セガの設立60周年(2020年6月3日)を記念すべく、オンラインを中心としたイベントや限定商品の販売など、さまざまな展開がなされている“セガ設立60周年プロジェクト”。その一環として開催される音楽ライブ“SEGA 60th ANNIVERSARY LIVE”の公開収録が、11月8日に東京・豊洲PITにて行われた。

 「公開収録?」と不思議に思うかもしれないが、このライブは本来オンライン配信(12月19日)の予定をしているモノ。それが、関係者の協議の結果、入場時の検温やソーシャルディスタンスの保持などの新型コロナウイルス感染症予防対策を行った上で、来場者を募ったわけだ。そのため、限られた人数ではあったが“セガ愛”あふれるファンたちが会場へと駆けつけ、熱い眼差しをステージへと送ることとなった。

 ライブの配信予定はまだ先(12月19日)ではあるが、どんなライブなのかが気になっている人もたくさんいるはず。そこで本稿では、肝心なところはぼやかした上でのリポートをお届けする。どんな「ライブなんだろう?」と気になってはいるけど、まだ視聴チケットを買ってない人の手助けになれば幸いだ。

 なお、蒼井翔太さん、黒田崇矢さんについては別日での収録であるため、この日の出演はなかった。

“SEGA 60th ANNIVERSARY LIVE”公式サイト

選ばれしセガファンだけの最高の音楽空間!

 開演時間となり、あるゲーム機の起動音が鳴り響くと、MCを務めるカズレーザーさんと竜瀬葵さんが登場。「○○○○○○の起動音で幕開けなんて景気がいいですね!」とカズレーザーさんは語り、さらにはいちばんハマったセガのゲームはサターン版『ダイナマイト刑事』……のオマケで収録された『ディープスキャン』だなんていう濃い目のセガファンぶりに、来場者からは温かい拍手が送られた。

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 トップバッターを飾るのは、セガを代表するキャラクターである『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の楽曲。ソニックシリーズのサウンドディレクターである瀬上純氏が奏でるギターで演奏されたのは、『ソニックアドベンチャー』メインテーマである“Open Your Heart”。残念ながらボーカルであるジョニー・ジョエリは不在であったものの、凄腕ミュージシャンたちによるパフォーマンス、そして何より、身体で直接感じる生音の響きはなんとも感動的。立て続けに『ソニックアドベンチャー2』からの2曲(ソニックファンにはおなじみのアレ!)を演奏すると、早くも気分はトップギアへと躍り上がった。

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 演奏後のトークコーナーでは、シリーズに関わったいちばんの思い出を「海外でのライブで大合唱になったこと」とコメントした瀬上氏。来年は『ソニック』30周年となるだけに、なにかしらの展開を期待したいところだ。

 2番手で登場したのは、セガ・サウンドクリエイターの庄司英徳氏。事前情報では出演の予定ではなかっただけに、これは会場鑑賞していた人への嬉しいサプライズ。みずからのギター演奏にて『龍が如く』シリーズのカラオケで聴ける“あの曲”を演奏すると、さっそうとステージを後にした。

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 続いて登場したのは、セガ・サウンドクリエイターの大重鎮であるHiro師匠と、クラシックゲームならこの方、奥成洋輔氏。史上初のゲームミュージックのバンド演奏を行ったセガの歴史を説明する奥成氏を横目に、「作ったらすぐ忘れる」と語るHiro師匠の軽妙なトークに、来場者は笑顔をみせていた。

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 そんなHiro師匠が演奏したのは、1980年代にゲームセンターを彩った名曲たち。ラテンなアレや疾走感あふれるソレを演奏すると、突如ステージをつんざくジェットエンジンの音が! 重厚なディストーションギターとオーケストラヒットが響きわたるこのナンバーは、生演奏にもってこい。当時S.S.T.バンドを追いかけていた筆者のハートは、完全に熱かった90年代にタイムスリップしたのであった。

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 つぎにステージに姿を見せたのは、ファンから“小林神”の愛称で呼ばれるサウンドクリエイター・小林秀聡氏。小林氏、カズレーザーさんともに初代『ファンタシースターオンライン』の熱心なプレイヤーであったということで、“PSOあるある”トークに華が咲いた。

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 そんな小林氏がショルダーキーボードを使って演奏したのは、“The Whole new world”。PSOのテーマ曲のフレーズを含む『ファンタシースターオンライン2』のメインテーマであるだけに、長い歴史を振り返るこのライブにピッタリの選曲だと言えるだろう。

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 ここからは、2013年にセガグループに加わったアトラスを代表する『ペルソナ』シリーズのコーナー。まずはボーカリストのLynさんが登場……とくれば当然演奏されるのは『ペルソナ5』シリーズ。横浜アリーナで行われたライブの思い出などを語ったLynさんは、このライブのために用意された、4曲のスペシャルメドレーを披露。バックバンドの演奏を飲み込んでしまうほどのパワフルな歌声を、会場中に響き渡らせた。

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 おつぎに登場したのは『ペルソナ4』で歌唱を担当する平田志穂子さん。なんと第1回のペルソナライブと同じ衣装withメガネ姿で登場した平田さんは、日本武道館や両国国技館といった“格闘技の聖地”でライブを行ってきた喜びを語るも、ゲームをプレイしたときに「自分の声が聞こえてきて集中できない」と意外な悩みがあったことを披露。その後の歌唱は、オープニングや戦闘曲を含むスペシャルメドレー。テイストの異なる3曲のチョイスは、ゲームプレイ時の感動を思い出させるものであった。

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 奥成氏が再登場すると、ここでもリアルタイムで遊んだ思い出のゲームトークに。カズレーザーさんが「『パンツァードラグーン』と『ルーマニア #203』は遊んだ。とくに『ルーマニア #203』は、やればやるほど好きになるから定期的にプレイしたくなり」と語れば、竜瀬さんも「『NiGHTS』遊びたさにマルチコントローラーを買ってもらった」と思い入れの強さを披露。それら3タイトルの楽曲に加えて、『セガラリー』シリーズ、『ゴールデンアックス』シリーズから1曲ずつが選ばれての懐かしメドレーが演奏された。

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 ライブが終盤へと差し掛かったところで、いよいよセガのお祭り男・光吉猛修氏がステージへ! いまでは“日本一歌のうまいサラリーマン”と呼ばれるまでになった氏ではあるが、やはりその原点はデビュー作である『デイトナUSA』。歌の流れるアーケードゲームということで当時大きな話題を呼び、サターン版も大ヒット。当時プレイしたというカズレーザーさんも、生「逆走だー!」に大喜びするなど、“LET'S GO AWAY”の歌唱の前から大盛りあがりとなっていた。

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 さらにもう1曲、あのコミカルソングを熱唱した光吉氏は「センキュ!」の声とともにステージを後に。2021年1月24日には昼夜2公演で行われるディナーショー(チケットは完売)に向けて、絶好調であることを見せつけた。

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 いよいよライブも佳境というところで満を持してステージに姿を現したのは、作曲家の田中公平氏。とくれば当然、演奏されるのは『サクラ大戦』シリーズの楽曲だ。長きに渡る『サクラ大戦』との尽きぬ思い出を披露する公平先生(を制するカズレーザーさん)のトークを挟んで、いよいよ演奏がスタートする。

 まずはバンドに弦楽四重奏が加わった編成にて、“御旗のもとに”、“地上の戦士”、“檄!帝国華撃団<新章>”をインストゥルメンタルで披露。シリーズの歴史を振り返るような選曲に、ハートをグッと掴まれたファンも多いことだろう。

 続いては、公平先生に連れられて、声優の岸本萌佳さん、松浦愛弓さん、夏吉ゆうこさんからなる帝国歌劇団・青ヶ島花組がステージに。色違いのドレスに身を包んだ3人は、シリーズ初のスマホ向けタイトルとして期待が集まる『サクラ革命』から“SAKURA HIKARU Revolution”を歌唱したのだが、なんと客前で歌うのはこの日が初! ライブのために振り付けを練習し、フルコーラスを歌うというたいへんプレミアムなものとなった。

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 畑亜貴さん作詞による歌詞も印象的な“SAKURA HIKARU Revolution”だが、間奏では観客による手拍子(ほぼ三三七拍子)もあって、みんなでいっしょに盛り上がれることが最大のポイント。ぜひともライブ配信でその感動を共有してほしいところだ。

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 三度登場した公平先生の横には、やはりこの方がいないとしまらない真宮寺さくら役・横山智佐さんの姿が! 「『サクラ大戦』は育ての親。たくさん学ばせてもらった」とその思いを口にした横山さんは、まず“花咲く乙女”を披露。サクラ色のライトに染まったステージで、サクラ色のロングドレスに身を包んで歌い上げるその姿は、神々しいほどであった。

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 そこから一転、勇壮なイントロが流れ出すと“檄!帝国華撃団”がスタート。横山さんが「これまで1000回は歌った」というだけに、いまさら説明の必要がない安定の歌唱&ダンスを披露。いっしょに歌って踊りたかったであろう客席のサクラファンの分まで、熱のこもったステージを作り出していた。

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 トリを飾った横山さんが「晴れてマスクを取って歌って踊れる日が来ると思うので、そのときまでお元気で!」とエールを贈る中、ライブは大盛り上がりのままエンディングへ。MCを務めたカズレーザーさんが「いちばん多感な時期に育ててもらったのがセガですから、大人になって仕事に関わらせてもらって感謝しかない」とシメの言葉を放つと、場内には「ちょっとまったァーー↑↑↑」とあのハイトーンボイスが。

 そのまま怒涛のアンコールへと突入するわけだが、何が演奏されたのかは会場に来た人、そして配信を見てのお楽しみとさせていただきたい。ひとつだけ言うなら、めちゃくちゃ盛り上がったよ!

 この日だけで2時間半以上にも及ぶ大ボリュームにて、(新型コロナウイルス感染症対策のもと)会場が一体となって盛り上がった今回のライブ。限られた時間だけに「あの曲がない」、「これが聴きたかった」という声は上がるかもしれないが、それは60周年という歴史の厚みがあるからこそ。逆に言えば、“いいとこ取り”なセガの歴史がギュギューッと凝縮された欲張りなライブということ。筆者も配信をもう一度見てみようと決心させるに十分な熱さだったので、ぜひともこの感動をオンライン配信で味わっていただきたい。

 そして最後に、公開収録への出演が叶わなかった蒼井翔太さんと黒田崇矢さんがパフォーマンスする姿を特別に公開。この画像を見て、オンライン配信までのワクワクを膨らませるべし!

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