『エスプレイドΨ(サイ)』レビュー。弾幕初心者も上級者も満足の新要素を己の”手”で制覇せよ【電撃PS】

電撃PlayStation
公開日時

 12月19日に発売された、“エムツーショットトリガーズ”の PS4/Nintendo Switch用ソフト『エスプレイドΨ(サイ)』のプレイレポートを、電撃PlayStation編集部のあーやがお送りします。

 シューティングゲームの“好き”が高じすぎ、“シューティングの復刻から創生へ”をスローガンに掲げ、エムツーショットトリガーズという自社パブリッシングレーベルまで立ち上げた有限会社エムツーが、またまた”完全移植以上版”をリリースしてくれました!

 過去エムツーショットトリガーズのレーベルからは『バトルガレッガ Rev.2016』、『弾銃フィーバロン』、『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』といったタイトルがリリースされてきましたが、『エスプレイドΨ(サイ)』はその第5作目、ケイブが手掛けたシューティング、いわゆる“ケイブシュー“のなかでは第3弾となります。

 『エスプレイドΨ(サイ)』のオリジナルとなった『エスプレイド』は1998年にアーケード用にリリースされた弾幕シューティング。ユーザーからは名作との評価を受けつつも移植の機会には恵まれず、リリースから20年以上経った2019年、満を持してのコンシューマ版が発売となりました。

 ここでは『エスプレイド』の魅力を振り返り、そして超絶パワーアップを果たした『エスプレイドΨ(サイ)』の凄さを語っていきたいと思います。

 なお、筆者が本格的にゲームセンターに通い始めたのは『ケツイ』にドハマりした2003年頃からのことですが、当時『エスプレイド』は新作の波に押され、ゲームセンターから姿を消しつつありました。そのため『ケツイ』は2周目安定するぐらいはプレイを進められましたが、『エスプレイド』はあまりやり込むことができず、1コインの標準設定だと当時は4面ボス発狂ぐらいまで進むのがせいぜいだったのです……。

 しかし本レビューの執筆にあたって本作の手厚い介護(トレーニングモード)による反復練習で、付け焼き刃ながらもパターンを組み、寝る間を惜しんで練習に励んだ結果、【200万EVERY、残5設定】ではありますが、なんとかクリアまでたどり着くことができました! 経年劣化により動体視力などの人間性能は落ち、当時の記憶をほとんど失ったとしても、シューティングはやればできるようになります! ソースは俺!!

  • ▲この張り手をノーコンで拝むときが、自分にもやってきました。

オリジナル版『エスプレイド』の魅力

 というわけでまずはオリジナル版『エスプレイド』のご紹介です。今回のレビューにあたり、本作をそれなりにプレイしたところ、はエムツーショットトリガーズにてリボーンした作品のなかでも、上達の達成感を味わいやすく、もっとも初心者に向けた作品だと思いました。その理由はこんな感じ。

 1.自機がバックボーンをしっかりもった人間で、緻密な背景グラフィックと合わせ、物語性に優れている

 2.(ほかのケイブシューと比べると)甘口な難易度かつ1周しかないため、完全クリアを意味する”ALL”を達成しやすい

 3.ミスをした場合も比較的スコアロスが出にくい稼ぎシステムで、ハイスコアへのモチベーションを高めやすい

高い物語性と低い難易度(ジャンル比)

 1については、『エスプレイド』のディレクターを務め、現在もマンガ家として第一線で活躍を続けている井上淳哉先生の熱い思いをインタビューでたっぷり語っていただいていますので、そちらをご参照ください。

 2については、達成感の味わいやすさに関わってきています。難易度が低い=敵の攻撃を避けやすい以外にも、個人的には秘密があると思っています。それはランダム性の高さ。本作の弾幕はほかのケイブシューと比べるとランダム性の高いバランスになっており、パターンの再現難度が高くなっています。それが逆にいいんです。

 つまり何度かプレイしていると、ランダム性の高さによってたまに敵がデレて勝てちゃうことがあるんですね。ずっと負けが混んでいるとツラいですからね、これがいいモチベーションアップにつながるんですよ。

 で、なんとなくパターンが見えてきて「俺うまくなったやん」と思っていると、今度はランダム性の高さによってパターンを捨ててアドリブで避けたほうが良い状況に遭遇するんです。これもいい。なぜかというと、とっさの状況判断能力や対応力の向上につながるから。

 また、本作のゲームテンポは比較的ゆっくりで、ゆっくりと迫るばらまき弾によって移動範囲を制限された中を、縫うように精密に操作して避ける事が多いです。

 弾幕シューティングが上手くなるには、大きく言えば行動パターンの構築能力、構築したパターンを精密に再現する操作能力、そしてとっさのアドリブ避けの能力が求められます。もうおわかりですね。本作はこれら3つの基礎能力を高めるゲームデザインになっていると言えるのです。自分の上達を実感するのは、自分自身にのみ許された、本当に楽しいこと。この感覚を味わいやすいというのは大きなポイントです。

 まぁ、ゲームテンポがゆっくりであるため『ケツイ』などと比べると、緊張とそこからの解放による快感の反復は、若干物足りない気もします。でもそれは“好み”の要素も多いのかな、と思うんですよね。

 初心者の方にとって上達の近道は、いろんなシューティングゲームをプレイしながら、気に入ったゲームを楽しくたくさん遊ぶのが一番だと思いますが、「じっくり腰を据えて1本プレイするならどれ?」と聞かれれば、筆者は今回「『エスプレイド』はかなりアリだな」とプレイして感じた次第です。

 余談ですが筆者が弾幕シューティングの腕を磨いたタイトルは『ケツイ』です。遊んでいて一番肌にあったタイトルだったんですね。おお、どちらもエムツーショットトリガーズで今すぐ遊べるじゃあないですか! みんな、今すぐ遊ぼう!

ローリスクな稼ぎで上達も気軽に実感できる!

 3についても補足しておきます。本作はさらなる上達、あるいは「上手くできた!」と感じさせる“スコア稼ぎ”の敷居も低めです。たとえば『怒首領蜂』シリーズだと、ステージの最初から最後までコンボをつなげてクリアして初めて、さらなるスコアアップの道が拓けます。

 しかし、そもそもコンボをつなげること自体が超難しい!(もちろん、初めてすべてつながったときは思わず顔がニンマリするほどうれしいのですが!)また、一部の区画の稼ぎパターンを変えるとほかの区画のパターンに大きな変更も出やすく、ハードルが高いのです。

 一方『エスプレイド』の稼ぎの基本は、“パワーショット”というショットが敵にあたっているときに通常のショットで敵をたおすこと。パワーショットがあたっているぶんだけ敵の素点やスコアアイテムに倍率がかかり最大で16倍まで成長、また一定時間倍率が維持される、という『ケツイ』に近いシステムです(オリジナルの発売は『エスプレイド』が先なので、むしろこちらが元祖ですが)。

 当然16倍を出すにはコツが要りますが、最初に考えることは「どの敵で着火するか?」ぐらいで、その前後のパターンはあまり影響しません。「ちょっと試したら上手く行った!」という小さな試行錯誤の積み重ねがわかりやすいんですね。

  • ▲16倍で敵を倒すと、画面がまっキンキンになって楽しい。

 もちろん上級者の方々は全区間を理解した上で稼ぎパターンを構築していますし、そのパターンはリリースから20年以上経った現在も更新されるほど奥深いです。また、“散らし”という敵への撃ち込み点でスコアを稼ぐ方法もあるので、「なんだヌルゲーか」と心配する必要はありません。ご安心を!(流石にそんな人はいないか……)

『Ψ』は初心者も上級者も楽しい、驚きの新要素が満載!

 ということで、ここまではオリジナル版『エスプレイド』の魅力を語ってきましたが、本作『エスプレイドΨ(サイ)』はもっとスゴい! その理由を“ショットトリガーズ”シリーズの最新作である、本作ならではの要素紹介を中心に語っていきます。

新モードその1 アーケードプラスがおもしろい!

 このモードで新たに描かれる世界観は井上氏が自ら考案したもの。具体的には、キャラクターイラストが新たに井上氏によって描き下ろされていたり、新たなボイスに刷新&ボリュームアップしていたり、新キャラクター小野亜莉水が追加されていたり、といった具合。アーケード版と比較しても違和感のない『エスプレイドVer1.2』と言って遜色ないデキだと思います。当時プレイしていた方にとっては、懐かしくも新しさを感じられるものに仕上がっています。

 注目したいのはやはりキャラクターでしょう。なかでも追加された新ボイスは、どれもキャラクター性を深堀りしたものばかり。たとえばロシアのESP者である”J-B 5th”なら「ココにもいるぜ、資本主義に飼い慣らされた犬どもが!」というような具合(あぁ、14歳っぽい……笑)。

 ボスである近江覚なら「うああああっ、力が止められない!」と言ったかと思えば「なんてすがすがしい気分なんだ!」と言ったり、ちょっと情緒が不安定。昔から知っていたはずのキャラクターたちの新しい一面が、きっと見られるはずです。なかでもガラ婦人は……「ここであのセリフが来るか!」と個人的には最高でした。

 また、小野亜莉水も、アリスクローンのオリジナルということで、ファンにはたまらんキャラクター。このキャラはボスでありながら自機でもある、という点もおもしろく、物語的にどうなっているのか、ゲーム中でもちゃんと説明がなされています。

  • ▲ちなみに亜莉水の場合、ステージの攻略順はプレイヤーセレクト時に選択可能です(ほかのキャラクターはパワーショット、ガードバリア―ボタンを押すことで固定化可能)。

 さらに自機性能も非常に高く、具体的には“祐介+J-B 5th”というイメージ。パワーショットを撃った直後の通常ショットは前方集中型なのですが、その後通常ショットを打ち続けていると、ゆっくりと扇状に拡散するショットへと変化していきます。

 これが何を意味するかと言うと、まず前方に特化したショットであるため16倍を仕込みやすい。次に、扇状に広がった拡散型のショットでザコをまとめて処理することで、16倍の倍率が維持されている短時間のあいだにザコを大量に処理しやすい。

 簡単に言うと、稼ぎが簡単で楽しい! 前情報では“16倍ボーナスを狙いやすく,「エスプレイド」の“稼ぎ”を知ってほしいというコンセプトを持たせた新キャラクター”とだけ知らされており、「どんなキャラなんだろう?」と思っていたのですが、なるほど納得のキャラクターでした。

 このほかにも、小野亜莉水戦で流れるBGMなど本作で新たに制作された楽曲もアツい! 亜莉水戦BGMの作曲は溝口哲也氏、さらにアレンジBGMを担当したのはスーパースィープの名だたる面々。亜莉水戦のBGMは進行とともにどんどん盛り上がっていくため、1つのボス戦に都合3曲が収録されているという豪華仕様!

 アレンジ楽曲のほうは、ちょうど『エスプレイド』がリリースされた当時に流行っていた雰囲気の曲に仕上がっており、“アガる”曲ばかり。なかでもボス戦曲である“RAGING DEICIDE”は、全ボスアレンジが異なり、こちらも超豪華! 昔プレイしたことがある方は、原曲も含めてぜひ聞き比べてほしいです。

新モードその2 いろりの部屋がおもしろい!

 このモードも井上淳哉氏が完全監修。簡単に言うと、トレーニングモード+キャラ育成&カスタム、という、シューティング要素と育成要素を融合させた内容です。このモードの特徴はともすればツラい練習が、おもしろくなること。

 “自分の腕を磨く”ことは、自分で決めた小さな目標を達成し続けていくストイックな行為。でも「いろりの部屋」を遊んでいると、自分の腕が磨かれつつも、キャラクターのショット性能が強化されたり、部屋にいろいろな家具が置けるようになったりと、練習のオマケがジャラジャラ手に入ります。“自分のレベルを上げるRPG”を遊んでいるような感覚になるんですよ。




  • ▲家具のバリエーションは豊富でいろいろアレンジ可能。なお、家具はふくびきで入手(ふくびきにはいろりの部屋を遊んでいると入手できるふくびき券を使用)。全部ダブったときは「もしかして、これ全部持ってないか?」と専用のボイスが出るなど、こちらも芸が細かい……。
  • ▲ちなみにこのモードではペットを育成することで、自キャラの性能を底上げすることが可能。ガチャでペットが出たときの演出が……じつにケイブっぽい(笑)。

 エムツーはこれまでもシューティングの基本的なエッセンスのみ体験できるスーパーイージーモードを追加するなど、初心者への配慮は欠かしてきませんでしたが、今回の配慮はまさに集大成だと感じました。ちなみに、いろりの部屋にはアレンジモードとして、ステージをクリアするたびに敵弾が速くなるなど、特殊な条件でプレイできるモードも収録されています。上級者の方もやり込み甲斐はあるはずです!

その他エムツーショットトリガーズの伝統も継承!

 もちろん、これまでのエムツーショットトリガーズで追加されてきた機能も本作にはしっかり入っています。

 具体的にはゲーム中に表示されないザコ敵のHPやゲーム中のランク(難易度のこと)などを可視化したM2ガジェット、どこでもセーブ&ロード機能、自分が被弾した前後のシーンを徹底的にトレーニングできるアーケードチャレンジ&アーケードおさらいモード、ゲームのさまざまな要素を自分好みに調節できるカスタムモード、他人の超絶プレイや自分のプレイを閲覧できるリプレイシアターなど。昔『エスプレイド』をやっていた人にとっては垂涎の機能が満載です。

  • ▲超初心者の人も安心のスーパーイージーモードは、冒頭でお見せしたガラ婦人の張り手攻撃もここまでカンタンに。今回はばらまき弾に慣れてもらおうという意図なのか、序盤も弾がチラホラ出る代わりにバリアゲージの管理・回復が超簡単になっている印象でした。

原作の魅力を最大まで引き出す匠の技に感動

 正直に言ってしまうと、自分は今回『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』以上に熱のこもったレビューが書けるのか、不安でした。『ケツイ』は予備校をサボってやりこんでいましたが、『エスプレイド』はそこまでプレイしていないし、思い入れもなかったんです。

 しかし、『エスプレイドΨ(サイ)』をプレイしている現在、その不安は杞憂だったなと思います。『エスプレイド』のゲーム的なおもしろさにしっかり触れることでその魅力をハッキリ認識できたのも理由の1つですが、一番は物語性の深さにあったのかな、と感じています。

 自機が生身の人間で、キャラクターやドラマが表現されていたからこそ、新キャラクターの小野亜莉水にせよ、新モードのいろりの部屋にせよ、『Ψ』で膨らませることができたと思うんですよ。

 当時ゲーム中で表現できないところまで世界を作り込んでいた井上氏をはじめとする、ケイブやアトラス。そして今その深みにドップリ潜って魅力の原石を拾い、磨き上げたエムツー。全員の熱意がなければ、『エスプレイドΨ(サイ)』は生まれなかったし、自分は『エスプレイド』のおもしろさ自体を見落としていました。

 自分の勘の鈍さに辟易としながらも、これだけは言わねばならないでしょう。井上淳哉先生と当時のケイブのスタッフさんやアトラスさん、そしてエムツーのみなさん、ありがとうございます! そして弾幕シューティングに興味のある方も、昔プレイした方も、今もやりこんでらっしゃるスコアラーの方も、ぜひ、『エスプレイドΨ(サイ)』に触れてほしいです。きっと損をした気分にはならないハズですよ!

© ATLUS © SEGA © 2019 M2 Co., Ltd. Original Game : © ATLUS/CAVE 1998

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

エスプレイドΨ(サイ)(限定版)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2019年12月19日
  • 希望小売価格: 9,800円+税

エスプレイドΨ(サイ)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2019年12月19日
  • 希望小売価格: 6,800円+税

エスプレイドΨ(サイ)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: STG
  • 配信日: 2019年12月19日
  • 価格: 4,500円+税

エスプレイドΨ(サイ)(限定版)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2019年12月19日
  • 希望小売価格: 9,800円+税

エスプレイドΨ(サイ)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2019年12月19日
  • 希望小売価格: 6,800円+税

エスプレイドΨ(サイ)

  • メーカー: エムツー
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: STG
  • 配信日: 2019年12月19日
  • 価格: 4,500円+税

関連する記事一覧はこちら