2022年4月8日に発売となるNintendo Switch/PS4/PC(Steam)向け撃ちまくりわんわんアクション「メタルドッグス」のレビューをお届けする。
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「メタルドッグス」は「メタルマックス」シリーズのスピンオフ作品。重火器を背負った犬・“戦闘犬”の3匹を操作して、文明が滅び、荒廃した世界でさまざまなミッションを遂行。危険な生き物や兵器を殲滅していくゲームだ。
筆者は昨年夏のアーリーアクセス版に引き続き本作をプレイすることになったのだが、「メタルマックス」シリーズはほぼ未プレイながら、問題なく楽しむことができた。アクションゲームが好きで、とりわけ“ワンちゃん好き”ならば、シリーズファンではなくともプレイするのをためらう必要はない。これから書いていくゲームの特徴が自分に合うと感じたら、ぜひ手に取ってみてほしい。
3つの銃火器を中心としたカスタマイズでワンちゃんたちを強化し、敵を殲滅!
本作はダンジョンに潜って、数々のミッションを遂行。敵を倒したり、宝箱から拾うことでランダムにドロップする装備を付け替え、操作キャラクターをどんどん強化していく「ハック&スラッシュ」(ハクスラ)と呼ばれるタイプのアクションゲームとなっている。
操作できる戦闘犬は序盤こそ柴犬の“ポチ”だけだが、ゲームを進めていけばドーベルマンの“ベル”、ブルドッグの“ボナンザ”が使用可能となる。移動速度や最大HPの量など、戦闘犬ごとに少しずつ特徴は異なるが、基本的には自分好みの犬種でプレイすれば良いだろう。
それぞれの戦闘犬は3つの銃火器、それから“防具”と「ラッシュ」(ゲージがMAXのときに発動する大技。詳しくは後述)の性能を決定づける“首輪”を装着・換装可能。これらにHP・状態異常回復などの効果を持つ消費アイテムのショートカットを2つ、合計で7つのスロットを付け替えて、カスタマイズしていく。
銃火器はすべて、全弾を撃ち尽くすと自動でリロードとなり、その間は別の武器で敵に応戦することとなる。“機銃”ならば連射が効き、リロードもすぐに完了するが、威力が低い。“大砲”なら威力が高く射程も長いが、攻撃するたびにリロードが必要となる。ミサイルなどの“S-E(スペシャルイクイップメント)”は特殊な効果を持つものも多いが、リロードが最も長く多用はできないなど、武器種によっておおよその個性がある。
それぞれの欠点を補うように3つのスロットに別の武器種をバランスよく装備することもできるし、大砲を複数装備して、リロードを終えた順に撃ちまくるような戦い方も可能だ。武器の組み合わせが上手くハマって、敵を効率よく殲滅できたときの快感は大きい。
武器や防具、首輪にはレアリティが存在。白→緑→青→紫→オレンジと高くなっていき、同じ名称の武器でも、レアリティが高いほど性能アップの効果が多く付与される。
痛快な戦闘をくり返しつつ、よりよい性能を持つ武器を手に入れたら、その場で装備を換装。ミッションをクリアして、さらに激化していく戦いに身を投じていくというのが、このゲームの基本サイクルとなっている。
ひとつのミッションの攻略に掛かる時間は、後半に行くにつれ長くなる傾向はあるものの、ダンジョン内をくまなく探索して10分~15分程度。「ボスの撃破」など、目標さえ達成していればすべての敵を撃破する必要もないので、気の向くままに破壊の快感を味わい、満足したらゴールに向かえばいい。非常にカジュアルな味わいだ。
激化していく戦いを、あらゆる手段で生き抜け!
ミッションをクリアしていくにつれ、登場する敵も厄介なものが増えていく。序盤は敵の正面で立ち止まったりしなければ滅多にダメージを受けないが、中盤以降は広範囲に広がる砲撃や、ホーミング弾、毒や炎上、麻痺などの状態異常を付与する攻撃を使ってくる者も登場するように。何度も手下を呼び出す「エリートエネミー」などは優先して倒したい存在で、こういった敵がいるときは、とくに立ち回りがとても重要になる。
緊急回避アクションである「ダッシュ」なども駆使して、可能な限り被弾を避けて動き回ることになるのだが、複数の敵に囲まれるような混沌とした状況では、攻撃を完全に避けきるのは難しいだろう。
そうした局面で積極的に利用していきたいのが、首輪の装備によって使えるようになる「ラッシュ」だ。画面上のすべての敵に大ダメージを与えることができるこの攻撃は、敵の数が多いほど効果が絶大となる。ラッシュゲージは敵への攻撃回数に伴って貯まるため、多用はできない。だが、ここぞというところで叩き込んだときの気持ちよさはひとしおだ。
また、ゲーム後半では破壊することで回復や移動速度アップなどの効果を受けられるカプセルなど、プレイヤー側に有利な効果をもたらすギミックも登場。こうしたギミックの駆使など、ゲームが後半に向かうにつれ敵のインフレに対抗するための選択肢が増えていくゲームバランスは、なかなかに絶妙と言えるだろう。
「変異実験」で、目指せ武器のレアリティアップ!
ミッションをクリアするたび拠点に戻り、次の出撃の準備をすることになる本作。ここでの準備も、「戦闘犬の装備を強化→ミッションで実戦投入」というサイクルの楽しさに寄与している。
序盤でショップがオープンすると、装備品や消費アイテムの売買が可能に。不要となった弱い装備品は、売却してお金に変えることができるようになる一方で、販売している武器や防具のレアリティは最低の“白”のものがほとんど。性能の上乗せがないため、ダンジョン内で入手した装備よりもショップで購入したものを優先して使用する局面はあまりない。
では、貯まったお金は主にどんなことに使うかと言えば、装備の性能アップ効果を再抽選できる「変異実験」だ。「変異実験」はダンジョン内でときどき手に入る「構成物質変異剤」とお金を消費することで行える。結果は完全にランダムだが、場合によってはレアリティも変化して、装備が大幅に能力アップすることもあり、お気に入りの武器や防具の能力が飛躍的に向上したときは嬉しい。単純ながら、こうした“運試し”的な要素がゲームのスパイスになることは否定できない。
先ほどショップで販売している武器は滅多に使わないと書いたが、ショップにはミッション攻略中、低確率でドロップする「ドッグタグ」を複数集めることで非常に強力な武器と交換できる「交換所」という機能もある。ここで最強クラスの武器を手に入れるためには、かなりのやり込みと運を必要とする。本作のエンドコンテンツのひとつと言えるだろう。
「ドッグタグ」の低いドロップ率ゆえ、ひとつのアイテムを交換するだけでも骨が折れるのに、ラインナップは実に豊富な「交換所」。筆者はどのタイミングでドッグタグを交換すべきか、とても悩まされた。
アーリーアクセス版リリース当時からのブラッシュアップ多数。ゲームの根幹はほぼ変わらず
本作はPC(Steam)版で昨年夏に販売していたアーリーアクセス版からいくつもの改善やパワーアップ、追加要素が加えられている。
前述の交換所も追加要素だし、ステージ数や装備の種類、BGMも増加。ノーマルモードと異なり、弾薬は有限、装備ロストのデスペナルティもあり、敵も手強くなる新たな難易度「ハードコアモード」も追加されている。装備に付与されたすべての性能アップ効果がランダムで変化してしまう変異実験に対し、特定スロットの性能だけを変えることができる「スロット指定変異実験」や、「付与効果指定レベルアップ」なども、やり込み甲斐を向上させる追加要素だ。
アクション面でもゲームバランスの見直しや、お金や一部のドロップアイテムが近づくことで自動取得が可能になった点、ボタン長押しで、散らばっているお金を一括回収できる点、右スティックで任意の敵をロックオンできるようになった点など、プレイを快適にするためのブラッシュアップが施されている。
こういった細部にわたる数々の進化は、アーリーアクセス版でゲームの根幹部分を気に入ったプレイヤーなら、歓迎できる点だろう。逆に言えば、そもそものゲームの根幹部分に物足りなさを感じるプレイヤーは、製品版でもその印象はあまり変わらないと思う。
たとえば、本作に登場する武器は、種類こそ豊富だが、挙動は似通ったものが多い。高威力の武器を手に入れて敵を蹂躙するのは楽しいものの、その武器でもあまりHPを削れない強力な敵が登場し、そうした敵を容易に倒せるようなより強力な武器を探す――と同じことのくり返しという感は否めない。特定の武器同士のシナジー効果といったものもあまりないので、ハック&スラッシュにそうした要素を期待していると、本作は求めるものではないだろう。
とはいえ、操作感の軽快さ、敵を銃撃、爆撃で撃破していく爽快さはしっかり押さえられているし、より良い装備を身に着けてパワーアップをくり返す中毒性は大いなる魅力だ。難しいことを考えず、これらへと身を委ねられる“気軽さ”が気に入りそうなら、本作は問題なくおすすめできる。
低価格で、カジュアルな味わい。肩の力を抜いて楽しめるゲームを探しているなら、選択肢に加えてほしい。
実は最大の目玉要素!? な「犬を見る」モード
もうひとつ、本作を最もプレイしてほしい人……くり返しになるが、それはやはり“ワンちゃん好き”だ。ミッション出撃時や「ラッシュ」発動時など、さまざまな局面で聞こえる「ワオーン!」という鳴き声に、思わず頬がゆるんでしまう人もいるはずだ。
そしてそんな犬好きゲーマーにとって、アーリーアクセスから追加された要素の中で最も目玉となるのは、拠点で選択が可能な、戦闘犬たちを間近で眺められる「犬を見る」モードではないだろうか。
右スティックをぐりぐり動かせば、彼らをいろいろな方向から眺められ、左スティックを倒せば、その方向へと走り出す動きを見せてくれる。装備品も反映されるので、よりカッコイイ、またはかわいい組み合わせをいろいろと試してみるのもいいだろう。
背景やフレームもゲームの進行状況に応じて増えていき、好きな組み合わせでスクリーンショットを取り放題だ(背景もフレームもボス敵などをモチーフにしたものが多く、そのあたりは犬好きのニーズとは合っていない気がしないでもないが……)。
この「犬を見る」モードに「キュン!」と来た人こそ、真に「メタルドッグス」をプレイすべき者……と言っても過言ではないだろう。
ポチと、一度倒れたポチを拾い、蘇生させた博士との、奇妙な絆が徐々に深まっていくストーリー展開も、個人的にはイチオシポイント。当初はなにもかもに絶望し、ポチにもそっけない態度を取っていた博士が、戦闘犬たちの活躍で少しずつ元気を取り戻し、ミッション攻略のたびに言葉づかいが乱暴になっていく様子は、なんだか微笑ましさがある。
一風変わっているが、「人間と犬のバディもの」としても、本作はかなり良い味を出している。ここまでのレビューを読んで心を惹かれた人ならば、「メタルドッグス」は“最上級の癒やし”になり得るかもしれない。そしてプレイして、“刺さった”人は、ぜひ末永く可愛がってやってほしい。