アカとブルー - レビュー

情熱と意地が産んだスマートフォン専用弾幕シューティング

スマートフォン専用シューティング「アカとブルー」レビュー
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シューティングゲーム(以下STG)をめぐる状況は変化しつつある。アーケードから始まったその遺伝子は細々としたものであるが、コンソール、PC、スマートフォンと様々なプラットフォームに受け継がれ、拡散されてきた(もちろん、コンソール以前のホビーパソコンというもうひとつの故郷はある)。アーケード時代の黄金期に比べれば、確かにニッチなジャンルだが、まだまだその魅力は衰えておらず、熱心なファンと情熱的な開発者は存在する。

本作「アカとブルー」はそんな情熱を捨てきれない2人のクリエイターが開発したスマートフォン専用STGだ。スマートフォンというプラットフォームはその操作性からして、必ずしもSTGに向いているとは言い難い。しかしながら、本作は「誰もが気軽に遊べる普通さ」を徹底的に意識した結果、プラットフォームとして最も普及したスマートフォンを選択し、現代のグラフィックスの水準と演出、そして最高品質の操作性とUIで作り上げたSTGなのだ。

操作とシステムはシンプルでありふれたものだ。攻撃はオートショットであるため、スライドで自機を移動して画面の2点タッチでボムを撃つだけである。一点、オリジナリティがあるとすればボムの性能だろう。ボムは敵への撃ち込みなどでゲージがたまり、レベル1~5までのボムを使用できる。レベル1では周りの敵弾を消す効果しかないが、レベルが上がるに連れて射程と範囲が大きなボムを撃つことが可能となる。

ボムで大量のスコアアイテムを!
再装填と即座にボムという好循環を生み出すことが、ゲームプレイの最大の魅力

このボムには敵弾をスコアアイテムに変える効果があり、さらに敵弾や敵機を破壊することでゲージが再装填される。結果、うまく敵弾と敵機をボムで巻き込むことができれば、即座に次のボムを撃てる。この再装填と即座にボムという好循環を生み出すことが、本作の激しい弾幕の嵐を攻略するために重要なテクニックであり、ゲームプレイの最大の魅力である。操作性は極めてスムーズでスマートフォンに特化されている。細かい調整もオプションから変更できるのもありがたい。

機体は拡散ショットのファイアバードと集中ショットのブルーアウルの二種類。それぞれパイロットとしてアカ・シンク、ブルー・サーニが搭乗し、選んだ機体によって異なる会話シークエンスをステージ上で繰り広げてくれる。ステージ進行と共に展開する会話は開発自身が「30分のアニメを見る感覚」と語るとおり、ロボットアニメを彷彿させる熱い内容。システムボイスが聞き取りにくいという問題はあるにしろ、なかなか楽しませてくれる(ストーリーの音声はオプションでオフにすることは可能)。あまり告知されなかったようだが、ストーリーは「エウレカセブン」などで有名なストーリーライダーズが関わっている。

他方、セリフやストーリー以外のこの2つの機体の差は少ない。通常ショットを別とすれば、一番の違いはボム性能にあり、アカは前方へ、アオは機体の進行方向と逆方向にボムが発射される。その他の仕様はほぼ同じのようで、ボムが敵弾や敵機を巻き込むとスローになり、より多くのボムを巻き込めるの特徴も同様だ。

ステージと機体選択のUIも必見
本作は全5ステージを通してのプレイ、いわゆる「通しプレイ」という概念が存在しない

機体性能からすれば、明らかにアカが初心者向きだと言える。ブルーは通常攻撃範囲が狭いうえに、うまく自機の移動を調整しないと明後日の方向にボムを飛ばしてしまう。とはいえ、筆者は圧倒的にブルーでのプレイが楽しかった。それはブルーの方がユーザーの介入できる要素が多いからだろう。左右に角度を付けられるボムは慣れないうちは事故の原因となる。しかしながら、左右に移動しつつ端から斜め上方にボムを繰り出すと、STGで必須のテクニックである切り返しが非常に楽になる。それに比べると、アカでのプレイは行動が消極的になり、敵弾に耐える場面が多くなる。いずれにせよ、基本となるシステムがシンプルだけに機体ごとの差異は少ない。スコアアタックを別にすれば、ややゲームプレイの多様性は薄く感じられる。

以上の弾消し可能な強力なボムが本作の一番の特徴だが、その他にも過酷な弾幕をかいくぐるための初心者向け仕様がある。第一に本作は全5ステージを通してのプレイ、いわゆる「通しプレイ」という概念が存在しない。プレイヤーはそれぞれのステージを3つの残機でクリアすれば良く、途中のステージでミスしても何度でも同じステージからリトライが可能なのだ。アーケードにその源流を持つSTGにとってプレイヤーの最初の目標は基本的にはワンコイン(ノーコンティニュー)での通しクリアであった。しかし、本作はその要素を大胆に切って捨てたのだ。

もうひとつの大胆な初心者救済はオートボムである。こちらは設定から変更して使用する機能だが、ボムゲージが1以上溜まっていれば、敵弾に触れれば自動的にボムが発生するという仕組みだ(通常のボムもマニュアルで発動可能)。オートボムというシステム自体はケイブの弾幕STGなどにも存在するが、本作のボムはストック制ではなくゲージ制で何度も使える。そのため、オートボムの恩恵は大きく、後半のステージに関してはあるとないとでは難易度が大きく変化するのだ。

クリアだけを目指すならば本作の一番の魅力であるボムによるスコア稼ぎを無視したプレイが中心となる

このような大胆な初心者救済措置には賛否両論があると思う。「誰もが気軽に遊べる普通さ」という間口の広さを目指したことは理解できるが、全体のバランスはややピーキーに仕上がっているように思える。第一に通しプレイがないと言っても、本作は決して簡単なゲームとは言えない。後半ステージはおそらく残機が3つあってもクリアできないプレイヤーもいるだろう。

オートボムに関してはさらに問題を感じる。というのは、後半面の激しい弾幕はオートボムを使うことでまったく異なる立ち回りが可能となるのだ。本作において最も危険度が高い瞬間はボムを発動後の数秒である。一度ボムを発動すれば、再度ボムが使用できるまで弾幕を避けなければならず、射程が長い高レベルのボムほどその危険性が高い。しかしながら、オートボムはその仕様上、どれだけゲージがあっても瞬時に弾消しとゲージ回収が可能なレベル1のボムが発生する。結果として、弾幕が十分に濃い後半ステージに限れば、ボムをまったく使用せず、オートボムに頼りきればかなり簡単にクリアすることが可能となる。特にステージ5の中ボスやラスボスで苦戦するプレイヤーにとっては、これが唯一の攻略法になってくる。

通しプレイを捨てた各ステージの攻略、弾避け不要のオートボムといった初心者救済措置によって、クリアだけを目指すならば本作の一番の魅力であるボムによるスコア稼ぎを無視したプレイが中心となる。もちろん、一部のスコアラーならばリスクを顧みず、レベル5のボムを連発するプレイを見せてくれるだろう。だが「誰もが気軽に遊べる普通さ」を目指しながら、本作の一番の魅力をスポイルすることになるのはやや本末転倒だ。例えば、スコアによるエクステンドを採用すれば、クリア目的でももっと積極的なプレイをしたように思える。

特にUIや演出(ボイスを含む)ではスマートフォンのSTGとしては最高峰

とはいえ、本作の基本的な品質は高い。特にUIや演出(ボイスを含む)ではスマートフォンのSTGとしては最高峰に位置する。特にUIの作り込みは素晴らしく、スタイリッシュかつ使いやすいメニュー周り、スムーズにアニメーションする画面遷移など、UI部分だけでも一見の価値がある。激しく動く背景3Dやステージの展開と同期した会話演出もゲームプレイのスパイスとしてうまく効いている。本作が本当に「誰もが気軽に遊べる普通さ」を持ったSTGかどうかはわからないが、「30分のアニメを見る感覚で遊んでもらいたい」という目論見は達成されただろう。

長所

  • 爽快なボムシステム
  • スムーズな操作性と細かなオプションでの調整
  • ボイスを含めたステージとシンクロした演出

短所

  • 自機によるプレイのバリエーションの少なさ
  • 消極的なプレイを生み出すオートボムの仕様

総評

「誰もが気軽に遊べる普通さ」を目指し、現代のグラフィックスの水準と演出、そして最高品質の操作性とUIで作り上げたスマートフォン専用STG。爽快なボムシステムは派手で過酷な弾幕をひねりつぶす楽しみを初心者にも与えてくれる一方、ステージごとの難易度やオートボムの仕様はその楽しみをスポイルしている。とはいえ、激しく動く背景3Dやステージの展開と同期した会話演出は「30分のアニメを見る感覚」を与えてくれる。

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スマートフォン専用シューティング「アカとブルー」レビュー

8.8
Great
ジャンルへの情熱が生み出したスマートフォン専用シューティングゲーム。爽快なボムシステムを採用しつつ、現代の水準の3Dの背景とボイス演出、UIの作り込みと高品質にまとまった作品。
アカとブルー
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