Graze Counter - レビュー

「危険行為推奨系弾幕STG」を謳うがその危険度はいかに!?

「危険行為推奨系弾幕STG」と名乗るも実は初心者向け?「Graze Counter」レビュー
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「Graze Counter」は濃い同人ゲームを無謀ながらもSteamから世界にお届けする同人ゲーム専門パブリッシャーHenteko Doujinがリリース、びっくりソフトウェアが開発する「危険行為推奨系弾幕STG」である。

弾幕STGはともかく、「危険行為推奨」とは何だろうと思う人は多いだろう。端的に言えば、シューティングゲーム(以下STG)においてリスクとなる行動――敵に近づく、敵弾に近づく、画面上部に上がるなど――を推奨するシステム――スコアが上がる、(何らかの)ゲージが上がる、反撃できるなど――を有するタイプのSTGである。

この言葉は本来ネットジャーゴンなようなもので、公式に使われることはほとんどなかった。だが歴史を紐解いてみれば、そういった「危険行為推奨」とも呼べるシステムはSTGには古くから存在する。例えば、1989年の「オメガファイター」では至近距離で敵を破壊すると高倍率という画期的システムが採用されたことで知られる。危険を伴う至近距離での撃ち込みがスコアにつながるこの手のシステムは「式神の城」のテンション・ボーナス・システムや「ケツイ」の倍率チップなど、ある程度、一般的なものとなっていった。

また人気のある危険行為としては「カスリ(グレイズ)」がある。この種のシステムで最も有名かつ異彩を放つのは2000年の「サイヴァリア」のBUZZシステムだろう。「サイヴァリア」では敵弾とのカスリにより自機がレベルアップし、その際に無敵時間が発生する。その無敵時間で一見、回避不能と思われる密度の濃い弾幕をくぐり抜ける様は他のSTGではあり得ない光景だった。そして敵弾との接近を前提としたこのカスリのシステムは当時、隆盛を極めた弾幕STGとの相性が良かったため、多くのゲームに採用されたのである。

本作「Graze Counter」もその名前の通り、カスリ(グレイズ)を大々的にフィーチャーしている。迫りくる敵弾を自機にカスらせてゲージを溜め、そのゲージで強力かつ弾消し効果があるカウンターレーザを発射(ゲージはMAXでなくても可能だが、MAXだと無敵になる)。さらに消した弾で別のゲージをためて、ブレイク(「怒首領蜂大往生」でいうところの「ハイパー」)で大量の得点を狙うというのがコアのコンセプトだ。

操作はオーソドックスであり、ショットの他、カウンターレーザー、ブレイクの基本3ボタンで操作を行い、オプションで低速移動をアサインできる。とはいっても、後述するように本作の自機はもともとの移動速度が遅く、低速移動を使う場面はあまりないと言える。

自機は全部で8つも用意されているが、最初から使えるのはTYPE-1「G-01/R エイプリルディバイダー」とTYPE-2「G-02/B フリーダムダンサー」の2体のみ。それぞれのパイロットには制服姿の美少女(?)が搭乗しているが、このあたりの世界観については同人STGのお約束として深く考えないことにしよう。

TYPE-1「G-01/R エイプリルディバイダー」の銀寄卯月(ぎんよせ・うづき)とTYPE-2「G-02/B フリーダムダンサー」の古山皐月(ふるやま・さつき)。両者ともに女性に見えるが……。

前者が移動速度は遅いワイドショット、後者が移動速度が速い集中ショットという弾幕STGでは定番の組み合わせ。一般に弾幕STGとしては前者が初心者向けの機体として考えられるが、本作は後者の方が簡単に思えた。というのも上述したように自機の移動速度がかなり遅めに設定されており、初心者がTYPE-2を使っても十分制御可能だ。むしろ敵もボスも硬めにできているため、積極的に打ち込むTYPE-2のほうが攻略的にもゲームプレイ的にも楽しいだろう。

自機セレクトの他に3つのパッシブスキルが選択できる。だがこれもクリアを狙うなら「オートシールド」一択だと思われ、それほどゲームプレイに影響を与える自機の構成はないように思える。その他の機体はプレイと共にアンロックされるが、ブレイクシステムがなかったり、極端な近接攻撃性能を持っていたり、ややピーキーである。そのため、今回のレビューでは上述した2機を前提として判断しており、他の機体についてはお遊び程度として考慮した。

カウンターからのブレイク!か・ら・の!カウンター!

カスリをシステムのコアに据えただけあって、本作の自機のカスリ判定は当たり判定に比して極端にデカい。当たり判定はコックピットあたりにのみあるが、カスリ判定は大体、自機の見た目通りの大きさだ。さらに敵弾だけではなく敵機本体にもカスリが可能だったり、同じ敵弾に何度もカスリ判定があったり、まさにカスリの大盤振る舞いだ。

結果としてカスリによって溜められる「カウンターゲージ」は数秒でマックスとなり、弾消しかつ自機無敵となる強力なレーザーを頻繁に発射することが可能。さらに敵弾や敵機を消すことで出現する星アイテムで「ブレイクゲージ」をマックスまで溜め、広範囲に敵を攻撃できる「ブレイクモード」を発動しよう。

ブレイクモード発動時にも弾消しが発生し、強力なワイドショットで敵機を封殺できるため、本作は見た目の弾幕の濃さに比して実はそれほど難しくない。ブレイクモード時にもカウンターゲージを溜めることができるため、効率良くカスリと弾消しを循環させれば「レーザー>ブレイク>レーザー」という「ずっと俺のターン」が可能となる。

本作の様々なところに同人STGのオマージュとも思わせる演出がうかがえる。とりあえずあのアイテムの真ん中に入ってみたい。

その意味では本作は「危険行為推奨系弾幕STG」と称するわりには、それほど危険ではない。実際にはカスルという危険行為以上に2つのゲージのリソース管理が重要となり、「避けるよりも殺せ」というコンセプトを強く感じさせる。似たような2つのリソースを用いるものとしては「RefRain ~prism memories~」などの同人STGの系譜を強く感じさせる。

難易度は「NOVICE」「ARCADE」「EXPERT」の3段階用意。「NOVICE」は本当に初心者向けと言ってよく、STGをプレイする人なら初見でクリア可能だ。「ARCADE」も実際のアーケードシューティングに比べれば10分の1くらいの難易度。筆者はいくつかのアーケードSTGをワンコインクリアできるくらいの腕だが、本作は5、6回のプレイで全体のパターンとシステムをなんとなく把握すればあっさりとクリアできた。「EXPERT」は尋常じゃない弾幕が出て来る。本来の意味で危険行為推奨なのはこのレベルであって、危険行為推奨というキャッチコピーに惹かれたひとはここからプレイしても悪くないだろう。

EXPERTだとこの密度だが、処理落ちも発生するため、意外と生き残れる。

全体的に初心者に優しい、悪く言えばヌルい難易度という印象を受けた。自機のエクステンドも難易度に問わず、エブリ(一定スコアごとにエクステンド)設定となっており、低難易度に拍車をかけている。さらにカスリでゲージを稼ぎ、カウンターで星アイテムを稼ぎ、さらにブレイクでスコアを稼ぐという本作の基本的な戦術はクリア重視でもスコア重視でも共通である。そのため「危険行為推奨系弾幕STG」というコンセプトはその字面とは裏腹に初心者に優しく、システム全体が難易度を低い方向へと意図的に導いているようにすら感じる。

初心者でもクリア可能かつスコア稼ぎが楽しめるという調整はなかなか好感が持てるものだ。だがその一方、クリア重視もスコア重視も同様のスタイルでのプレイとなり、機体が8つもあるとはいえ、ややリプレイ性にかけるように思える。自機セレクトやスキルの構成、難易度を変えても基本は自機狙いの敵弾をちょん避けしながらグレイズを稼ぎ、厳しい弾幕はレーザーやブレイクで弾消しして切り返すといったプレイイングが主体となるのだ。

レトロな16bit風のドット絵やサウンドはインディーならではの味わいで、ゲーム全体の作り込みは素晴らしい。機械的な敵機とシュールなキャラクターの対比も同人STGらしい雰囲気に満ちており、懐かしい80年代風のOPムービーも必見。通常のゲームモードのほか、ステージごとのプラクティスモード、特定のお題を次々とクリアしてゆくミッションモードなど、ボリュームも申し分ない。メニューやオプション周りには少々、不親切な部分がある。だが、国産のSTG専用ゲームエンジンShooting Game Builderを使用した作品としては、むしろその作り込みには感心するレベルのクオリティと言えるだろう。

長所

  • お手軽な爽快感
  • 豊富な自機とキャラクター
  • ビジュアルとサウンドの統一感
  • 男の娘

短所

  • プレイイングのバリエーション
  • やや大味なレベルデザイン

総評

「危険行為推奨系弾幕STG」と謳いながらもその実は初心者にも優しいリソース運用型の攻めのSTG。カスリのシステムを使いこなせば、初心者でも「ずっと俺のターン」で大量の弾幕を圧殺可能。その分、プレイイングの幅は狭く、中級者以上にはやや大味で、アイテムやランクシステム、敵編成にはさらなる調整の必要性が感じられる。

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  • Platform / Topic
  • PC

「危険行為推奨系弾幕STG」と名乗るも実は初心者向け?「Graze Counter」レビュー

7.8
Good
「危険行為推奨系弾幕STG」と謳う本作はSTGの危険行為のひとつであるカスリ(グレイズ)をコアコンセプトにしている。2つのゲージをうまく使い、激しい弾幕を乗り越えるゲームプレイはお手軽ながらも爽快だが、プレイイングの幅は少ない。
Graze Counter
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