核爆弾を地球まで運び「コンサート」を成功させろ 横シュー+FTLの太陽系横断ツアー『Fission Superstar X』

核弾頭級(実物)スーパースターのファースト&ラストツアー

核爆弾を地球まで運び「コンサート」を成功させろ 横シュー+FTLの太陽系横断ツアー『Fission Superstar X』
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ここは太陽系の果て、惑星エックス。狂気の天才科学者ドクター・レオポルドは究極の核爆弾をつくりあげた。そして、核爆弾のささやきを耳にした。

“コンサート”を開きたいわ。
冥王星から地球までの太陽系横断ツアーよ。

核爆弾=愛娘=セリーヌ・フィッションの夢をかなえてやりたいが、誰に運ばせればよいか思いつかない。そうだ、自分のクローンに任せよう。こうして宇宙でいちばんアブないパイロット、クローンエックスは誕生した。

 

そのクローンエックスだが、腕前はよくないので仕事から降りてもらった。今は代わりに雇ったパイロットが船を飛ばしている。責任の所在はともかく、ツアーは順調だ。コンサートは回を増すごとに観客を集めている。ニュースもSNSも、いまや太陽系が彼女に首ったけ。ちょっと待って、コンサートってそういう意味なの? これは核爆弾が苦難を乗り越えスーパースターになる物語――または地球滅亡の真相である。

『Fission Superstar X』は宇宙船を駆って太陽系の果てから地球を目指す、横スクロール制シューティングゲーム(以下、STG)だ。子供の頃に夢見たカートゥーンタッチの宇宙と、ギラギラに輝く賢いゲームデザインが、上記の設定とあわさり旅路を愉快なものとする。デカい自機・硬い敵・速い弾というSTG三重苦を、船の修理・改造、クルー育成で乗り越えよう。さあ、核弾頭シンデレラ伝説の幕開けだ!

破壊描写とゴア演出が特盛りの宇宙

10分もプレイすればイロモノの印象を覆される。『Fission Superstar X』はユーモア・破壊描写・プレイフィールのカタマリだ。見栄えとマッチしたゲーム内容。多様なシチュエーション。それらをグルーヴィーなドラムンベースのBGMでまとめあげ、にぎやかな宇宙を爆走する高揚感をひきたてる。

 

ゲームルールは横STG。操作系はツインスティックシューター。宇宙船を操舵しながら砲塔で照準・攻撃する。砲塔はレーザーポインター付きで、コントローラーでも狙いやすい。1分~数分間ステージと休憩タイムをくりかえし、太陽系の各惑星(一部準惑星)を順に目指す。道中は地元軍隊が立ちふさがり、惑星ではその親玉と直接対決のボス戦が待ち構える。力ずくで突破しコンサート会場にたどり着けば、ソロライブ開演だ。そして次の惑星に向けて旅を再開する。または、爆発してもよい。

 

見どころはビジュアルの圧倒的なディティール描写

本作の見どころはビジュアルの圧倒的なディティール描写だ。小ネタをちりばめた見栄えで注目を集め、部品ごとのアニメーションで重要な情報を伝えようとする。自機や敵機の宇宙船が、砲撃を交わし合うのに必要な情報をだ。船体のブロック構造。砲塔の種類や砲身の可動。そしてコクピット。デフォルメの効いたデザインが、部品の視認を助けている。特にブロック構造の把握は、船体の破壊描写やスペースモンスターのゴア演出で念を押す。

一見では、デカい自機・硬い敵・速い弾の三重苦だ。しかしプレイすれば、砲塔がない方位、すなわち死角の活用で苦にならない。シールドを張りながら死角へ逃れ、船体ブロックを意識しながら集中攻撃しよう。宇宙船の操舵+砲塔の攻撃という操作系が、映像体験・プレイ体験と合致している。

 

砲塔やコクピットの部位破壊で、狙ったとおりの結果を得られるのも心地よい。それらは敵機だけでなく自機にもあてはまる。砲塔にダメージを受けすぎるとクルーを失い、船体ブロックのどこかが壊れると爆散しゲームオーバーだ。

死角と部位破壊にステージ種類が加わり、砲撃戦はハチャメチャなものとなる。前方から延々と降り注ぐ小惑星、宇宙ウシ、通勤ラッシュ。敵味方問わず修理するドローンの嵐。エネルギーを吸い取る磁気嵐。自機をひっぱる重力源。この宇宙はノレないヤツから死んでいく。地の利を生かせば武器にもなる。体当たりで敵船を押し、障害物にぶつけてやろう。ステージ種類に応じた背景の変化があり、注意をうながしているのは好感だ。

 

破壊の快楽でクレバーな操舵技術を褒めたたえる

ズルい位置取り、しつこい集中攻撃、かしこい障害物活用で、敵機を次々と撃ち落とす。派手な爆発、飛散する破片、破壊の快楽でクレバーな操舵技術を褒めたたえるぞ。そしておカネもばらまいていく。そうカネだ、実利だ! 休憩タイムで自機強化に使うから拾い集めよう。おカネはいくらあっても足りない。太陽系横断ツアーという長旅は、おカネの使い道という悩ましい選択が連続する、計画の喜びにも満ちている。破壊、カネ、破壊、カネ、強化!

横シューになった『FTL: Faster Than Light』

ありのままにいえば、STGパートの主目的はおカネ稼ぎだ。おカネのためなら多少被弾してもよい。おカネの重要性は最初のステージで痛感することとなる。なにしろ、ゲーム開始時はクルー=砲手が4枠中2人しかおらず、攻撃不可の方位がある。敵機がこちらの死角に回り込むもどかしさを味わえば、クルーの雇用を急ぎたくなるのは当然だ。

 

難度が上昇する前に自機強化で備えよう

それに、惑星ごとのボス戦がプレイヤーを待ち構える。航路進捗に応じてザコ敵も強くなる。砲塔の数が増し、火力が上がり、船体は硬くなる。プレイ中の難度が上昇する前に自機強化で備えよう。ここで、ステージクリアごとに挟む休憩タイムがカギとなる。

休憩タイムではショップに立ち寄れる。造船所は自機の耐久度や移動速度など基本性能を強化する。武器屋は砲塔を換装する。バーはクルーを雇用する。ただし、立ち寄れるショップはひとつだけ。船体修理、実弾補給、クルー治療もショップで売っており、自機の消耗度合いと相談したい。

 

ショップ選択の重要度を高めるのがクルースキルだ。休憩タイムでクルー1人のスキルを使える。エンジニアは船体修理、メディックはクルー治療。彼らのおかげで、おカネを自機強化に回しやすい。サイエンスオフィサーはクルー全員のヘルス量を増加する。これは砲塔の耐久度と同義だ。パイロットはクルー全員のスキル性能を強化する。これで休憩タイムの価値はますます高まることとなる。

 

次のステージの選択は、ショップ選択と同時に決まる。正確には、ショップ付きステージの選択である。立ち寄りたいショップと、ステージ種類を天秤にかけるのが悩ましい。ステージ時間と航路進捗もここに加わる。ステージ時間が短ければ戦闘が少なくおカネを集めにくいが、少ない損害でクルースキルを使う機会を得る。航路進捗はボス戦までのショップ回数と同義だ。のんびり進んで準備を整えたいが、航路を追ってくる宇宙警察に捕まれば、軍艦が出現する懲罰ステージとなる。

 

判断材料は多く、選択肢は絞れている、決断の楽しさを詰め込んだつくり

『FTL: Faster Than Light』調のマップはないが、攻略の進めかたは似ている。前方のボス、後方の警察に挟まれながら、寄り道で自機強化するのだ。4本から選ぶステージに、STGパートの操舵技術だけでなく、クルースキル、自機強化、そして今後の展開までもが密接に絡む。判断材料は多く、選択肢は絞れている、決断の楽しさを詰め込んだつくりといえよう。カネと命の重みを量るプレイングのグラデーションで、太陽系横断ツアーを見事に飾り立てた。

ムズゲーが良ゲーに変わる瞬間

『Fission Superstar X』は攻略難度が高いゲームだ。STGの腕前と自機強化の計画を常に問われ、不運や理不尽そして敵機の狡猾な立ち回りに苦しめられる。それらをコンサートツアーの苦労話とするなら、はるか長い旅路で得る素敵なサムシングはもっとたくさんあっていいだろう。本作の物語体験はツアーを通じたグッドエピソードの数々にある。コンサートに対する人々の反響と、アートワークに込められた世界の背景で、プレイ動機をかきたてた。

休憩タイムの入電やショップのニュースで、核弾頭への恐怖がセリーヌへのリスペクトに変わる様子を読み取れる。コンサート会場も回を増すごとに変化していく。冥王星の観客はたった2人だが、徐々に興味をもつ人たちが現れ、終盤では観客が殺到し社会現象を巻き起こすのは心憎い。

 

本作の難しさのタイプには、STGファンでも骨が折れる

獣人、昆虫、ロボットなど、太陽系のライフスタイルが敵機のディティールに反映してあり、興味をそそられる。SNS「facetwit」のAIが支配する地球と「いいね(Like)」中毒の人々という、ナウいSFは苦笑ものだ。

是非ツアーを完走してもらいたい―― といいたいのだが、本作の難しさのタイプには、STGファンでも骨が折れる。下記の3要素で「無理ゲー!だるい!」と声を荒らげるだろう。まずパーマデス。死んだら最初からやり直し。次に初見殺しのボス。十分な自機強化と対策も要する。最後は、長いプレイ時間。地球到達まで3時間弱もかかる。これらがあわさり、ゲームオーバーの徒労感は懲罰めいたものとなる。

その徒労感はアンロック要素である程度緩和される。STGパートのゴア演出で得たDNAポイントは、次回スタート時のクローンエックスを強化する。また、ボス撃破後のコンサート会場で核爆弾を点火すれば、破壊した惑星に応じて新型船をアンロックする。新型船は初期船のマイナーチェンジだが、自機の位置取りが肝となるゲーム内容ゆえ、尖った性能を攻略に生かしやすい。特に、土星爆破で手に入る船は、前方3斉射という破格の火力だ。ゲームクリアにぐっと近づくだろう。

 

アンロック報酬がゲーム攻略の中期目標となり、プレイング上達に欠かせないリトライをうながしている。ゲームを始めた頃は最初のボスでも苦戦必至だが、挑み続ければ突破が安定するだろう。ボス戦対策だけでなく、ゲーム全体の攻略が進んだ成果だ。武器の性能。敵機種類とその対処法。クルー能力の活用と育成。ステージ種類と航路進捗。多岐に渡る攻略知識でリスク・リワード管理の精度があがり、ボス戦への準備がよりよいかたちで整うのである。道中でランダム出現するスペシャルショップの活用も、そのひとつだ。

 

攻略難度の高いゲームならではの余韻がある

ゲーム各要素の上達がボス撃破という実を結ぶ。言い換えれば、ボスを撃破するまで上達の手ごたえを感じづらい。本作はランダムステージゆえ、背景のダイナミックなスクロールや、特徴的な敵編隊パターンといった目印がない。「前回よりちょっと進んだ」という上達の指標を得にくく、中だるみを感じてしまう。うまくいかないときはとても苦しい。セリーヌのコンサートツアーは、ゲーム攻略というプレイヤー自身の旅路なのだ。信じて挑み続ける旅路が、ラストバトル、そして観客にあふれたツアーフィナーレを格別のものとする。

『Fission Superstar X』は最初の10分でイロモノの印象を覆し、最後の10分でもういちど印象を覆してくれた。ゲームクリアでムズゲーの印象が良ゲーに変わる、攻略難度の高いゲームならではの余韻がある。最後につきつけられる苦渋の選択を乗り越えた、そのとき。ウィットに富んだエンディングと、小ネタを仕込んだスタッフロールの真意が明らかとなる。これは音楽(無音)で世界をひとつにまとめたスーパースター伝説――そしてプレイヤーが勝利をおさめる物語だ。

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