2021年6月3日にプレイステーション4、Nintendo Switch、PC(Steam)用ソフトとしてリリースされたクラウディッドレパードエンタテインメントの『有翼のフロイライン Wing of Darkness』。

 同作は、みずからが兵器となって未知の敵との戦いに身を投じるふたりのヒロインを描いたストーリーと、自由に大空を飛び、弾薬制限のない爽快感溢れるゲームプレイが魅力のハイスピード3Dシューティングゲームだ。

 ここでは、開発を手掛けるチームProduction Exabilitiesのおふたりに、5年間という制作期間を経てリリースされた本作の制作秘話などを聞いた。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

奈良輪和史氏(ならわかずふみ・写真左)

Production Exabilitiesのメンバー。本作ではプロデューサーを担当。シナリオも手掛ける。(文中は奈良輪)

一柳 守氏(ひとつやなぎ まもる・写真右)

Production Exabilitiesのメンバー。本作ではディレクター兼ゲームデザイナーとして、ゲームの基礎部分の制作や、キャラクターデザイン原案などを担当。(文中は一柳)

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「本当に自分たちが作りたいものを作りたい」という思いが発端となり制作が開始

――本作は何人くらいのメンバーで制作されたのでしょうか。

奈良輪基本的には私たちふたりと、サウンドやアニメーションの部分でゲームの中身に深く関わってくれたふたりの4人がコアメンバーとなります。さらに、手伝ってもらったメンバーを含めると、だいたい10人くらいになりますね。

――Production Exabilitiesは、プロの開発者で構成されたチームだと以前うかがったのですが、どういった経緯で集まった集団なのですか?

奈良輪そもそもProduction Exabilitiesは、私と一柳のふたりで始めたチームなのですが、私たちは中学生のころから約20年くらいの付き合いなんですよ。当時からゲームが好きで、中学3年生のときに『RPGツクール』でいっしょにゲームを作ったのが最初です。そのゲームは完成までには至らなかったのですが……。

――竹馬の友みたいな感じですね。

奈良輪じつは一柳とは高校もいっしょなんです。ただ、そのときはお互い忙しくてあまりゲームを作ったりということはなかったです。その後、高校を卒業して、私は大学の友だちとアドベンチャーゲームを作ろうという話になって、1作開発して、「もう1作やろう」という話になって、グラフィックをどうしようかなというときに、たまたま実家に帰ったときに偶然一柳と出会ったんですよ。彼がグラフィックをやっていたのは知っていたので、「手伝ってよ」と声をかけたところから、また交流が始まった感じですね。

――一柳さんは、高校卒業後はゲーム制作の道に進まれたのですか?

一柳そうですね。専門学校に入って、その後とある会社でゲームの3Dキャラモデルを作る部門にいまして、そこからはずっとゲーム関係の仕事をしています。

――Production Exabilitiesは、20年来の友情がベースにあってできたチームなんですね。素敵な話ですね。ということは、『有翼のフロイライン』は、久しぶりに再会したときに話をしたタイトルがベースになったのですか?

奈良輪というわけではないんです。そのときはちょっとうまくいかなくて。ただ、そのプロジェクトで一柳とかといろいろと話をしている中で、「ゲーム開発って楽しそうだな」ということで、私もゲーム業界に就職しまして、しばらくはその会社でゲーム開発に打ち込んでいましたね。

 ただ、その会社ではさまざまなゲームにプランナーとして関わっていたのですが、シリーズ作品の続編が多かったこともあり、あるときふと「本当に作りたいものを作れていないな」と思う瞬間があったんですね。それが、ちょうど一柳と食事をしたときにその思いが溢れまして、「自分がおもしろいと思えるものをコンシューマー向けに作りたいんだ!」という話をして、それが『有翼のフロイライン』につながっていったという感じです。

――『有翼のフロイライン』は、おふたりが「作りたいものを作ろう!」という決意から始まったプロジェクトだったのですね。

奈良輪そうですね。

――それは、いつくらいのころなのですか?

奈良輪ちょうど25歳くらいのときですね。2016年くらいかな。

――インディーゲームの流れもきていて、少人数で作っても世に問えるみたいな空気にはなっていたかもしれませんね。

奈良輪そうですね。たしかゲームエンジンが個人レベルでも使えるようになったくらいのタイミングだったのが大きかったですね。

――25歳のときに決意があり、その後、どういった形で『有翼のフロイライン』はできあがっていったのですか?

奈良輪もともと一柳に伝えていたのは、キャラクター性をしっかり押し出したゲームを作りたいということでした。ただ、ふつうにアドベンチャーゲームを作るのはおもしろくないと思ったので、「何かほかにおもしろいことができないか」と考えていたなかで思い浮かんだのが、“キャラクターを活かしたシューティング”でした。それが本作の原型になりました。

一柳ほかにも奈良輪からは、「軍服の女の子を出したい」とか「ストーリー込みのゲームを作りたい」と聞いていたので、その意見を押さえつつ、個人的にTPSやFPSが好きだったので、そういうシューティング的な要素も織り交ぜたゲームという形でベースを作っていきましたね。

――奈良輪さんはなぜキャラクターにこだわったのですか?

奈良輪ものすごくシンプルに言ってしまうと、かわいい女の子が出てくるゲームを作りたかったんです(笑)。もともとミリタリーが好きだったこともあって、女の子と軍服という組み合わせがすごく好みだったんです。私はアニメやマンガ、映画が好きでこの世界に入ったのですが、以前に所属していた会社では、なかなかIPものの作品に携わる機会がなかったので、思いが溢れたというのはあるかもしれません(笑)。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――まあ、そもそもが“作りたいものを作る”というのが本作のコンセプトなわけですからね。

奈良輪私が大切にしたかったのは、キャラクター性とストーリー性です。もともとは、アドベンチャーとシューティングを融合させた形を考えていたんです。それが、アドベンチャーとシューティングは、じつは相性が悪いということに途中で気づきまして、いまの形になりました。ストーリーをしっかり描くという部分は潰したくなかったので、カットシーンとシューティングでゲームが進行していくというスタイルですね。

一柳アドベンチャーをやめようと提案したのは私でして、その理由として、当初考えていたアドベンチャー形式だとどうしても尺が長くなってしまうんです。ゲームのテンポが悪くなってしまう。そういえば、テンポということでいうと、本作では奈良輪に制約をかけています。

――制約ですか?

奈良輪ひどいんですよ。カットシートのパートのセリフ量をA4用紙見開き分(2P分)に収めてくれと言われたんです(笑)。これがすごくたいへんで……。ストーリーの芯の部分をしっかりと伝えた上で、セリフだけで進行させないといけないので、ものすごく苦労しました。「プロなんだし、それくらいで収められるだろう」と言われて、「これは俺への挑戦状だな!」と思いました(笑)。

――おもしろいですね(笑)。それは奈良輪さんに対する信頼感の表れでもありますね。

一柳そうですね。これくらいの時間に収めたいというところから逆算して、A4用紙2枚分という要望を出しました。

奈良輪カットシーンでは、プレイヤーはやることがなくて、どうしても見ているだけになってしまいますよね。実際に組んでもらったときに、3分以上のカットシーンがあると、とくに最後のほうは長く感じられるんです。そういうところは、どう切り詰めるかで、ふたりで相当意識していました。

――A4用紙2枚で収めるためにどのような苦労をされたのですか?

奈良輪まず、主人公のクラーラとエーリカが独白しているスタイルにして、過去を振り返っているような形にしています。情景描写などは取っ払って、何があったかだけをできるだけ短い言葉で連ねていく感じです。さらに、1行あたり24文字×2行までという制限を入れて、一度に目に入るところの部分を文節で区切るという映画の字幕のようなカット割りにして作っていきました。

 ものすごく苦労して書いて、一柳に見せたら、「いいね!」という感想が返ってきました(笑)。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――(笑)。ところで、クラーラとエーリカというふたりのキャラクターは、どのようなアイデアで生まれたのですか?

奈良輪もともとストーリー自体は“成長”をテーマにすることを想定していたので、完璧な主人公をひとり置くのではなくて、ふたりの主人公を主軸に物語を描いていくつもりでした。ふたりのキャラクターが互いに影響を与え合いながら成長する物語という感じです。

 ふたりがどのように交わり、成長していくのかという部分を考えたときに、性格は真逆にすることにしました。クラーラは明るい陽の性格で、対してエーリカは冷静な陰の性格ですね。正反対にすることで真逆のふたりの対比構造になるので、ストーリーも描きやすかったですし、物語自体にも厚みがでたと思います。

――一柳さんはデザインも担当されたとのことですが、奈良輪さんのアイデアを受けてどのようにデザインにしたのですか?

一柳最初にキャラクターのアイデアを聞いたときに、クラーラは金髪、エーリカは寒色系の髪型で、ちょっと釣り目の女の子にしようと、だいたいイメージはついていました。

――キャラクターデザインはすんなりと決まったんですね。

奈良輪そうですね。一柳からラフをもらった段階からほぼ変わってないです。

一柳デザインには個人的に好みの要素も取り入れたので、それを奈良輪も気に入ってくれて、すぐに決定しました。お互いの好みは知り尽くしている感じですね(笑)。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――メカデザインについても、一柳さんが担当したのですか?

一柳メカデザインについては、放任主義みたいな形です(笑)。別のおふたりの3Dモデラーの方に、自由に作っていただきました。

奈良輪放任という意味では、サウンドもまさにそうでして、私の友人のサウンドクリエイターに、「お前が思う『フロイライン』の曲を作ってよ」とお願いしたんです。上がってきたものは本当にイメージ通りで、作品にしっかりと合う音楽を作っていただけました。

――開発の人選に関しては、実力的には申し分のない、気心のしれた方たちにお願いしたということで、スムーズに進んだと言えそうですね。プロがプロを知るというか……。

一柳そうですね。彼らが作り上げてくれたものに関しては、ゲームに入れるうえで一部調整してもらったりもしましたが、基本的にはあまり修正を加えずにそのまま使っています。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

アニメで観たようなケレン味のある演出を目指したシューティング部分

――続いて、ゲーム部分のお話に移りますが、シューティングパートで意識された部分はどのような所だったのでしょうか。

奈良輪ストレスがなく、爽快感のあるものを目指しました。たとえば、体力は自動で回復したり、弾が飛んできたときに側転して回避できたり、一気に加速して敵の後ろに回り込めたり、空を自由自在に飛べたり、弾切れを気にせず戦える、などです。“自由に空を飛んで、敵に弾を撃ち込んで倒す気持ちよさ”というのが理想でした。

一柳開発当初は仕事をしながらの作業で制作があったので、お互いストレスを抱えていたんです。そのため、「ゲームを作るならストレスを抱え込まないような爽快感のあるものにしたい」という思いもあったのかもしれません(笑)。それは半分冗談としても、“空を自由自在に飛べる”、“弾薬を気にせずに戦える”、“体力も自動で回復する”というように、極力プレイヤーにストレスがかからないゲーム設計にしています。

奈良輪リアルな飛行機の空戦だと、どうしても後ろに下がったりできないですよね。でもフロイラインは人型なので、後ろに下がったりするなど、ふつうの飛行機ではできないような動きができるんです。本作では、リアルというよりも、アニメとかでよく見るようなカッコいいと思える空戦を目指しました。

――アニメっぽい空戦というのは、ビジュアルを見るだけでも伝わってきますね。

奈良輪はい。アニメみたいに多弾ロックオンして、糸のような煙を出しながら一気にミサイルが飛んでいったり……とかですね。チーム内には「ケレン味があるものにしよう」と言っていたのですが、それらが今回うまく実現できて、爽快感を生んでいると自負しています。

――ケレン味ですか?

奈良輪私の中での考えですが、ちょっと大げさに表現するというところですね。リアルにすると空戦ってすこし地味ですが、そうではなくて、みんなが思う空戦というか、ちょっと誇張されているけれどカッコいいと思わせるものですね。たとえば、加速したときに本来であれば絶対に出ない音波のようなエフェクトが入ったりするなど、いい意味でゲームやアニメのような“嘘”をつきたかったんです。

 空戦中のセリフの掛け合いひとつとっても、空戦っぽさとリアル路線をうまく交わらせてやっていたりします。彼女たちは空を飛びながら「明日は何を食べる?」「あとでお茶飲みに行こうよ」なんていう話もしますからね(笑)。そういう実際にはありえなさそうでも、アニメやゲームだから許される描写というのを意識しています。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――アニメファンが、「この空戦のシーンを遊んでみたいな」という願いをかなえたのが『有翼のフロイライン』とも言えそうですね。

奈良輪私の中のイメージはそうでした。とくに『マクロス』シリーズの空戦にはものすごくインスパイアを受けています。『マクロス』の空戦はものすごくかっこいいですし、そういうシーンを自分が操作したらもっと気持ちがいいだろうな……というのを実現しています。ミサイルとかも、40発ロックオンして一気に撃つこともできますからね。

一柳操作性もかなりシンプルにしています。しっかりとしたロボットアクションだと、コントローラーのボタンすべてを使って操作したり、機体の動かしかたも細かく調整することになると思うのですが、本作に関してはそういうロボットゲームを遊んだことがない方でも気軽に遊べるように、なるべくシンプルな操作方法にしています。

奈良輪とくに、フォーカスターゲットは、敵を注視してその敵を撃てば、自動的に偏差射撃で弾が当たるという機能です。よく狙って撃つというよりは、いかに快適にプレイできるかに主眼をおいています。とにかくゲームをクリアーできないストレスをできるだけなくしたかったんです。

 アニメとかが好きな方で、「お話は見たいけど、ゲームは苦手だな」という方でも楽しんでいただけるようにしています。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――アニメのような演出という点では、声優を起用された部分もアニメを意識されてのことでしょうか。

奈良輪そうですね。本作では、アニメ的な要素として、オープニングとエンディングも歌入りの楽曲を入れています。演出もアニメ寄りにしたいと考えていました。そうなると、ゲーム中もボイスがあった華やかなものにしたいと考え、声優さんを起用させていただきました。実際にボイスが入るとものすごく世界が広がって、字面だけだとなかなか感じられないクラーラとエーリカの感情が伝わってきて、とてもよかったです。

――演出もアニメ寄りにしたとのことですが、カットシーンの演出は相当こだわったのですね?

奈良輪はい。カットシーンのパートについては、ひとつの出来事について、エーリカとクラーラのふたりの視点で描かれていて、カットシーン→シューティング→カットシーンでひとつのパートが終わる形になっています。とくに僕たちが気にしていたのは、いかに少ない言葉でうまく伝えるかということと、ふたりの視点でいかに話を立体的におもしろく見せていくかという部分です。本作はストーリー全体を通してひとつの物語になっていて、そこに大きな謎も隠されています。ふたりの視点で描くからこそ、時間軸も違いますし、多層的に描くことができる。

 また、私がもともと映画好きということもあって、いかに印象的にカットとセリフを見せるかというところは注力しています。あとはシューティングパートでもキャラクターの掛け合いがあるので、しっかりリンクさせてシューティングパートとカットシーンでひとつの物語になるように描いていくといくところには力を入れていますね。

一柳私は、カットシーンの画作りの部分では、光の表現に気を配っていて、印象に残るような画作りを心がけたつもりです。

――かっこいい画作りというのは、ある意味ではセンスの領域になってしまうかもしれませんね。

奈良輪私は基本的にシナリオを書くときに、頭の中で絵を思い描いてみて、それを文字に起こしていくように作っているのですが、私の頭の中のイメージと違いないものを一柳が作ってくれているので、安心感はあります。一方で、自分が想像もしていなかったようなカット割りとかもしてくれたので、僕自身も「こうくるのか!」という楽しさがありましたね。

――お互いが切磋琢磨しあっているのですね。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

「ゲームを作る者として成長した5年間」を経て、Production Exabilitiesの今後は?

――いよいよリリースとなった本作ですが、今後アップデートの予定はあったりするのでしょうか。

奈良輪シューティングパートのプレイフィールの向上を目的としたパッチ配信を予定しています。また、いま実装されている難易度にプラスして高難易度のパッチも追加させていただく予定でいます。本当に難しいモードなので、「クリアーできるものなら、してみてください!」みたいな感じです(笑)。現時点では、“予定調和”といういちばんやさしいモードと、イージー、ノーマル、ハードの4種類があるので、5種類目のモードですね。

――“予定調和”という名称のモードがあるのですね。

奈良輪はい。ベリーイージーよりもカッコいいかなと思いまして。あとは本作では熟語を多く使っていまして、各章のタイトルも漢字2文字の熟語なんです。全部意味はあるのですが、そもそもタイトルからしてが『有翼のフロイライン』ですからね。そんなこともあり、いちばん簡単なモードと、いちばん難しいモードは、少し変わった名称にしようということで決めました。

――パッチで追加されるいちばん難しい難易度の名前は何と言うのですか?

奈良輪“パラドックス”という名前にしています。逆説ですね。クリアーできるかどうかというできる限り難しい難易度に設定しています。

一柳“パラドックス”という名前付けには理由がありまして、先ほど本作は限りなくストレスがないゲームプレイを提供するとお話をさせていただいたのですが、“パラドックス”は逆に、もともとの快適さに制限を加えてゲームプレイにシビアさを追加するという形になるので、“パラドックス”イコール矛盾みたいな感じになっています。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

奈良輪ゲームコンセプトからの矛盾ですね。ただ、遊びとしてそういうものがあってもよいだろうという判断です。私たちが考えるモノだけを押し付けるのはよくないと思っています。選択肢としてあるのはいいと思うのですが、それを選ぶ自由はユーザーさんにあるので、そういうモードもご用意しました、という感じですね。

――なるほど。そもそも“予定調和”というネーミングからしてユニークですね。作り手の手のひらの上で、予定調和の世界を楽しんでください、みたいな意味合いでしょうか。

奈良輪手のひらの上で予定調和というよりも、「ここはクリアーすることが予定された世界なので、苦手な方も安心してお楽しみください」という感じですかね。シューティングが苦手だけど、アニメを見るような感覚でシューティングを楽しんでみたいとか、お話を知りたいという方がプレイしてくださればうれしいです。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間

――それにしても、25歳から制作を始めて約5年かかったということですが、ここまでかかるとは思っていなかったものの、やりたいことをやっているうちに結果として5年かかってしまったという感じでしょうか。

奈良輪そうですね。当初は兼業ということもあって、制作の時間を取るのが難しかったということもありまして、時間が経ってしまったんです。あるタイミングで本腰を入れようとなって、本来であれば5年はかからないだろうなとは思っていたのですが、やりたいところであったり、自分の日々の生活に追われていたり……といううちに、5年かかってしまった感じです。

――本腰を入れたタイミングというのは、パブリッシャーが決定した段階ですか?

奈良輪その時点ですぐにというわけではなかったです。私も当時、会社で仕事をしていましたし、一柳もフリーで別の仕事をしていたので、なかなか専業でやろうという気にはならなかったのですが、自分たちも日々の生活の中で思うところがあって、「本腰を入れて一生懸命やってみよう!」と思ったのが、一昨年(2019年)の12月くらいですね。

――少し乱暴な質問をさせていただきますが、この5年間はおふたりにとって何だったのでしょうか。

奈良輪何だったんでしょうね(笑)。クリエイターとしてというか、ゲームを作る者としては成長した5年間だったと思います。いろいろなものの見方とかもできるようになったかなとは思います。まだわからないですが、10年後くらいに振り返ったときに、「あのころは人生でいちばん大事な5年間だったのかな」と思えるような気がしています。

一柳そうですね。言い訳のようになってしまいますが、本業と本作の制作を両立させるのはだいぶ骨が折れる感じでしたので、当初は2年くらいに収めたいなと思っていたのが、結果として5年に延びてしまった感じです。

奈良輪いろいろなことがありましたね。

――ケンカをしたりとか?

奈良輪ケンカは一切なかったですが、お互いの心身ともにいろいろとありました。一柳にはわがままを聞いてもらったりしました。「オープニングは絶対にフルコーラスで作るんだ!」とか(笑)。本当にこだわりを実現できてよかったです。ゲーム開発のたいへんさや醍醐味を全部体験することができました。

――そんな『有翼のフロイライン』はシリーズ化の予定はあるのでしょうか?

一柳そうですね。

奈良輪本作のストーリーは、私たちが構想している全体の2割くらいなんです。ですので、次回作では残りの8割も描ければいいなとは思いますが、みなさんに応援していただけるようでしたら、これからもがんばって作りたいですね。もっとパワーアップした『有翼のフロイライン』をお見せできればいいなと考えています。

――では、Production Exabilitiesとしての今後を教えてください。

一柳私自身は、現時点では別の仕事に移行しているのですが、チームとしてのスタンスは、“ほかの仕事には行くけれども、そこで得た知見をProduction Exabilitiesに持ち帰ってくる”みたいな感じで考えています。

奈良輪これで終わりというわけではなくて、私もほかのシナリオなどを書いたりしながら、つぎの作品に向けて進めていきたいという気持ちはあります。それぞれ別の仕事はしつつ、Production Exabilitiesとしてもつぎのタイトルに向けて準備を進めていきたいです。

――ふたりの仲は永遠に続くということでしょうか。

奈良輪実家も近いですしね(笑)。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』制作陣インタビュー。「キャラクターを活かしたシューティングを!」自分たちの作りたいものを貫いた5年間
ふたりの旅路(ゲーム作り)は続く。

――では、最後にメッセージをお願いいたします。

一柳この1作を作るために本当にいろいろな方が関わってくださって、各々が自分のやりたいことを実現できたタイトルになっています。僕としてはそれをきちんとまとめて、リリース時に楽しんでいただけるようにがんばってきたつもりです。いろいろな方に楽しんでいただきたいですね。

奈良輪本当に5年間いろいろな方に助けていただいて、私も一柳も命を削りながら作ってきました。参加してくださった皆さんがクリエイターとして好きなものを作ってきてくれたのですが、プロの品質で作ってくれたものを、うまくまとめ上げて出せたのは、本当にうれしいです。本作には、いろいろなこだわりを入れ込みましたが、とにかくユーザーさんに楽しんでいただければ……というのがいちばんの願いです。今後、『有翼のフロイライン』をシリーズ化させたり、Production Exabilitiesとしても今後ゲームを作っていきたいと思っています。ぜひ本作をプレイしていただいて、これからも応援していただけるとうれしいです。


 『有翼のフロイライン Wing of Darkness』では、今後パッチ配信でのアップデートを予定している。まずはSteamにて“シューティングパートのプレイフィールの改善”と“超高難易度「パラドックス」の実装”を行い、順次Nintendo Switch版とプレイステーション4版でも対応していく予定とのことだ。