DRAINUS - レビュー

2Dアクションゲームによってヒット作を飛ばしてきたteam ladybugの最新作

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『DRAINUS』は先日のINDIE Live Expo 2022で突如としてリリースされた横スクロールシューティング(以下、STG)。開発するのは日本のインディーデベロッパーteam ladybugで、これまで『Touhou Luna Nights』や『ロードス島戦記ーディードリット・イン・ワンダーラビリンスー』といった美麗なドット絵による2Dアクションゲームによってヒット作を飛ばしてきた実力派のスタジオだ。今回は同じドット絵の表現を使いながらも横スクロールのSTGに挑戦。その内容は一言で言えば、過去の名作STGをオマージュしつつも、team ladybugらしいビジュアルと演出によるカジュアルに楽しめるものに仕上がっている。だがその反面、様々なSTGの演出をつまみ食いした印象が強く、STGファンにはやや物足りなく感じられる。

帝国の圧政に苦しむ主人公が難病の父を助けるために、未来から来た謎のカエル(?)と手を組み、最新鋭戦闘機「DRAINUS(ドレイナス)」で帝国に戦いを挑むというストーリーはわかりやすい王道な展開だ。しかしながら、これまでのteam ladybug作品と同じく、各所に挟まれる映画的な演出やドット絵、エフェクトなどの描写は美しく、2Dのゲームとしてはとてもゴージャスな作りだ。特にチュートリアルから最初のステージの出発シークエンスはかなり凝った構成で作品に一気に引き込まれるようにできている。

ボムとリフレクターでずっと俺のターン。

ゲームプレイの一番の特徴は、何よりもハチャメチャに高性能な自機と言える。操作は移動の他は3つのボタンで通常攻撃、ボム、防御兵装の「リフレクター」を操作するが、なによりこのリフレクターが強力でほとんどの敵弾を無力化・吸収することができる。さらに吸収したエネルギーを利用して強力なホーミングレーザーを放つことができる。リフレクターの発動自体には特定のゲージを消費するが、このゲージは時間経過ですぐ回復するため、見た目的には弾幕系のゲームだが、細かい弾避けの技術はほとんど必要がない。どちらかといえば、後述のボムも含めて自機のリソースをいかにコントロールするかが攻略の要となる。

もうひとつの大きな特徴は敵弾から吸収したエネルギーやアイテムを獲得することで、武器、シールド、ボムといった装備を拡張することが可能な点だ。このビルドのような要素はゲーム中のいつでも一時停止して使用可能であり、自分のプレイに合わせて組み合わせることができる。いわば『グラディウスIII』の「エディットモード」をいつでも行えるような仕組みであり、前方集中の攻撃特化型、後方を含めた四方八方に弾幕が貼れる全方位型など、ステージの状況に応じて変化させることも可能だ。

自機の武装の拡張は通常攻撃のパワーアップ、リフレクターのシールド、ボムの3系統あり、それぞれのスロットに任意のものを割り当てていく。

拡張された装備はパワーアップアイテムをゲットすることで使用可能となり、逆に被弾することでパワーダウンする。被弾によるパワーダウンはSTGではよくあるタイプのものではあるが、被弾してもパワーアップした状態ならば、(それこそ『グラディウス』のように)残機を失うことはない。つまり装備を拡張して何段階かパワーアップしていれば、3、4発の被弾は余裕で耐えられるし、そもそもパワーアップアイテムは大盤振る舞いで登場する。

またボムの攻撃力もかなり強く、敵弾を消す効果もある。これまた敵機を破壊することなどで蓄積されるゲージで使用するため、ストックを気にせず何度もぶっ放すことが可能だ。最大限に拡張された状態なら敵弾をリフレクターで回避して、ボムを放っている間にリフレクターのゲージを貯めることが可能であり、「ずっと俺のターン」のような状況が簡単に実現できてしまうのだ。

自機のエクステンドも一定のスコアを獲得するごとに発生するいわゆるエブリエクステンドだ。難易度は初期状態だとイージー、ノーマル、ハードと3タイプあるが、イージーなら初心者でも簡単にクリアできるだろう。普段STGをやる人ならば、ノーマルでも初見でクリア可能だろうし、私は2回目のプレイでクリアできた。

 

しかしながら、このカジュアルなゲームプレイ自体が魅力的かと言われれば、なかなか答えるのは難しい。たしかにステージもボスも多種多様で、STGでよくあるシチュエーションを網羅する勢いで見せてくれる。いやどちらかといえば、本作はどこかで見たであろうSTGの名場面でほぼ構成されており、タイトルも含めて驚きのないオマージュやパロディの連続に感じる。そんなゴージャスなステージを超強力機体で突破するのは、初見では爽快であるものの、何度もプレイしたくなるような奥深さは残念ながら薄いのも事実である。柔軟性のある武装の拡張もSTGの経験者ならば、どこかで知ったようなものばかり。セオリーどおりの選択をすれば、すぐに使いやすい最強機体が生まれてしまうので、もう少し癖の強い武装やビルドの方向性があって欲しかった。

 

開発者もそれがわかっているのか、本作にはストーリー上の展開も含めて実質2周プレイが前提となっている。ただし2周目といっても、やや難易度が高くなるだけで本質的な違いは存在しない。一部の状況でビルドを試す余地は存在するが、1周目に稼いだ大量の残機と最大限に強化された自機ならば、ほとんど同じ攻略で突破できる。むしろ1周に1時間弱かかる本作にとっては、2周目はプレイヤーの体力勝負と言って良い内容で、技術的な奥深さを感じさせるものではない。さらに初心者目線で考えるとこの2周目は蛇足かもしれない。単に真のエンディングを見るために長く難しくなっただけに感じさせるからだ。またいくつかのシーンではミスからの復帰が困難な場所が発生し、STG経験者なら有り余る残機でゴリ押せるのものの、初心者には厳しい場面が発生する。

ただし本作は一度突破したステージなら何度でもやり直せるステージセレクトが存在する。ある意味ではステージクリア方式であり、STGファンが通常行うようなワンコインクリアを目指すタイプのゲームではないのかもしれない。また上述のように装備のエディットをいつでも行える点も、古典的なSTGの遊び方からやや逸脱した部分を持つ。これらも初心者向けのカジュアルな内容にふさわしいものではあるが、全体のステージを限られた残機で突破するという達成感が薄れてしまう部分もある。

その点、2周目をクリアした時点で解放される2つのモードは本来のSTGファンの希望を満たすものになっているかもしれない。「RIDICULOUS」と名付けられたモードは、敵弾の量が大幅に増加されるだけではなく、1回の被弾で問答無用で自機を失う超高難度モードである。「ARCADE」はいわゆる通しプレイを前提にしたモード。ステージセレクトができないだけではなく、ステージごとの装備のエディットが1回までというより古典的なアーケードSTGに沿った内容となっている。

個人的な感想で言えば、最初から「ARCADE」を選ばせて欲しかったところではある。とはいえ、ステージやボスも含めてほとんどの要素はノーマルモードと変わらないので、本作全体の印象はそれほど変わらなかっただろう(そもそも最初から自分で通しプレイをしているのだから)。

ともあれボスやステージなどのデザインはよく練られており、砂地から登場する巨大メカ、地形ギミックがある洞窟内、巨大戦艦との戦闘など初見でのプレイは飽きさせない工夫がこれでもかと詰めこまれている。ただし、全体のゲームテンションがやや一本槍であり、BGMも含めてコントラストに欠けているという印象もある。またボス戦はSTGを普段やらない人ならば新しさを感じたかもしれないが、STGファンならどこかで見たようなものばかりで、オマージュを超えてパロディ的に感じるかもしれない。いずれにせよ、このゴージャスなビジュアルと演出をもっと噛みしめられる難易度の調整や武装の多様性が欲しいと思った。

長所

  • 美麗なドット絵と派手なエフェクト
  • 爽快感のある強力な自機
  • よく練られたボスとステージ構成

短所

  • やりがいを感じさせない難易度調整

総評

『DRAINUS』は古典的なシューティングゲームの名場面を初心者に(疑似)体験させる幕の内弁当のような作品だ。超強力な自機による爽快な戦闘、美しいドット絵と派手なエフェクト、ギミック満載のボスやステージは初見のプレイヤーを圧倒するような魅力を持つ一方、難易度が極端に低いため、それらを十分に味わうモチベーションを与えてくれない。シューティングゲームの演出としての魅力を多くの人に提供することには成功している一方、既存ファンには物足りなく、このジャンルの魅力を最大限に伝えるには及んでいない。

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気軽に食べられる名作シューティングの幕の内弁当『DRAINUS』レビュー

7
Good
『DRAINUS』は古典的なシューティングゲームの名場面を初心者に(疑似)体験させる幕の内弁当のような作品だ。超強力な自機による爽快な戦闘、美しいドット絵と派手なエフェクト、ギミック満載のボスやステージは初見のプレイヤーを圧倒するような魅力を持つ一方、難易度が極端に低いため、それらを十分に味わうモチベーションを与えてくれない。シューティングゲームの演出としての魅力を多くの人に提供することには成功している一方、既存ファンには物足りなく、このジャンルの魅力を最大限に伝えるには及んでいない。
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