プレイスキル上昇×アンロックが「おもしろさの最大瞬間風速」を叩き出す『Go Mecha Ball』を知っているか
アーケードの魂にローグライトが乗った逸品
Whale Peak Gamesが開発したインディーゲーム『Go Mecha Ball』を遊んでいたのだが、困ったことに本作には進行不能バグが存在していた。
公式Discordサーバーを覗いたところすでにバグ報告が行われていたので、近いうちに修正されるだろう。それまで待てばよい。……待てばいいのに、つい起動して遊んでしまう。
そのバグは運がよければ回避できなくもないのだが、次のステージでまた同様の問題が発生する可能性が非常に高い。つまり実質的に進行不能なのに、避けられるかもしれない希望があるゆえに、何よりおもしろいのでついプレイしてしまうのであった。
まさか進行不能バグとおもしろさのハザマに取り込まれるようになるとは。『Go Mecha Ball』は急に突風が吹いてくるかのような魅力があり、それゆえに進めなくともつい遊んでしまうのであった(もちろん、現在はすでに進行不能バグは修正済みだ)。
一見するとよくあるローグライトだが、ブーストによる駆け引きが光る
本作の主人公は、謎のポータルの異常発生によって追いやられたイタズラネコたち。彼らはポータルに対抗するためのメカスーツを作り出し、ロボットのような敵を排除することになる。
ジャンルとしてはローグライトの全方位シューティングである。銃を撃って敵を倒し、すべてのウェーブをクリアすれば次のステージへ。しばらく進むとボスが登場するという仕組みだ。
また、ステージをクリアするたびにアビリティやアップグレード(性能アップアイテム)を3つのうちから選択して入手できる。武器も複数種類あり、こちらは敵がドロップする形式だ。
お金は2種類あり、ひとつはプレイ中に登場するショップで消費できるもの。もうひとつはプレイ開始前に行う恒久的なアンロック要素に使う。まさしく、見慣れたローグライトといえるだろう。
本作ならではの特徴として「ピンボール風味」のエッセンスが加えられている。メカスーツはサムス・アランのように丸くなることができ、さらにブーストで敵に突撃できるのだ。なお、ステージ中にもブーストできる壁や床が用意されている。
ブースト状態は敵の弾を消すうえ、突撃を敵に当てると銃弾を落とす可能性がある。これをうまく使いこなさないと銃弾がすぐ尽きる仕様で、しかしもちろんブーストは自分ごと近づくので相手から攻撃を食らうリスクも増えるのである。
銃で遠くから撃つほうが安全だが、それでは銃弾が尽きる。ブーストを駆使すれば銃弾が手に入るものの、攻撃を食らう可能性も出てくる。このように、ブーストによるリスクとリターンがうまく組み込まれているのである。これはプレイヤーの腕前を試すゲームとして非常に重要だ。
3つの要素が「おもしろさの最大瞬間風速」を作り出す
……と、ここまでの説明を聞くと「ちょっとよくできたローグライト全方位シューティング」に思えるかもしれないが、本作はアーケードライクなところもポイントである。むしろ、目玉焼きハンバーグのように、アーケードの魂にローグライトが乗っているのだ。
昨今の流行でいうと、ローグライトは蓄積・育成を重視したゲームである。もちろん移り変わりもあるし作品ごとに濃淡は違うが、ものによっては基本のコンボシステムすらアンロックにしてしまうものもある。
一方の『Go Mecha Ball』はプレイヤーのテクニックによる上達の余地が大きいゲームで、慣れてくるとかなりうまくなってくる。極端に運が悪くてもなんとかなりうるくらいで、特定の技術を身につけると生存率がグッと上がるのだ。
もちろん、ローグライトなので武器やアビリティをアンロックすると相対的に難易度が下がる。いい武器・アビリティ・アップグレードを入手できれば簡単になり、とことんプレイヤーの腕を試すわけでもない。
そして、それぞれのシナジーも用意されているので、それらをうまく組み合わせるとさらにプレイヤー側が有利になる。ジャンプ中に攻撃力が2倍になるアップグレードと、高く飛ぶアビリティを組みわせれば強い、というのは言うまでもなかろうよ。
ゲームに慣れてくる、かつアンロックである程度の要素が登場すると、ボーダーラインを越える。そう、アーケードゲームのようなプレイヤーの上達、ローグライトによるアンロックによる難易度緩和、シナジー発見による爆発的な火力上昇といった喜びが一気にやってくるわけだ。
これはまさしく「おもしろさの最大瞬間風速」である。ただシナジーを見つけただけでなく、運良くいいパワーアップを引いただけでもなく、うまくなっただけではない。あるとき急に3つの喜びが噛み合ってゲームの進行が円滑になり、濃縮された楽しさが襲いかかってくるのである。
正直、『Go Mecha Ball』のデモ版を遊んでいたときはあまりピンときていなかった。しかし、「閾値を超えたときに急にプレイヤーがうまくなれる気持ちよさ」という魅力を持っているゲームなのであった。
「もっと遊びたい」と思わせる爽やかなおもしろさ
とはいえ、一定の領域を超えると急に楽しくなるということは、難易度曲線が極端ということでもある。実際、それなりに慣れてアンロック数が増えてくると、ゲームの難易度が上がってもほとんど問題なく進行できてしまう。
本作はクリアするたびひとつ上の難易度に挑める仕様だが、おそらく最初の難易度をクリアしたあとはトントン拍子で進めるだろう(アンロックの運によるところもあるだろうが)。
また、ローグライトでは「有利・不利な要素を同時に付与する」なんてパワーアップがあるが、本作ではそういうものがかなり少ない。一応なくはないのだが、それでもプレイヤー有利が過ぎる。もう少し駆け引きがあれば奥深くはなりそうだ。
もっとも、「おもしろさの最大瞬間風速」を表現するためにはどちらも仕方ないとも考えられる。本作は何千時間も遊べるようなゲームでなく、ものすごくやり込んでも20時間程度で終わる内容だ。ボーダーラインを越える瞬間が低めに設定されており、アーケードライクな楽しみとローグライトのカジュアルさがうまく共存している一作といえる。
とはいえ、筆者はそれでもまだまだプレイしたいので、さらなる要素を追加してほしいのも本音だ。よりランダム要素の強いモードや、極端な性能のキャラクターがほしい。
なお、本作はXbox Game Passに対応している。加入している人は気軽に試してみるといいだろう。
『Go Mecha Ball』はタイトルで作品の魅力をうまく表現できている。メカボールが「GO!」と言いながら突撃するかのように、ものすごい速さでプレイヤーにおもしろさを見せつけ、通り過ぎていくのだ。
渡邉卓也(@SSSSSDM)はフリーランスのゲームライター。『Go Mecha Ball』がおもしろすぎて全実績解除までプレイしてしまった。