートパイロットに関する機能が割り当てられている。ほかにも機首方位に関する「Toggle Autopilot Heading Hold」、設定した高度を飛行する「Toggle Autopilot Altitude Hold」に関する機能がある。

ただこうした機能は、スイッチを入れても目に見えた変化が発生するわけではないため、具体的な使い方については現在勉強中だ。

『Microsoft Flight Simulator』を使ったテストフライト

本稿の最後は、『Microsoft Flight Simulator』を使用したテストフライトだ。せっかくなので、今回はオートパイロットを中心としたフライトも行ってみた。選んだ機体はボーイング747。いわゆるジャンボジェットと呼ばれたボーイングの名機で、この機体でスロットルクアドラントで行えるAirspeed(速度)・Heading(方位)・Altitude(高度)に関するオートパイロットのテストを行った。

少しごちゃごちゃして分かりづらいが、テーブルの手前側にせり出す形で設置する。<br />
少しごちゃごちゃして分かりづらいが、テーブルの手前側にせり出す形で設置する。

何のことはない基本的な自動操縦だが、手元のダイヤルで操作できるのはやはりいい。速度・方位・高度を正確に設定して飛行できるので、景色をいろいろなカメラ角度で堪能しながらも、航空機を簡単に手足のように飛ばすことができる。ゲームならではのやんちゃな操縦だが、東京上空を低空飛行で飛び回ってもまったくもって怖くない。「スロットルクアドラント」単体でも購入する価値はあるだろう。

やり方を説明するまでには至らないが、簡単な自動操縦については使い方がわかってきたので、自動操縦でフライトを行う様子を動画に収めてみた。

ちなみに自動操縦関連は、対応機種であればボーイング以外の機体もコントロール可能だ。ただし、機体(メーカー)ごとの細かな違いを把握していないと、AirspeedとHeadingの自動操縦はうまくいっても、Altitudeの調整がイマイチできないという場合もあった。テキストロン・アビエーション社製のセスナ シテーション CJがそうだったのだが、こればかりは航空機の操作方法自体の勉強が必要に感じた。

ハンドル部分の回転で航空機のロール角の加減を視覚的にも調整しやすいフライトヨークの利点以外にも、振り子の動きで機体の上下角を調整するので、体感的にも加減を把握しやすい。それにより、一瞬で機体を自由自在に操れるようになるわけではないが、力加減が身につくのは本製品の特徴と言えるだろう。ゆっくりとスムーズな調整が可能なので、15度の上昇角や3度の下降角も無理なくコントロールできる。

「TCA Yoke Pack Boeing Edition」は、フライトヨークとしてとても完成度の高い製品だがいろいろと敷居が高いのも事実だ。思い切った決断をしないとなかなか購入できない価格設定もそうだが、本格的であるがゆえに大がかりなシステムになっているためセッティングも少々大変だ。

しかし、そうした高い敷居を乗り越えて導入する価値は間違いなくある。予算が許せば多くの人に触れてほしい周辺機器と言えるだろう。

TCA Yoke Pack Boeing Edition

Boeing 787からヒントを得た、1:1スケールのフライトヨークと、カスタマイズ可能なスロットルクアドラントをセットにした製品。
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TCA Quadrant Boeing Edition レプリカスロットルクアドラント

TCA Yoke Pack Boeing Editionの、スロットルクアドラント部分の単体販売商品。

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