餅月あんこのゲーセンに行きたい!

  • 記事タイトル
    餅月あんこのゲーセンに行きたい!
  • 公開日
    2021年07月30日
  • 記事番号
    5696
  • ライター
    餅月あんこ

第29回「STG大座談会をしたい!① ~『コットン リブート!』編 その1~」

今年2月に、魔女っ子シューティングゲームの名作のリメイク、『コットン リブート!』をリリースされた、BEEPさんからはプロデューサーの丸山満さん、そして開発担当のロケットエンジンさんから近藤勇さん。そしてエムツーさんからプランナーの松下佳靖(カシオ松下)さん、前回のダライアス女子会に引き続き、『GダライアスHD』ディレクターの辛島由紀子さんという、話題のシューティング作品のキーパーソンの皆さまにお集まりいただいて、STG大座談会をさせていただきました!
もともと仲も良くていらっしゃるクリエイターさん同士のクロストーク、どうぞお楽しみください!

* 対談にご参加いただいた皆さま *

BEEP 丸山満さん

ロケットエンジン 近藤勇さん

エムツー 松下佳靖さん

エムツー 辛島由紀子さん

餅月

『コットン』は、どのようにリブートしたの?

皆さま、お忙しい中、ありがとうございます。私は近藤さんと松下さんとは今、オンラインで初めてご挨拶させていただいたのですが、みなさま直接お会いしたことがおありになるんでしょうか?

はい、おひさしぶりでございます。

顔見知りですね(笑)。

私がシューティングゲームへたっぴで、皆さまの作られたゲームの1面もろくにクリアできていないような腕前で、こんな豪華なさま様にお話を聞かせていただくの大変恐縮なんですが、よろしくお願いします……! ではさっそくなのですが、まず『コットン リブート!』のお話を丸山さんと近藤さんにうかがっていきたいと思うんですが……移植やバージョンがすごくたくさんあるんですね。

~ これまでにリリースされた『コットン』シリーズ ~

1991年 『コットン』(アーケード)
1993年 『コットン』(PCエンジンスーパーROM2)
     『コットン』(X68000)
1994年 『コットン100%』(スーパーファミコン、PlayStation)
     『パノラマコットン』(メガドライブ)
1997年 『コットン2』(セガサターン、アーケード)
1998年 『コットンブーメラン』(セガサターン)
1999年 『コットンオリジナル』(PlayStation)
2000年 『コットン -FANTASTIC NIGHT DREAMS COTTON-』(ネオジオポケットカラー)
     SuperLite1500シリーズ『コットンオリジナル』(PlayStation)
     『コットン メガアプリ対応』(S!アプリ)
     『レインボーコットン』(ドリームキャスト)
2007年  SuperLite1500シリーズ『コットンオリジナル』(PlayStation3、PlayStation Portable、PlayStation Vita)
2019年 『コットン』(X68000復刻版)
2020年 『コットン』アストロシティミニ
2021年 『コットン リブート!』(Nintendo Switch、PS4)
  
  

そして今年リリースされたのが『コットン リブート!』なのですが……この企画はいつ頃から考えられていたんでしょうか?

『コットン リブート!』タイトル画面

企画は2018年からです。『トラブル☆ウィッチーズ』っていうゲームを作っていまして、そのコラボキャラクターにコットンを使えないかとサクセスさんに相談したところ、ご快諾いただけまして。

へぇ~、そんなキッカケが。

『トラブル☆ウィッチーズ』の開発がひと段落したとき、このまま終わってしまうのは寂しいなと思って、『コットン』のX68000版を移植させてもらえないかとお願いしたんです。

私がBEEPに入社して数か月の頃だったんですが、近藤さんからこんな大きい話が来て、「何言ってんのかな!?」って思いました(笑)。ね、近藤さん。最初はどういう意味だかわかんなかったです(笑)。

そうでしたか(笑)。でも、丸山さんにもすごくノッていただいて。

そうですね、『コットン』のX68000版をまた世に出せるっていうのは幸せな感じでしたね。でも最初はここまで大きな話ではなかったんですよ。

まず、次の年(2019年)に、『コットン』X68000復刻版をリリースしました。
(※近藤さんより補足:「5インチ及び3.5インチ2HD×2枚組の、X68000専用復刻版です。」)

最初は、そのX68000復刻版と、あと家庭用に少し配信とかできればいいね、みたいな感じだったんです。

ところが作っていくうちに、どんどん良いものにしたくなっていきまして(笑)。

ほー!

X68000復刻版だけにとどまらず、もっと多くの人が遊んでくれるシューティングゲームにしたいな、と思うようになりまして。そこでどんどん話が大きくなっていったと。

プロジェクトとしては、普通じゃないですよね(笑)。おそらく進行担当の人がいたら怒られたと思います(笑)。

ほんとに関係者の皆さまの懐が大きいというか、ご寛大なおかげで実現したところがあります。最初にX68000復刻版の移植をしたとき、ソースコードをそのまま使うことはできなかったのでいろいろ改変をしたんですが、X68000の画面で動いてるのを見て、「ああ、コットンが復活したな~」と感慨深い気持ちでいたんですけど、やっぱりどんどん……「背景のグラフィック変えてみましょうか」とか、だんだん話が大きくなっていきまして(笑)。

ターニングポイントは多分そこでしたね、グラフィックをいじりましょう、って言い出したあたり。いろんな作品って何でもそうだと思うんですけど、一箇所変えたら、あっちも、こっちも、ってなるじゃないですか。

確かに(笑)。

田村英樹さんが監修として参加!

で、ここで登場するのが、元祖コットンのキャラクターデザインの田村英樹さんなんです。松下さんはよくご存知だとは思いますが。

はい(笑)。

田村さんに、最初はキービジュアルだけをお願いしていたんですけど、ご本人も思い入れのある作品とキャラクターなので、他もいろいろと手を加えたいとおっしゃってくださって。

おお~。

とはいえ、一から全部作っていただくわけにいかなかったので、監修という形で参加していただきました。それで、今回の『コットン リブート!』の形ができてきたという感じです。グラフィックは、近藤さんやロケットエンジンさんのプログラマーさんたちががんばってくださったんですけど、そこに田村さんが参加してくださったという。田村さんのことは松下さんのほうがくわしいかもしれないですね(笑)。

私はデザイン学校に行っていたんですが、学生時代に短い期間、サクセスさんでアルバイトしていたんですよ。

そうなんですか、え~!

もともと『コットン』がすごく好きで、『コットン』が載っている雑誌は全部買っていたんですが……イラスト投稿の募集があれば送って、大きく取り扱ってもらってたりしてたんです(笑)。

【一同】 へぇ~!
  

そしたら、サクセスさんで田村さんの隣の席だったんですけど……。

【一同】 (笑)
  

隣の席!? すごいですねそれ!!

私は田村さんを神と崇めていて、いろいろとお話を聞かせてもらってたんですが、全然イメージしていた感じの人ではなくて……。いつも「甘いものない?」っていう話だけをされるんですよ(笑)。

【一同】 (笑)
  

それで、「たまたまあります」って言って、たまたまあるわけないので用意してクッキーとかを持って行くようになったんですけど……。

わははは、ファンの鑑!

私は『コットン』の話を聞きたくてしょうがないので(笑)。でも、言ってることが、ホントか嘘かわかんないんですよ。

ええっ。

田村さんのイラストが大好きで、「描いてください」って言っても、絶対描いてくれないんですよ。

あぁ~! そんなトリッキーなかたなんですね。

で、やっと描いてくれたのが、「ルーツ」っていう奴隷制度を扱ったアメリカのドラマの絵で……。私がほしくてしょうがないコットンのイラストと全然違うんですけど、「ありがとうございます」ってありがたくいただいて(笑)。これもいろんな説があって本当かわからないんですけど、「どうして『コットン』を作られたんですか?」って聞いたら、田村さん、会社に入ったときに魔女のシューティングゲームが制作途中で、キャラクターがリアルでダークな感じだったらしいんですが、もうちょっとポップでキャッチーなキャラクターにしようって、田村さんが描いたとおっしゃってました。でも他のいろんな人の証言を聞くとちょっと違ったり……謎に包まれています(笑)。

シルクは○○○。○○における○○○。○だった!?

元祖『コットン』のプログラマーが、『グラディウス』みたいな横スクロールのシューティングゲームを作りたかったっていう話を聞いてます。『コットン』でシルクがついてくるじゃないですか。あれは『グラディウス』におけるオプションみたいです。

えええええ~!

とはいえ、同じ動きはしてないですよ。全然違いますよね。

シルクの動きはものすごく複雑にできてまして、コットンの挙動で方向が変わったりするものですから。

『コットン リブート!』のシルクの動きはビックリしました。

入力を前に入れると上か下に行ったりしますよね。それが最大6匹つながるんですけど、何匹目までは上、とか複雑に決まっていて。もともとシルクが主人公だったんじゃないか? っていうくらいシルクの動きは作り込まれてますね。

へぇ~!(シルクの数えかたは「匹」なのか……? と思いつつ)

松下さんが言っていたとおり、その制作途中のゲームを見たときに、田村さんが設定や世界観を追加して新たなキャラクターを作り上げたんじゃないかなって思うのが、最初の『コットン』ですよね。

私が高校生の頃、まわりで『コットン』が話題になってプレイしに行ったんですけど、そのときに本当にビックリしたんですよね。「こんなゲームがあっていいのか!」って。それまでのゲームってけっこう真面目なんですよね。ストーリーも「世界を助けろ!」とか、「怪物が出たからやっつけろ!」とか。『コットン』はそういう、世の中のことに特に向き合ってないんですよね。

あははは!

それがいい意味で凄いなと思って。こういう世界ってなかなかなくて、真面目なストーリーか、ギャグだとギャグに全振りするか、そのどちらかだと思うんですが、『コットン』はオープニングで「助けてください!」って言われてるのにスルーするっていう……オープニングからビックリするわけですよね(笑)。それで「大事なのはWILLOWだ」、っていう。今の時代にも合ってますよね、個人ひとりひとりの考えかた、価値観があるっていう。これにはものすごく衝撃と影響を受けました。これは田村さん独特の世界観だと思いますね。

なるほどー……!

アニメとかでもなかなかないんですけど、そういう世界観をそのまま、何も奇をてらわずゲームに持って来られたっていう。デモシーンとかも含めて、別世界の人がガチでアーケードゲームの世界観を作ったっていう驚きはすごくありましたね。その頃までのゲームの作りかたって、最後にストーリーや世界観を考える、っていうことも多かったと思うんですよ。マニュアルを作るときにやっとストーリーが生まれたとか(笑)。『コットン』は真面目なふりをしつつバカなことをやろう、というのが素晴らしいですよね。これはすごく難しいと思うんです。私はそういう世界観が好きなので、すごく惹かれましたね。

田村さんにキャラ設定のことを聞いたんですよ。「コットンとはどういうキャラクターなんですか?」って。一言で返ってきたのが、「食いしんぼう」だと(笑)。「WILLOW」っていうお菓子を食べるため、その欲望のためだけに動いていると(笑)。

(笑)そうなんですね~。じゃあ、田村さんはビジュアル面だけじゃなくて、キャラクターの設定とかも考えられたんですね。

私の印象では、田村さんご本人がコットンみたいな……そんな感じなんです。

田村さん、めちゃめちゃ気になります!

本当かどうかわからないことを言うんですよ(笑)。「君さぁ」、「ハイ」、「コットンの続編考えてるんだよ」、「あっ、そうなんですか!」って。そしたら「暗黒魔王が出てくる」って言うので、「スゴい世界ですね!」って言ったら、「あんこを食う魔王が出てくるんだけど、どう思う?」って言うんですよ。よくわからないなりに「えぇ~っ、すごい!」って言ったら、「そんなにほめるなよ……」って。

【一同】 (笑)
  

「ダジャレなんですか……?」とは聞けなかったです(笑)。そしてけっきょく暗黒魔王は出てこないので。

出てこないんだ!

どうなったのかとずっと考えてるんですが、たぶんご本人忘れてらっしゃると……(笑)。そういうかたなんですよね。

センスが凄いですよね。

……田村さんのお人柄と世界観がすごく気になってきました。

田村さんはいろんな作品に携わられてますが、アニメーターとしての作品だけでもすごいんですよ。

今、お話を聞いたら、違う方向にまたすごいなと思いました。

機会があれば、田村さんをお呼びしてお話をお聞きしたいですね。

冗談ばっかり言ってくれるんでしょうか!

田村さんはいつも明確なビジョンを考えられてるんですが、難しくて、まわりの人がまったくわからないんですよね。『パノラマコットン』でも、メケメケ君っていう名前だったと思うんですけど、糸みたいな不思議な線で描かれたキャラクターが出てくるんですよ。それをものすごく丁寧に作画されて、こだわって作られたらしいんですけど、それがゲーム中にワーッと出てくるんですよ。メガドラ版制作を見ていたかたが「何でこれにそんなにこだわるのかわからない」ほどだって言ってました。あっ、ついついたくさん喋ってしまいました。田村さんの話になるとついつい……。

『コットン』の世界観は田村さんありき、ということがすごくわかったのと、田村さんのお人柄がものすごく気になりました!

次回もさらに『コットン リブート!』のお話、ゲーム性や音楽、声優さんオーディションなどについて聞いていきます!
お楽しみに~!

Ⓒ2021 BEEP / 1991-2021 SUCCESS

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