気鋭のライターがお気に入りのインディーゲームを紹介。今回お届けするのはアクション・シューティングの『ゼノ・クライシス』。担当は、“ライター30周年”の(おめでとうございます!)戸塚伎一

【ライター戸塚伎一のココが推し】

  • ツインスティックシューターとしての快適な操作性
  • プレイヤーを突き放しているのになぜか再挑戦したくなる高難度
  • メガドライブの実機で動くことを前提に制作した開発者の心意気

メガドライブの性能縛りで作った、固定画面+全方向移動&攻撃が可能なアクションシューティング

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科学研究施設からの救難信号を受け、ふたりの海兵隊員が乗り込むとそこには……という“エイリアンもの”のド定番設定!

 このステージをクリアーしたことにして先に進みますか?

 といった趣旨の提案をテレビゲームでされるたびに、何とも言えない気持ちになります。確かに何度リトライしてもクリアーできないし、同じ場面を観続ける状態に飽き始めてもいる。作り手のサービス精神からくる救済措置だとは重々承知なのに、じゃあそれに素直に乗っかれるかというと二の足を踏んでしまいます。

 プレイ中あれほど激しく無意識のうちに動いていた指が、“はい”を選択する操作のためには素直に動かないのです。ゲームは自力で攻略してこそ! という昔気質の信念も、そもそもそれを実現できる腕前も持ちあわせていないのに、なぜ私は意地を張るのか……より厳密に言えば意地を張っているように思われるムーブをしてしまうのか? その理由は、2020年に現行家庭用ゲーム機版がリリースされた海外インディーゲーム『ゼノ・クライシス』の紹介をすることで説明がつくような気がします。

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1画面単位で区切られたエリア内の敵をせん滅しながら、エリア間を移動。最奥部にいる巨大なボスを倒すとステージクリアー。わかりやすい構成だ。

 このゲームの制作背景を簡単に説明すると“メガドライブ(セガが1988年に発売した家庭用ゲーム機)が大好きなイギリスのベテランゲーム開発者グループが、固定画面+全方向移動&攻撃が可能なアクションシューティングをメガドライブの性能縛りで作ったもの”。

 グラフィックやサウンド、キャラの挙動は“それっぽい”のではなく実機でそのまま再現可能という点がポイントです。わらわら登場する敵、取ると一定時間使える強力な武器アイテム、外周のゲートをくぐって部屋間を移動……などの要素は、ちょっと古いゲームの知識があるゲーマーであれば1990年にアーケード版がリリースされたツインスティックシューター『スマッシュT.V.』からのストレートな影響であることがわかるはずです(ちなみに同作のメガドライブ移植版は日本では未発売)。

 ゲームの難しさは“本家”も相当でしたが『ゼノ・クライシス』はそれに輪をかけた鬼畜ぶり。敵の出現場所やアイテムの出現頻度・種類のランダム性が強いことに加え、プレイヤーキャラの通常ショットも弾切れを起こす(そのつど弾薬アイテムを取る必要がある)仕様のため、“こう動けば余裕でノーミス突破”という攻略セオリーを確立しにくいのです。

 かくいう私も長いことプレイしているにもかかわらず、いまだにコンティニュー回数を使いきっても最終ステージのボスまでたどり着けません。さらに言えばノーコンティニューでそこまでいかないとちゃんとしたエンディングを見られない作りのようで、独力でのクリアーは絶望的です。

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後半ステージは難易度“EASY” 設定でもかなり手ごわい。ていうか気がつくとゲームオーバーになっていることがザラだ。
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ステージクリアー時に、それまでに獲得したドッグタグと引き換えに装備を強化可能。つねに絶妙にギリギリな優先順位の選択を迫られる。

 今後もずっとプレイしていればいつかはクリアーできるのだろうか? 私にとってはどっちでもいいのかもしれません。なぜなら私は、敵軍勢を掃射している私が好きだから。うまくいかないときはそりゃ悔しいですが、だからといってそれまでのプレイをなかったことにしようとは思わないし、その悔しささえも仕切り直しのモチベーションになるくらいです。

 テレビゲームは、何かを成し遂げたり勝利者になった気分をお手軽に味わえる娯楽であるとともに、極めてきびしい条件下で自分はどこまでやれるのかを気軽に挑戦し続けられる娯楽でもあります。レトロゲーマーの欲目も多少あるでしょうが、『ゼノ・クライシス』は後者の面においてじつにサービス精神旺盛な作品なのです。

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ゲームパートのドット絵もさることながら、デモパートの1枚絵の鮮やかさもレトロゲーマーに心地よい。
『ゼノ・クライシス』ニンテンドーeショップページ 『ゼノ・クライシス』PS Storeページ

★Column★もともとはクラウドファンディングで成功したプロジェクトだった!

 本作は英ゲームスタジオBitmap Bureauが2017年末にローンチしたクラウドファンディングプロジェクト。現行ハード以外にもメガドライブやドリームキャストなどのレトロハードで遊べる“物理ゲームソフト”としてリリースすることを掲げ、1ヵ月間で70000ポンド(1000万円)以上の資金を集めたことで話題に。プロジェクト成功後、日本版メガドライブ発売31周年の2019年10月29日に無事リリースされた。

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海外版メガドライブ“GENESIS”ではないところに並みならぬこだわりが!?

■Column■ふたりプレイだと途端に大味ゲーに!?

 ローカルのオフラインプレイでは、ライフが0になって倒れたプレイヤーに、生き残っているプレイヤーが触れれば、残りライフ1の状態で復帰できる。うまく立ち回ればコンティニュー回数を減らすことなく延々と遊べるぞ! まさに永久機関も夢じゃない!

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倒れてから蘇生可能になるまで数秒間のラグが発生するので注意。

ゼノ・クライシス

  • メーカー:eastasiasoft
  • 開発:Bitmap Bereau
  • プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4、プレイステーション Vita
  • 配信日:2020年9月17日配信
  • 価格:各1980円[税込]
  • ジャンル:アクション・シューティング
  • CERO:12歳以上対象
  • 備考:ダウンロード専売
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