移植と新作、2Dシューティングゲームは隆盛しているのか?

2Dシューティングのリメイク・リバイバルの流れから読み解く

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今秋の映画業界はスティーブン・キング原作のホラー映画「IT」がリメイクされたことや、1982年に封切りされたSF映画の金字塔「ブレードランナー」が35年の時を経て続編作「ブレードランナー2049」として甦るなど、リメイク・リバイバルの流れはリアルタイムで経験したアラサー・アラフォー世代のみならず、後追いでファンになった二十代層をも楽しませている。こうした流れは映画に限った話ではなく、アニメに関していえば「魔法陣グルグル」のリメイク版が今夏から放映され、来年には「カードキャプターさくら」の新シリーズが控えている。

ゲームの場合、過去にPS3やXbox 360で発売したタイトルを「HD EDITION」として現行機でも展開しているほか、配信済みDLCの収録や独自のアレンジを付け加えてNintendo Switchへ参入するケースも多い。そんな中、こうしたリメイク・リバイバルが特に顕著なのが「2Dシューティングゲームの移植」だ。

STG移植タイトル

  • 「バレットソウル -インフィニットバースト–」(PC) 8月1日
  • 「アケアカNEOGEO ソニックウィングス2」(PS4/ Nintendo Switch/Xbox One) 8月3日
  • 「ストライカーズ1945」(Nintendo Switch)
  • 「ガンバリッチ」(Nintendo Switch) 8月3日
  • 「レイクライシス」(iOS/Android) 8月9日
  • 「アケアカNEOGEO 作戦名ラグナロク」(PS4/ Nintendo Switch/Xbox One) 8月10日/8月31日/7月20日
  • 「雷電V Director's Cut」(PS4/PC) 9月14日/10月11日
  • 「バトルガレッガ Rev.2016」(Xbox One) 9月29日
  • 「魔法大作戦」(PS4) 11月2日
  • 「ゲーム天国 CruisinMix」(PS4/PC) 11月30日

今夏から今冬にかけて、リリース当初は単独配信だった「バレットソウル -インフィニットバースト-」「雷電V」などが他機種へと展開するケースと並行して、1980~1990年代のアーケード用シューティングゲームの移植が活発している。

PS4、Xbox One、Nintendo Switchで「アーケードアーカイブス」のDL配信を展開しているハムスターと日本一ソフトウェアは忠実な移植をモットーとし、「スコアアタックモード」「キャラバンモード」以外の独自要素を省いていることから、1タイトルあたり平均800円という価格を設定している。また、11月10日からはアイレムソフトウエアエンジニアリングのアーケードタイトルを今後リリースすることを発表。H・R・ギーガーのデザインを模したグロテスクなグラフィックで一世を風靡した「R-TYPE」や、綿密なパターン構成による攻略でゲーマーたちを刺激した「イメージファイト」といった有名タイトル以外にも「R-TYPE LEO」や「Xマルチプライ」といったタイトルの初移植にも期待ができそうだ。

昨年末に自社プロジェクト「M2 Shot Triggers」を発足したM2は第一弾タイトル「バトルガレッガ Rev.2016」を発売。以降は「弾銃フィーバロン」「魔法大作戦」と立て続けに発表し、今後のラインナップにはケイブの弾幕シューティング「ケツイ 〜絆地獄たち〜」を予定している。フレーム単位で差を詰めるこだわりや独自の遅延対策を施す徹底ぶりに加え、初心者モードやオリジナリティあふれるアイディアを盛り込んだアレンジモードの追加などをウリにしているのが特徴的だ。特に「魔法大作戦」においては、2P側の自機をオプション機のように操作できる「DUALモード」は、難易度のカジュアルさと相まってアーケードモード以上に楽しんでいるプレイヤーも多いことだろう。

 
「魔法大作戦」(1993/2017)

10年・20年越しに家庭用ハードへ初めて移植が行われたことにより、ゲームセンターでリアルタイムに遊んでいた層だけではなく「タイトルは知っているが遊んだことがない」という若手プレイヤーにとっては“時代を超えた新作”として受け入れられている側面もある。また、過去にセガサターンやプレイステーションに移植されたタイトルであっても、ハードの故障や経年劣化によってディスクが読み込めずに遊べなくなった問題を解決しているだけではなく、アーケード版との差異を一切感じられなくなっている移植度の高さはこれまでに収集してきたアーケードゲーム基板を手放す機会に恵まれたと個人的に思っている。

移植タイトルが盛り上がる一方で、中小メーカーによる新作・続編タイトルもリリースされている。iOS/Android用の「アカとブルー」(タノシマス)が8月に発売され、9月には7年ぶりの続編として「旋光の輪舞2」(グレフ/キャラアニ)をPS4とSteamにて展開。Nintendo Switch向けには「RXN -雷神-」(ガルチ/面白法人カヤック)が12月に発売することが決定している。

「RXN -雷神-」(2017)

Steamにおいては俄然インディー・同人製作の新作を見かけるようになり、「Graze Counter」(びっくりソフトウェア)、「Danmaku Unlimited 3」(Doragon Entertainment)、「BLUE REVOLVER」(Stellar Circle)以外にも「東方Project」で知られる同人サークル「上海アリス幻樂団」は11月17日から「東方天空璋 〜 Hidden Star in Four Seasons.」を配信し、イベントや同人ショップでの頒布・流通という枠組みを超えようとしている。同人やインディーズによる製作が目立っているのはいまに始まったことではなく、X68000向けにリリースされた「超連射68K」(ファミベのよっしん氏)やWindows向けの「神威」(SITER SKAIN)といった商業タイトルに見劣りしないタイトルも生み出されたことや、先述の「東方Project」もPC-98の時代から20年以上に渡って第一線で活躍していることから、どれだけ同人文化に根付いているかがおわかりだろう。

「超連射68K」(1995)

しかし、いまだに「PCではなく家庭用ハードで遊びたい」と嫌悪感を示す者も多く、スマホの場合は「指で自機が隠れてしまうのでレバーとボタンで遊びたい」という意見も散見しているが、見方を変えれば「ジャンルとしての古さ」をそれだけ浮き彫りにしているということにほかならない。とはいえ、ゲームセンターや家庭用ハードでレバーとボタンというデバイスを通じて慣れ親しんできたジャンルゆえに、こうした意見が挙がるのも無理はない。スマホ用に移植されたアーケードゲームアプリも“仕方なく“タッチ操作に合わせたものが多いように見受けられることから、タッチやジャイロといったデバイスでも違和感なく、かつ今までにないゲームデザインはクリエイターにとって見て見ぬふりはできない課題になるだろう。もちろん、我々プレイヤーもそうした操作に対して積極的に順応する必要がある。

レバー、そしてボタンというデバイスに焦点を当てると、アーケードシーンにおける2Dシューティングの盛り上がりは取り残されたままである。現在、各ゲームセンターで稼働しているタイトーのビデオゲーム筐体用配信サービス「NESiCA×Live 2」には対戦格闘ゲームの新作が配信されていることに対し、未だアーケードにしがみつく2Dシューティングプレイヤーだと自認したうえで焦燥し、嫉妬している。弾幕シューティングの主だったケイブも2012年にリリースされた「怒首領蜂最大往生」を最後にアーケードから手を引いており、「クリムゾンクローバー」(四ツ羽根)が「NESiCA×Live」に逆輸入された以降は音沙汰がないことに物寂しさを感じずにはいられない。

「クリムゾンクローバー」(2010/2013)

こうした状況下でエムツーが「バトルガレッガ Rev.2016」を皮切りに、秋葉原のゲームセンター・HEYにて実施した「フィールドテスト」の盛況を目の当たりで体験している。2Dシューティングゲームを好むプレイヤー層が厚いことや、ニコニコ生放送・FRESH!でのプレイ配信、期間限定稼動というお祭り感などが手伝ったところはいくつかあったが、これもアーケードに対する「還元」だとするならば喜ばしい限りだ。各地で相次ぐゲームセンターの閉店と販路縮小への不安視は避けられないが、「ビデオゲーム」の新作が出ない現在、時代を経て幾多のゲームが登場したことで新たな発想によるアレンジが組み込まれた旧作のアーケード化にも期待したい。

「雷電」(1990)

90年代初頭のゲームセンターには対戦格闘ゲームのプレイ待ちや仕事帰りのサラリーマンなどに受け入れられた「雷電」という救世主があった。決して低いとはいえない難易度に上手いプレイヤーたちは1コインクリアを目指し、シューティングゲームを普段から好まないプレイヤーには「ほどよい満足感」を与えたことに成功し、遊ぶ側の腕前を問わずに100円で楽しめる価値を同等に与えた。連射装置に頼らずとも、ショットを撃って敵機を撃破するというシンプルな爽快感とともに、「2Dシューティングとしての面白さ」を研究して丁寧に作りこまれた「雷電」はとてもカジュアルだったといえよう。

「弾幕」以降に大きな進化を遂げることなく、「爽快感」よりも「難しい」というイメージを拭うため、家庭用ハードやPC・スマホで移植や新作が隆盛しているいまだからこそ、2Dシューティングゲームというジャンルが生まれ育ったアーケードシーンへの見返りとして第二の「雷電」となり得るタイトルを求めるのは独りよがりすぎるだろうか。

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