【特別企画】

ファミコン版「スターフォース」が今日で38周年!

全国の子供たちが熱狂した、傑作シューティングの軌跡をプレイバック

【ファミコン版「スターフォース」】

1985月6月25日 発売

 ハドソンのファミリーコンピュータ用シューティングゲーム「スターフォース」が、本日で発売38周年を迎えた。

 本作はファイナルスター(自機)を操作して、スタービームを発射して敵を破壊していく縦スクロールシューティングゲームで、1984年にテーカン(※後のテクモ。現在のコーエーテクモゲームス)が発売したアーケードゲームを移植した作品である。本来ならば、まずは元祖アーケード版の稼働した月(※1984年9月)に合わせて「スターフォース」を語るべきかもしれないが、今回あえてファミコン版をピックアップしたのは途轍もなく深いワケがあるからだ。

 その理由は2つ。ファミコン版は、発売前からマンガ雑誌「コロコロコミック」や「コミックボンボン」などで盛んに紹介されたこともあり、子供たちの間で大人気を博したこと。本作の関連記事や漫画に登場したのを機に、当時はハドソンの社員であった高橋名人と、大学生だった毛利名人が子供たちの間で広く知られるようになり、ともにカリスマプレーヤーとなったことでも本作は特筆に値するだろう。そして、もうひとつの大きな理由は、もしかしたら今日のeスポーツにつながるかもしれない、歴史に残る大規模なゲームイベントの開催が本作によって実現したからだ。

 以下、本稿ではファミコン版「スターフォース」ならでの魅力と、本作を使ったイベントの衝撃を、筆者の実体験も交えつつ改めて振り返ってみよう。

【スクリーンショット】
スクリーンショットはファミコン版「スターフォース」より

抜群のスピード感と、数々のボーナス得点技を盛り込みプレーヤーを虜に

 本作の最大の特徴は圧倒的なスピード感だ。大半の敵キャラクターは、初見では目が追い付かないほどの、当時としては異次元レベルのスピードで動き回り、プレーヤーたちの度肝を抜いた。加えて、敵が撃つ弾のほとんどはファイナルスターの位置に向けて正確に飛んで来るため、息を継ぐヒマがないほどのハイテンポかつスリリングな戦いが楽しめた。

 「スクランブル」や「ゼビウス」などのように空中、地上用の2種類のショットを使うのではなく、空中物も地上物もスタービームという1種類のショットで倒せて、なおかつ地上物は一切攻撃せず、ファイナルスターが触れても一切ミスにならないのも、本作ならではの素晴らしいアイデアと言えるだろう。たまに出現する、友軍機のパーサー(※正確には、敵のカルデロンを破壊するとパーサーが出現する)と合体すると、ファイナルスターの移動速度と連射効率がアップし、ノリノリのBGMに変わってプレーヤーにさらなる快感をもたらすアイデアもこれまた素晴らしかった。

 また、ボディが黄金色に統一され、あるときはきれいに隊列を組み、またあるときにはトリッキーな動きを披露する敵キャラのデザイン、およびダイヤモンド型の敵弾が描く軌道の美しさも本作ならではの素晴らしいところ。星々が輝く宇宙をバックに流れる、タイル状に整然と並んだ地上のマップおよびキャラクターもこれまた美しく、ある程度ステージが進むと出現するビゴーラ(※大型の地上物)は、まるでSF映画に出てくる宇宙人のように不気味な顔のデザインに変わるのもかなりのインパクトがあった(※マニュアルには「神々の顔を形どったもの」と書かれてはいるのだが……)。

【バリエーション豊かな敵キャラクター】
左右ジグザグに、高速で動きながら降下してくるゾフ
静止後に大量に弾を撃つガドーハ。画面外に飛び去った直後、まれに背後から弾を撃ってくるのも実にいやらしい
自機の背後に一度回り込まれると、反撃する機会がなくなってしまうネイラ
超高速で突っ込んで来る、手裏剣のような形状のスーパーソニック
突然背後から出現するガイラも厄介な敵。先のエリアに進むと、不気味な顔が描かれた地上物が続々と出現するのも本作ならではの特徴だ

 本作を語るにあたり忘れてはいけないのが、さまざまな隠しボーナス得点が獲得できる裏技の存在だ。裏技は、本作の発売前から「コロコロコミック」などの媒体で繰り返し紹介され、裏技を成功させるためにはかなりの連射スピードが必要とされたので、プレーヤーは連射スピードを向上させる練習も必然的に熱中することとなった。

 中でも特に有名だったのが、合体浮遊要塞のラリオスをコアが光ってから(合体のモーションが始まってから)合体するまでの間、およそ1.5秒の間にショットを8発撃ち込んで破壊すると5万点がもらえる裏技だ。ボーナスを獲得するためには、原則としてコアにギリギリまでファイナルスターを接近させる必要があり、もし失敗したら後方から迫って来るパーツにつぶされてしまうので、まさに死と隣り合わせ。この裏技をマスターしたプレーヤーは、みんなのヒーローになれたと言っても過言ではないほど、本作のゲームの腕を示すバロメーターにもなっていた。

合体前にラリオスを破壊すると5万点ボーナス。連射スピードと度胸が問われる裏技だ

 4発撃つと破壊できる地上物のジムダが、縦にズラリと並んだ「ジムダ・ステギ」地帯では、ジムダを縦方向に10個連続で破壊すると8万点のボーナスが獲得できる裏技も、本作のプレーヤー間では有名だった。「10連発アタック」は、指あるいは腕のケイレンに耐えつつ長時間連射し続けることが必要で、しかも狙っている間は空中の敵を(ほぼ)撃てなくなるため、8万点ものボーナスを獲得するのは非常にリスクが高かった。

 そして、本作最大の謎だったのが、全マップ中の1か所にだけ隠された、破壊すると100万点の特大ボーナスが入る隠れキャラクターのゴーデス(クレオパトラ)。マップのほぼ最終地点に描かれた地上絵がゴーデスの出現場所のヒントになっていたが、マニュアルに掲載された写真はもちろん、筆者も当時購入したケイブン社の攻略本のマップでも黒塗りに修整されていた。また、本作の発売から数か月後に発行された「コロコロコミック」には、綴じ込み付録でゴーデスが出現した場面を撮影したカラー写真が、場所が特定されないように修整が入った状態で掲載されたと記憶している。

 「コロコロコミック」などの記事中では「裏技の集大成」とも喧伝されていた本作だが、その看板にウソ偽りは一切ナシ。豊富な敵キャラの攻略パターンを編み出すだけでも十分に楽しめるが、「『ラリオス8連射』はマスターしたから、次は『ジムダ・ステギ10連発アタック』を狙うぞ!」といった要領で、プレーヤーは本作にますます熱中してしまうのだ。

 ほかにも、ボーナス得点こそ入らないが、地上に7個の「?」マークが並んだマジッカをスタービームで撃ち、笑顔のマークの「ケラ」が出れば1UPするフィーチャーもあった。当初は「ケラ」が出るかどうかはランダムで決まると思われていたが、後に「ケラ」の出現場所が得点の百の位によって変化する「裏技」が解明されている。

【隠しボーナス得点の数々】
特定の場所を撃つと出現する「H」マークの隠れキャラ、ヒドンを破壊すると2000点が加算される
「ジムダ・ステギ10連発アタック」に成功すると8万点ボーナス。こちらも敵の攻撃を避けつつ連射する必要があるのでちょっと難しい
100万点ボーナスの隠れキャラ、ゴーデス(クレオパトラ)の出現場所を示した地上絵

日本一プレーヤー決定戦「全国キャラバン」の開催を実現

 かつて、ハドソンは毎年夏休みの時期になると、全国各地のデパートなどの施設を利用した日本一プレーヤー決定戦「全国キャラバン」を開催していた。その記念すべき第1回の「TDK全国キャラバンファミコン大会」に使用されたソフトが本作である。

 当時は「コロコロコミック」とタイアップし、大会の告知や開催要項、攻略のコツや結果レポートが本誌に盛んに掲載された。また「ファミコンロッキー」などの漫画の題材にも「スターフォース」が度々使用され、前述したように高橋名人と毛利名人も広告塔となって盛んに登場した。大会期間中は、高橋名人が南キャラバン(主に西日本方面)、毛利名人が北キャラバン(東日本)のMCを担当した。ちなみに本イベントに協賛したTDKは、参加賞として当時の人気バンド、チェッカーズの写真をプリントした、紙製のカセットテープのカパーを提供した。

 筆者も小学生だった当時、某県で開催された本大会に出場したが、当日の参加者は確か500人。そのほとんどは中学生以下の男の子で、女の子および高校生以上の参加者は数えるほどだった。当日は地元のテレビ局が取材に訪れ、夕方のニュース番組で放送されたと記憶している。

 本大会は全国60か所で開催され、参加者の合計は何と2万4千人! 動員数は8万9千人も集まり大好評を博したことから、以後ハドソンの定番イベントとして定着した。eスポーツという言葉が生まれるずっと以前の時代から、これほどまでに大規模な日本一プレーヤー決定戦が開かれたことでも、本作は歴史に残る一本なのである。(※人数は高橋名人のYouTubeチャンネルにより引用)

【1985 第1回全国キャラバンドキュメント】
筆者が「全国キャラバン」会場でもらったグッズ類。チェッカーズのカセットテープのカバー(上)と「ファミコンロッキー&ハチスケ」ステッカー(右)と参加整理券

 なお、元祖アーケード版「スターフォース」は、プレイステーション 4/Nintendo Switch向けに「アーケードアーカイブス スターフォース」として配信されている。オンラインランキングにも対応しているため、気になる方はぜひプレイしてみてほしい。

「アーケードアーカイブス スターフォース」のストアページ

・プレイステーション 4版
・Nintendo Switch版