2022年6月26日、KONAMIが主催するインディーゲーム展示会“Indie Games Connect 2022”が、コナミクリエイティブセンター銀座(東京都中央区)にて開催された。「インディークリエイターとの“つながり”をつくる」をテーマに、ブース出展料・会場入場料ともに無料であることを掲げ話題となっていた本イベント。当日は東京都心で35度以上の猛暑日であったにも関わらず、同センターエントランスロビーから大型配信スペース“esports銀座studio”にかけて設置された会場内に、非常に多くの人々が訪れた。

 本稿では、記者が当日実際に試遊でき、惹かれたタイトルをいくつか紹介するとともに、Indie Games Connect 2022責任者・安慶名伸行氏のミニインタビューも紹介。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
Indie Games Connect 2022の様子。通常出展エリア全60スペース、銀座“Unityもくもく会”を始め講談社ゲームクリエイターズラボ、集英社クリエイターズCAMPといったサポーター団体・企業用エリア全5ブースがひしめく会場内には、11時から17時までの開催時間中、つねに人の流れができていた。コロナ禍以降に開催されたインディーゲーム関連のイベントでは見られなかった光景だ。
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“弾幕系SNS”でバズればアンチコミュニティを蹴散らせる!?

『ライクドリーマー』『コスモドリーマー』(あうとさいど)

※IGC2022『ライクドリーマー』紹介ページ
※IGC2022『コスモドリーマー』紹介ページ

 パステルポップ調のビジュアルが目を惹く2Dシューティング。いいねとフォロワー数を増やして戦況を有利に……など各システムがゆるふわに表現されているものの、実際は、中~大型機撃破時の巻き込み破壊も当然のように完備した、バリバリにアーケードライクな弾幕シューティング。腕前に合わせた難度設定で、適度にスリリングな攻防を楽しめるようになっていた。

 2015年に発足した同サークルは、すでに10タイトル近くのオリジナル作品を公開。前作『コスモドリーマー』はSteamで配信中など精力的に活動しているが、実地イベントへの出展は今回が初めてとのこと。『ライクドリーマー』の今夏の正式リリースに際し、新たな試みとしてIndie Games Connect 2022を選んだようだ。

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『ライクドリーマー』Steamサイト

弾幕をかいくぐることで紡いでいく物語

『懐旧禍乱画詞(かいきゅうからんえことば)』(きせきのなすはら)

※IGC2022紹介ページ

 『UNDERTALE』に感銘を受けて知識ゼロの状態からゲーム制作を始めたという“きせきのなすはら”氏が、1年半前からひとりで制作しているRPG。不思議な味わいがあるドットグラフィック、フィールド上のエンカウントで始まる戦闘パートは固定画面アクション(ツインスティックシューター)……など、リスペクト元のタイトルを独自に解釈・発展させた作りとなっている。体験版はおもに戦闘パートの雰囲気を味わえる内容だったが、登場キャラの特徴が戦闘パートにしっかり反映されていたりと、完成版でプレイしてみたくなる魅力を感じた。

 きせきのなすはら氏によれば、本作はステージクリアー式のゲーム進行で、全6ステージくらいを予定しているとのこと。完成はまだまだ先のようだが続報に期待したい。

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“ゲームサウンドの気持ちよさ”に特化したリズム・シューティング

『スペース豚汁』(PulseTherapy)

※IGC2022紹介ページ

 活動歴20年超のゲーム音楽二次創作サークルが制作するスマートフォン用オリジナルゲームが、初のプレイアブル出展。おおまかには、タッチ操作による横スクロールシューティングゲームだが、“プレイ開始時に楽曲(BGM)を選択”、“縦ライン上で敵を倒すとパーフェクト判定で高得点”といったリズムゲームの要素が加わっているのが特徴。ゲーム性はそこそこに、ノリのよいサウンドと派手な演出に身を任せていれば何とかなるだろう……と思いきや、選択した楽曲によっては衝突判定のある地形が出現したりと、いわゆるふつうのリズムゲームとは異なる形での“高難度の壁”が立ちはだかる点もおもしろい。

 同サークル初のゲームアプリとしてすでに3年近く制作中だそうだが「年内にはリリースしたいですね」とのことだった。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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謎の生命体と野球を通じて異文化交流!

『アナザーダービー!』(Studio Pakira)

※IGC2022紹介ページ

 簡単なマウス操作でホームラン競争を楽しめる、いつかどこかで経験したことがあるようなカジュアルゲーム。ピッチャーごとの投球の軌道のクセが強く、あっさりパターン化できるものからまるで予測不可能なものまで、バリエーション豊か。試遊版では、今回のイベント用に制作したという新規ピッチャーとの対戦を楽しめた。

 本作は2021年5月、満を持してSteamでリリースしたものの、世界的な反響はいまひとつとのこと。打球のとらえかた次第ではとんでもない飛距離のファールを打てたりと、本作ならではのキッチュな魅力があるので、今後の展開(?)に期待したい。同サークルでは現在、異世界探索ゲーム『ASTEROID』を制作中とのこと。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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『アナザーダービー!』Steamサイト

圧倒的なテキスト量で押し寄せる恐怖をひとあし先に体験

『アパシー 鳴神学園七不思議』『メビウス・アドベンチャー(仮)』(メビウス)

※IGC2022『アパシー 鳴神学園七不思議』紹介ページ
※IGC2022『メビウス・アドベンチャー(仮)』紹介ページ

 ベテランゲームクリエイター・飯島多紀哉氏が監督・シナリオを務めるノベルゲーム『アパシー』シリーズの最新作が、Nintendo Switchの実機で動作する体験版としてプレイアブル出展。学校の怪談などをモチーフにしたホラーストーリーと登場人物の描写に定評がある同シリーズだけに、開場直後から熱心なファン(女性メイン)が押し寄せていた。

 同ブースには、『メビウスアドベンチャー 除霊探偵シノブ(仮)』のデモ版も出展。大勢の敵も一気に倒せる小気味よいローグライト・アクションとしての片鱗を味わえた。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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森羅万象あらゆるものは武器となる!

『百科ガール(仮)』(mumimumi)

※IGC2022紹介ページ

 Unityインターハイ2018など数々の賞を受賞したワイヤーアクション『モチ上ガール』の作者・mumimumiが手がける最新作。1ステージごとにひとつ用意された手持ちアイテムの特性を生かしてゴール地点まで進むジャンプアクションゲームで、出展バージョンでは5ステージ・5アイテムの使用感を堪能できた。各アイテムは機能面のみならず、使用時の演出面もかなり凝ったものに。ステージ1のアイテム“郵便ポスト”を持ってダッシュ移動した時の、手紙を大量にばら撒いていくさまは、何ともいえないカタルシスがあった。

 現在の開発状況を尋ねると、「アイテムが5個なので5パーセントですね」とmumimumi氏。本作が“百科”ガールのタイトルで制作されているうちは、あながち冗談とは言いきれなさそうだ。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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地球の反対側から贈られてきた、日本カルチャーへのラブレター

『Shikon-X』(一筆社)

※IGC2022紹介ページ

 チリとアルゼンチンを拠点とするインディーゲームスタジオ“Kindermann”制作の、スペースアドベンチャーゲーム。物語の進行とともにさまざまなタイプのミニゲームをプレイする内容で、ブロック崩し風のディフェンスパートからシューティングゲーム形式のオフェンスパートの移行がシームレスだったりと、一風変わった演出が施されている。ゲームバランスはやや粗削りながら、1980年代日本のアニメ・ゲームカルチャーへの愛情が随所で感じられた。

 現在はSteamストアにてデモ版を配信中。2022年内の正式リリースに向けてのさらなる調整が期待される。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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『Shikon-X Astro Defense Fortress』Steamサイト

“ガラパゴス・ジャパン”の魅力を世界に配信!?

『夕鬼』ほか(コーラス・ワールドワイド)

※IGC2022『夕鬼』紹介ページ
※IGC2022『虚無と物質の彼女』紹介ページ
※IGC2022『レトロゲームエイリアンズ』紹介ページ

 インディーゲームパブリッシャー・コーラスワールドワイドは、昨年プレイステーション5/4版、Xbox Series X|S版、Xbox One版、Steam版がリリースされたホラーアドベンチャー『夕鬼』のNintendo Switch版(7月28日配信予定)を出展。合わせて、同社のレーベルから独立を発表したばかりの“わくわくゲームズ”からは、『虚無と物質の彼女』『レトロゲームエイリアンズ』の体験版が出展された。

 荒廃した、ごくふつうの日本の地方都市の街並みを自転車で走り回れるのが特徴の『虚無と物質の彼女』。度重なるクオリティーアップによって強化されたグラフィックを、Nintendo Switchの実機でも楽しむことができた。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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“あるひとつの感覚”を頼りに世界を歩き回る体験

『Recolit』 ほか(Image Labo)

※IGC2022紹介ページ

 Indie Games Connect 2022のキービジュアルを手がけたイラストレーター・むじ氏が中心となって制作している2Dアドベンチャーゲーム。夜の街並みを明かりを頼りに進んでいくパズル性の強い内容で、温かみのあるビジュアルもあってか、多くの女性来場者が足を止め、試遊していた。

 同ブースではむじ氏が制作に携わった、“音”をテーマにした短編アドベンチャーゲーム『わだつみのこだま』の出展も。もともとは今年5月開催のゲームジャム用に制作されたもので、unityroomにフリーゲームとして公開されてから7月9日には英語対応のSteam版のリリースが予定されている。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
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『わだつみのこだま』unityroomページ

恐怖は何度でもよみがえる

『QuietMansion1 Demo』(K App.)

※IGC2022紹介ページ

 7月23日にSteamでのクローズドベータテストを予定している、一人称視点のホラーアドベンチャーゲーム。『バイオハザード4』に影響を受けてゲームを作り始めたという個人開発者・K App.氏の初期作のセルフリメイクで、4K・16bit HDR対応のグラフィックと立体音響システムを実装している。

 明るい照明のもと、つねに喧騒に包まれている会場内でデモ版をプレイした限り、その醍醐味を十分に味わえたとは言いがたかったが、実地イベント初参加のK App.氏は、さまざまなゲーマースキルのプレイヤーの反応を間近で見られたことが、大いに収穫になったとのこと。

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『QuietMansion1(ケンゴハザード リメイク)』Steamサイト

Indie Games Connect 2022責任者・安慶名伸行氏ミニインタビュー

 開催期間中の終わりがけの多忙な最中、本イベントの責任者であるコナミデジタルエンタテインメント・安慶名伸行氏にお話を伺った。

――入場制限がかかるほどの来場者数を迎えたことについての、率直な感想を。

安慶名私も最近こうしたイベントには参加していなかったので「人ってこんなにいるんだな」と改めて思いました(笑)。「これくらい来てくれたらいいな」と思い描いていた状態よりもすごいものが目の前で繰り広げられたという印象です。

――会場を見回して気づいたこと、出展者から受け取ったフィードバックは?

安慶名お子さん連れが結構いらっしゃったことが、よかったなと思っています。出展者さんの意見としては「きれいで立派な会場でできるのはテンションが上がる」というお話を、いろんな人から間接的に聞いています。

――ブースひとつぶんのスペースにゆとりがあり、通路も比較的移動しやすかったりといったところも好印象でした。これで無料というのは、まさに破格です。

安慶名スペースのサイズに関しては他のイベントを参考にさせていただいたのですが、そう言っていただけるのは嬉しいですね。出展料や入場料の無料に関しては、そこはもうサポーター企業の皆さんのお力添えがあって実現できたことなので、私たちも感謝しています。

――気が早い話ですが、第2回の開催については?

安慶名今回の経験を生かしてもっと新しいこともできると思っているので、私個人としては続けていきたいです。セミナーや相談会に関しては、ほかの展示会とは違う面を打ち出せた実感があります。これらが結果的にクリエイターさんのニーズに本当に応えるものになったかは後々わかってくると思いますが、今後要素を付加する際も“クリエイターズ・ファースト”の視点は外さずにしていきたいですね。

【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち
【Indie Games Connect 2022リポート】大盛況に終わったKONAMI主催のインディーゲームイベントでキラリと光った良作たち

【記者所感】リアルイベントは、自身の内側に広がっている世界に“確かなかたちといろどり”を与える大規模な仕掛け

 大手ゲームメーカー主催のインディーゲームイベントということで、これまでのイベントでもよく見かけるタイトルが多数出展されている一方、「今回(Indie Games Connect 2022)が初めてのリアルイベント参加です」という出展者も多かった印象。コロナ禍中にゲーム制作を開始した新鋭デベロッパーが、ごく自然な流れで参加表明したケースもあれば、コロナ禍以前から変化した価値観にしたがいリアルイベントの参加に踏み切った……というケースもあり、さまざまな層のデベロッパーが一堂に会する、絶妙なタイミングでの開催だったのではないだろうか。

 「イベントは人とゲームの出会いの場」というのが、インディーゲーム関連の実地イベント取材歴9年の記者としての実感。それはIndie Games Connect 2022でも変わらなかった。しかし今回は、制作中のゲームを出展するデベロッパーのひとりとしても参加したことで、新たな思いが加わった。ブース出展に関してはパブリッシャーさんに全面的にお任せしての参加ながら、配布用グッズの減り具合や、近くを通りかかると必ず試遊用PCにプレイヤーがついていた状況から、自作ゲームがどれだけ関心を持たれているかを“現実空間内の出来事”として確認できた。

 イベントの終わりがけ、私に直接挨拶するためブースで待っていた方が、いかにゲームが自分の好みにマッチしているかについて熱く語ってくれた出来事を含め、「これまでやってきたこと・ネット経由で発信してきたことは、ちゃんと実体のある人々に届いていたんだな……」と、改めて実感した。リアルイベントは、単に物理的制約に縛られた限定的機会というだけでなく、自身の内側に広がっている世界に“確かなかたちといろどり”を与える、大規模な仕掛けでもあるのだ。

 コロナ禍以降、整理された情報をタイムテーブル形式で流すスマートなオンラインイベントが増えた中、あえてリアルイベントを新規で立ち上げたコナミデジタルエンタテインメントの英断に敬意を表しつつ、こうした機会が各地で“復活”していく情勢変化を願ってやまない。